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商品説明
ギリシア・ローマ時代から現代まで、世界史の闇に隠されたホモセクシャル・コネクションに迫る。アレクサンドロス大王、カエサル、ダ・ヴィンチ、ランボー、ケーリー・グラントも!? 男たちの美と欲望の饗宴の歴史をたどる。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
海野 弘
- 略歴
- 〈海野弘〉1939年東京都生まれ。早稲田大学文学部卒業。美術評論から小説まで幅広い執筆活動を続ける。著書に「アール・ヌーボーの世界」「都市の神話学」「リヨンの夜」など。
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紙の本
欧米のホモセクシュアルの歴史を圧倒的な情報量と逸話で描く異色の書
2005/06/01 00:06
13人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブルース - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の海野弘は、著名な文化史家で、美術・映画・都市・ファッション・デザイン・大衆文化などの分野で多くの著書を著している。
特に、アール・ヌーボ、アール・デコ、日本の世紀末芸術などを紹介した著書は先駆的な業績で、今なお輝きを失っていない。これらの美術が正当に評価されるようになったのも、著者の慧眼によるところが多い。
そのような著者にすれば、本書は異色作と言えるかもしれない。
本書は、多くの文献に基づいて書かれていて、第一部は、古代のギリシャ・ローマ、ルネサンス、十八世紀と十九世紀のヨーロッパのホモセクシュアルの歴史が描かれている。
第二部は、二十世紀の欧米世界、とりわけイギリスとアメリカのホモセクシュアルの世界が詳述されている。このうち、著者の本領が発揮されるのは、何と言っても、第二部の二十世紀欧米の状況を描いた章からであろう。
評者にとって、興味深かったのは20世紀初頭のイギリスのホモセクシュアルの世界が紹介された章である。
ブルームスベリー・グループは、経済学のケインズ、倫理学のG・E・ムアー、作家のD・H・ロレンスをはじめとして当時のイギリス最良のインテリが多く集った集団として知られているが、これらの人たちは大半がホモセクシュアルの性向を有していたという。著者はその交遊を詳しく描くと同時に、彼らの作品や業績をホモセクシュアルの視点から見直すと、従来とは異なった面が見えてくるのではないかと指摘している。これは、文学の作品研究に新たな光を投げかける見解として注目されよう。
もう一点、興味深かったのは、20世紀アメリカ映画のスターたちの内情が描かれている章である。この章は、著者の手だれの世界ということもあって、本書の中でもとりわけ強い印象を与える。
映画『哀愁』でビビアン・リーと共演したロバート・テイラー、映画『情婦』でマレーネ・デートリッヒと共演したタイロン・パワー、そしてエレガントな2枚目と知られるケイリー・グラントがホモセクシュアルの世界に生きていたが具体的に紹介されており、これらの男優たちの主演映画を親しんで見てきた人には少なからぬ衝撃を与えるかもしれない。
著者は、最終章で本書を総括するするかのように、次のような重要な指摘をしている。
「私たちは、セクシュアリティをホモセクシュアルとヘテロセクシュアルという二分法で考える社会に生きている。だが、これは絶対的な超時代的な区分であろうか。この二分法は絶対的なものではなく、労働者階級においては、二十世紀まで、同性愛的行為をしたからと言ってホモセクシュアルということにはならなかった。問題となるのは、女性の役を果たす時(であったに過ぎない)」。
この指摘によれば、同性愛と異性愛に分けるようになるのは、たかだか80年〜70年前からということになり、現代のような性についての固定的な考えに再考を促すことになろう。
最後に、本書の図版について一言。本書には、登場する人物の写真や図版が所々に掲載されているが、第6章に載っている古代ギリシャ風の少年の裸体写真は一際強い印象を与える。
この世界には全く縁遠い評者のような者でも、性の境界をかき乱されるような妖しい思いに誘われた。やはり、ホモセクシュアルの世界は、人間の根底にかかわる奥深いものがあるようである。