紙の本
殺されなければならない理由、殺さなければならない理由。
2005/05/13 11:31
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カルバドス - この投稿者のレビュー一覧を見る
ノベライズの『呪怨』シリーズで、この作家の実力は分かっている。他のホラー作品も恐ろしく、そして面白い。本書は過去の作品を文庫化したものだが、他の同様の経緯の作品も面白かったので、期待しつつページをめくった。もちろん、裏切られることもなかった。
電車が占拠され、次々に乗客が殺されていく。まるでテロのような展開だが、彼らのように政治的な思想もなければ営利目的でもないので、殺される人間にとっては理不尽以外の何ものでもない。騒いでいて五月蠅い、気にくわない、順番だから、そんな理由で殺されては、堪ったものではない。犯人は要求は無いと言っているが、電車を占拠して殺しまくる目的は何なのか、それを知りたくてページをめくる手が早くなった。
書名にある“処刑”という単語から想像できるように、テーマは“生と死”だ。もっとも、えたいの知れない殺人鬼から逃げる作品も広義では同じテーマになり得るので、“倫理と道徳”と言い換えた方がいいかもしれない。なぜ殺されなければならないのか、なぜ殺さなければならないのか。双方の理由付けが、なかなか興味深い。
極限状況下での集団心理や、本音と建て前の議論もあり、かなりのリアル感がある。読み終わった時、本書のような状況で自分はどのように行動するだろうか、と考えると同時に、自らの出生について知りたくなるかもしれない。なぜ“出生について”なのか、それは読んでのお楽しみだ。
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ホラーが苦手なあたしでも読める作品。相変わらず残虐な表現多いな。乗客の生き残る為に手段を選ばないのだが、人間、追い詰められると理性は失われるんだなぁと実感。読んだ日:2005年5月17日
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『この電車は彼らが占拠した』
東海道本線、小田原始発・東京行きの『快速アクティー』は、茅ケ崎・平塚間の鉄橋で突如停止した。
自らを『彼ら』と名乗る犯人グループ乗っ取られたのだ。『彼ら』は運転手と車掌を射殺し、すべての乗客を一部の車両に閉じこめた。
―そして殺戮が始まった―
『5分の2』だった命。
犯人グループの中心である双子は世界の全てを憎んでいた。というより出生時に『間引き』として殺された兄弟達の代弁として敵意と悪意を持っていた。
その悪意に賛同する者達がインターネットで集まり惨劇が起きた・・・
読んでいて不快になる作品。
理由なき悪意は救えない。
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ぅちにはちょっと難しい箇所もあったけど、おもしろかった。
大石圭さんの本で初めて読んだ一冊だった。
これを出会いにめっちゃ読み漁ってる。笑
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小田原始発の東海道線、15両編成、全車両2階建ての『快速アクティー』東京行き。朝のラッシュアワーの過ぎた車内には、空席が目立つ。外は、異様な暑さだが車内には、快適な冷房が聞いていた。
突然車内に鋭い音が響き渡った。運転室のガラスが割れたのだ。サングラスの男は、銃で脅して運転手に鉄橋の上で止まるように支持をだした。
茅ケ崎・平塚間の鉄橋で止まった列車は、彼らに占拠された。犯人グループは運転手と車掌を殺害。乗り合わせたすべての乗客を一部の車両に閉じ込めた。
そして、殺戮が始まる・・・。
鉄橋の中に孤立した電車。警察は、鉄橋出口で待機してるが手出しができない。車内で起こる殺戮。犯人グループと乗客との一方的なやりとり。無差別な悪意が暴走するホラーです。
後半は、ちょっと面白かったです。おわり方が曖昧なのでその辺が残念です個人的に恐くなかったのですが、ん〜他の人は、違うのかな?さてはて?
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死を恐れていない殺人団体って怖い。
何で怖いか?
生きたい人間は、死んでもいいと思っている人間の行動の予測ができない。
わからないものってすごく怖い。
悪意って、誰しも持てあましつつ同居せざるを得ない代物で、最悪の想像をしつつ相手の不幸を願う、そんなことをした後は、ふっと笑って
「なんてね」と呟いてみる、みたいな感じで消失する。
人は殺しちゃいけませんよ。
どうして殺しちゃいけないの?
じゃぁそもそも貴方は人を殺したいと思っているの?
人を殺しちゃいけないのは、人を殺しちゃいけないと決まっているからではない。それほどには強い憎悪を、悪意を、抱き続けられるのはほんの一部の人間だけ。
と、恐怖してる自分に言い聞かせつつ宥めつつ、昨日と変わらない生活の糧を得る為に、今日も通勤電車に乗り込む。
純粋な悪意か……。
そういうのにかぶれる人間はいるかも知れないが、本当にそれを抱ける人間が果しているんだろうか。
本当の悪意って、あのうだつの上がらない55歳のオッサンのあれみたいな感じがある。そしてそれこそが我々が一番怖いと思う所なんじゃないかな。ほら、自分だっていつそうなるか解らない所がさ。
主犯の二人の、あまりにも現実離れしている人物設定が、感情移入して読めない一つの理由になってる感がある。
主犯にあんな耽美的な十字架を背負わせる意味ってあったのかな?
