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商品説明
【群像新人文学賞優秀作(第47回)】男が地面に激突する直前、俺はそいつと目を合わせた。そのときから俺の頭の中に「数字」が住み着いた。ある日を境に、ルーレットへのめり込んでいく男…。破壊と疾走を描くハイブロウ小説。第47回群像新人文学賞優秀作。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
佐藤 憲胤
- 略歴
- 〈佐藤憲胤〉1977年福岡県生まれ。福岡大学附属大濠高等学校卒業。「サージウスの死神」が第47回群像新人文学賞優秀作となりデビュー。
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紙の本
吹きだす青色の炎
2005/09/12 21:10
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:PNU - この投稿者のレビュー一覧を見る
デザイナーの華田は、ある時ビルから投身自殺する男と目があって
しまう。以来、彼の生活は一変した…。
初めて読む作家だが、これはたいしたものだ!
平山夢明・灰崎抗のような闇色に輝く作家、怪奇幻想小説が
好きならば見逃す手は無い1冊!!
五感に訴えかける超常能力の描写が映像的で総毛立った。
内容はというと、華田という男の範型2mの日常になるのだろうが、
悪夢のようなピースがちりばめられていて、飽きることがない。
エスカレートしていく暴力やスプラッタが
ドラッグ中毒者の幻想のごとくサイケデリックになっていったり、
生と死と人類の影なる歴史までにおわせたり、壮大ながらきちんと
着地するところが素敵だ。
新人とは思えぬ異様な迫力と上手さを感じた。次回作に期待大!
紙の本
今、出版界はこぞって青田刈り。で、名前の読みにくいこのひと、位置的には舞城王太郎をまちっとせいとうにしたっていうか、ファウストでいいんじゃない?
2005/08/13 10:52
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
頭が悪いので、難しい名前が読めない。サトウ ノリタネ?と思っていたら(さとう・のりかず)と書いてありました。ふーん、平田篤胤の「胤」が「かず」か、コリャ難しいわな、などと思います。1977年福岡生まれで、この作品が第47回群像新人文学賞優秀作であり、デビュー作だそうです。
でだ、「群像」とくれば、ま、純文学の砦みたいな雑誌で、その受賞作ともなれば、誰だって小難しい大江健三郎風の作品だと思いません?でも、カバーデザインは完全に、ホラー。逆さに振ったら吸血鬼が飛び出してきて、血がタラーリってな感じ。ま、タイトルにだって「死神」入っているし・・・そんな装幀はStudio S&D、うーん、初めて。
でだ、かなりエンタメ化して、メフィスト賞でもいいんじゃあないの、っと思わせる内容は、賭博もの。ま、後半は、かなり行っちゃって、中島らも化しているのがミソかも知れません。
主人公は、友人の仙崎にカジノに誘われ、意外なところに才能を見出してしまう男、菱田で、冒頭の時点ではDTPデザイン会社に入って5年間、三日以上のまとまった休みを取ったことがない、というから30歳になっていないということでしょう。で、菱田は、それこそ5頁目で飛び降り自殺の現場に出くわしてしまうのです。
現場、といっても生半可なものではありません。彼は見上げたビルの屋上にたつ自殺者となぜか眼を合わせてしまい、そのまま飛び降りた男の血飛沫まで浴びてしまうのです。そして警察から事情聴取されている菱田に、着替えの赤いシャツを買ってくるのが会社の同僚の仙崎で、人の死に出逢うことで何もする気もしなくなった二人が出向いたのがカジノ、そして菱田が才能を開花させるのがルーレットです。
あとは、ただただ男の転落していく様、狂気に取り付かれ、ひたすらエスカレートしていく血と暴力、ドラッグと死の世界、虚無の深淵を覗き込むだけです。全体で201頁、前半はエンタメ、後半は文学とでもいいましょうか。登場人物も限られていますから、読んでみて確認しましょう。
ギャンブル、カジノといった世界ですから、私などは全く馴染みがありません。まして、人の死に何度も出逢うとか、そこで何かが頭に入り込むとか、結構、一時代前の海外古典文学風なところもあるんですが、それなりに腑に落ちます。ちょうど、プーシキン『スペードの女王』を読んだばかりでなんですが、同じギャンブルなら、私は古典ということで読まれるプーシキンより、この佐藤のデビュー作に軍配をあげます。特に、暴力的な部分。
でも、暴力が日常化してしまったというか、ヤクザ世界が堂々と表の社会を侵食している今となっては、この作品が村上龍『限りなく透明に近いブルー』が出てきたときの衝撃、断絶を読者に与えないというのは残念です。マスメディアの報道の自由というなの横暴が、死そのものを急速に風化させる、それが嫌になるほどです。裸の氾濫が、当たり前の性を霞ませてしまったように、夥しい事件報道も現実をゆがめていきます。それは丁度、見るという行為自体が現象そのものを変えてしまうという物理学の法則を思わせます。
それはともかく、予想を超えた暴走感、ですね。あれよあれよと言う間に読者は思ってもいなかった世界に連れて行かれてしまいます。あれ、今、気付きました。この本にはセックスが出てきません。大体、女性が出てきません。といてゲイでもありません。そうか、何となく盛り上がりに欠けたのは、そういう人生に不可欠なスパイスがないからか、そう納得しました。
できるならば、この人が異性をどう扱うのか、次回作で読んでみたいものです。一応、期待してます。