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商品説明
大人の事情は複雑でいい加減でたちが悪い。大人じゃないから分ることも、いっぱいある。それぞれの事情を抱える、今どきの優等生でも劣等生でもない少女たちの姿を描く。『小説宝石』に掲載したものに書下ろしを加えて刊行。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
灰色の日々 | 5-34 | |
---|---|---|
桃色半分 | 35-62 | |
恋は水色 | 63-92 |
著者紹介
前川 麻子
- 略歴
- 〈前川麻子〉1967年東京生まれ。舞台・映画女優を経て、「鞄屋の娘」で小説新潮長篇新人賞を受賞し作家デビュー。「アンファン・テリブル」を主宰し、小劇場を中心に女優・脚本家としても活動。
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紙の本
躍動の輝き
2005/08/09 12:03
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kakko - この投稿者のレビュー一覧を見る
渋谷区というのは、それほど特殊な地域だろうか。
読み始めたときには、それが疑問だった。どんなにファッショナブルな町にも普通に暮らす人々がいる。家族の事情があって、ちょっと変わった友達がいてという、誰とも違わない生活があるはずだ。
そうした毎日を送る中学生の女の子の物語。この女の子たちがとても可愛らしい。大人びた考えと制約された行動のギャップ。大人の男性を見つめる意地悪さ。同級生の男の子への素直な共感。同級生の女の子から妬まれる戸惑い。
思春期ってこうだったと思い出された。色んなことを大人よりずっと真剣に考えていた。これからの人生にどんな色を塗ろうかと考えながらパレットで色を混ぜ合わせている季節。
中学生が30歳のサラリーマンと交際しているという設定はセンセーショナルだが、なるほど、この女の子ならそうするだろうと素直に読み進められた。
光文社の挟み込み広告に、作者の実体験であるようなコメントが掲載されていたが、そんな経験のない私にも、自分がそうであったらと想像したくなるファンタジーとして楽しめる。ファッショナブルな町の片隅で、学校帰りに寄り道しておしゃべりする少女たちが、映画の1シーンのように浮かび上がる。
いきいきと躍動する少女たちに、私の現実にはいなかった、ちょっと変わった友達のような親しみを感じながら読み終えた。
紙の本
なぜ、この人の話にリアリティがないか。それをよく考えてみたいと思います。似たような世界を書いていても、どこか嘘になる。それと章のタイトルの陳腐さ、どうしましょう
2005/07/31 21:05
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
カバー画を見ると、女子中学生、中身を読むと、女子高生、でも実際はやっぱり女子中学生、ふーん、なんだかうちの娘たちとは違うなあ、そんなカバーイラストは、ちょっと不思議な味の岩清水さやか(うちの長女とおんなじ名前)、装幀は福田昌弘(キックアンドパンチ)、うーん、何だか若手芸人みたい。
前川は初めての人なので書いておくと、1967年生まれで、舞台・映画女優を経て2000年、『鞄屋の娘』で第6回小説新潮新人賞受賞、作家デビューとあって、著書もかなりでていて、出版社も集英社、文藝春秋、講談社、光文社と大所が並びます。ま、いわゆる話題作りの好きな大手出版社という部分はあって、果たしてどれほどの作家かといえば、未知数でしょう。
ま、そういう辛目の紹介をしたのは、前ふりに書いたように、ここに描かれる中学生の姿が、少なくとも私にとっては少しもリアルではないからで、それは千葉県くんだりに住んでいる人間と、渋谷で生まれて育った人間との違いといえば、そうなんでしょう、とあっさり納得できるようなものではないからでもあります。
先ず、目次覗いて見ましょう。1 灰色の日々、2 桃色半分、3 恋は水色、4 青い愛、5 群青の空に雲の染み、6 さよならの白い煙、7 赤い傷、8 クリスマスの色、9 水溜りのパレット、以上で本文261頁です。初出は「小説宝石」だそうです。なんだか、ちっとも新鮮味のないタイトルが並んでしまいましたね。村山由佳さんなんて、上手ですよ、タイトル・・・
主な登場人物は、中学二年生の主人公 一色尚美と、友人の水原絵麻。ともに美少女ですが、誰もが認める美女といえば幼馴染である絵麻だそうです。二人とも渋谷駅近くのマンション暮らしで、尚美は両親と、絵麻は母親と暮らしています。家族同士で付き合っていますし、言動からも生活に困る、といった気配は全くありません。
で、尚美の恋人で実際に肉体関係にあるのが、30歳のリーマンである亘さんで、当然周囲からは色眼鏡で見られるわけですが、少なくとも尚美の家では公認です。なんといっても母親が納得していますし、父親もOK。ね、リアリティ、ゼロでしょ。そうですね、灰谷健次郎や今江祥智の本にでてくる薄気味悪い、へんに分かり合った大人子供と子供大人、あれです。
そして、絵麻に惚れこんで惚れこんで、幼い時から何度交際を求めては弾き返されているのが伊原です。ま、ここいらもちょっと作ってるかなって感じがしますね。子供なんて、もっとはっきりしています。それから、尚美にしつこく嫌がらせをするのがジャンボというグラマラスな同級生がでてきます。これは納得。
で、中二の恋愛を軸にした小説です。いわゆるハッピー小説ではありませんが、これが高二であればあっさり納得してしまうような話で、これをリアルと取るか、絵空事と受け止めるかは、まさに読み手次第ではあるのでしょう。ただし、私は後者です。肝心の年齢設定に納得がいかないので、いつまでいっても居心地の悪さを感じます。勝手な言い方ですが、子供さん、いらっしゃるかな?なんて思います。
爽やかさもないですし、逆に人間の苦悩も感じません。たとえば、宇佐美游『十歳の戦慄』『黒絹睫毛』なんかと読み比べてみれば、明らかに宇佐美のほうが上だな、そう思えます。それは二人の年齢さ5歳を超えた、ある意味、決定的なものであるような気がします。著者の人生は、やはり小説の中身の重さの違いとなって現れるんだなあ、そう思いますね。