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面白いが、「彼ら」と仲間達との関係性があいまいで、随所に詰めの甘さが感じられ残念。是非、映画版をみてみたい。
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この作品は、まさに人間の狂気の恐ろしさをあらわした作品だと思います。線路沿いに停車した列車の中で、自らを”彼ら”と呼ぶ犯人たちが乗客達を次々に”処刑”していく様は、ある意味では幽霊が登場するホラー作品より恐ろしいと私は感じます。さらに、物語の終盤になるにつれて犯人たちの正体や目的などが明らかになっていくのですが、そこにも考えさせられるものが色々とあります。他のホラー作品とは違う恐怖を味わえます。
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グロいのにハマっていた時期読みましたが、大石さんにしては性描写少ないほうだったので、わりかし好きです。笑。作中の双子ちゃんのキャラは個人的にツボでした。でも事件解決してほしかったなあ、という点で残念。もやもやが残りました。
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最初はおおっ!
誰が犯人かが分からない、殺戮の真意がわからない、この展開は?
どきどきはらはらで前半を終わり、さ、つぎはつぎは?と思った後半‥
えー?
犯人、そこ?
しかもその理由、それ?
一気に説得力を失い失速するストーリー。
期待がでかかった故に、ガッカリ度もアップ。
‥だから、大石圭は読まないって誓ったのに。
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出生率0に続き、読んだ大石圭。
これまた中学2年生のころ。すなわち平成8年。
あのころのうちにとって、衝撃的!でした。
5分の2。
ありえそうでありえないだろと思いつつ
どこかで起こりそう。
あのころの感想:そこまでして子供ってほしいものなのか?
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大石圭ワールドと云える作品。読み始めから引き込まれます。列車で起きる殺戮…絶望感や焦燥感といった負の感情がよく表れていて好きです。やはり有りそうで無い設定がうまい人だ。ただ、動機がなぁ。。
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どこにも救いがない物語。
なぜ自分が殺されなければならないのか、わからないままに奪われていく命。
生き残るために乗客たちはさまざまな行動にでる。
けれど、犯人たちの行動はそんなものでは止まらない。
徹底した究極の「悪意」に対抗できるものなんてあるのだろうか?
誰もが持っているかもしれない「闇」のようなものを描きたかったのだと思うのだけれど。
強烈なインパクトはある。
でも、人物描写といい心理的な掘り下げといい動機といい、説得力に欠けている気がした。
他人の命を犠牲にして自分だけが助かった人間。
実際の事件でも、似たようなことがあったのを思い出した。
通報して乗客を助けようとした・・・と弁明したらしいが、ひとりが逃げたことで激昂した犯人が残された人間に危害を加えたのは事実である。
自分の命と他人の命。
極限状態での判断は、その人が持っている本質的なものに大きく左右されるのだろう。
後味の悪さだけが残ってしまった。
意味のわからない(意味のない)暴走は本当に怖い。
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大石圭の初期作品で、単行本は1999年に河出書房新社から刊行。
以前に読んだ2002年の大石作品『自由殺人』も強烈なパニック・サスペンスでしたが、これも素晴らしいパニック・サスペンス。
角川ホラーで、『リング』『呪怨』を思い浮かべる人には全く向いてない、1970年代のホラー映画のような理不尽ホラー。
平塚の七夕祭りの一日前、7月6日の昼間に、東海道線の快速アクティーが謎の武装集団に乗っ取られる、という序盤から、神奈川県民の自分はわくわくさせられます。
乗客に紛れた、老若男女様々な狂人達に監禁されて、次々に殺されるというのが、どうにも70年代ホラー映画的。犯人グループには子供もいるのが、恐るべき子供たちテーマの、やはり70年代ホラー映画っぽさを醸し出します。極限状態では人間が一番怖い、というのはスティーヴン・キング的ですけどね。
物語が四分の三ほど過ぎたところで、ようやく主犯格の正体がわかると、面白さが加速。自分は、この主犯格がわかったー時点で興奮度最高潮でした。更には主犯格の正体で、この事件自体が、何かの暗喩だったのだと気付かされると、物語が持つテーマ性が胸に突き刺さり始めます。ここは、70年代ホラー映画を越えたところでしょうね。
読む人を投げ放すようなラストも、観ている人を途方に暮れさせる70年代ホラー映画のようで最高。