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商品説明
芥川龍之介と松村みね子(片山廣子)、堀辰雄と宗瑛(片山總子)。師と弟子、母と娘との二代にわたる「文学的」な「軽井沢の恋」のゆくえは…。日本の近代、現代文学史において、特異な閨秀作家の謎を探る知的冒険。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
川村 湊
- 略歴
- 〈川村湊〉1951年北海道生まれ。法政大学国際文化学部教授。平林たい子文学賞、伊藤整文学賞受賞。著書に「言霊と他界」「海を渡った日本語」「作文の中の大日本帝国」ほか。
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紙の本
知られざる才媛をめぐって
2005/06/04 13:55
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:すぎやまあつし - この投稿者のレビュー一覧を見る
快挙といってよいだろう。
「灯火節」発刊による、片山広子再評価の機運が高まる中、
川村湊氏による、片山広子の娘、宗瑛の作品および評伝を
現在、望み得る最高の状態で記述を行ったのが、本書である。
堀の初期作品における重要な主題「片山親子とのロマネスクな関係」
について、川村氏は、物語を構築することで作家として再生を果たす堀という
読み方を行う。これには、眼を開かされた思いがある。私自身は、江藤淳の
堀批判の延長線上に堀をとらえていたので、川村氏の江藤淳批判は、非常に
新鮮だった。本書における、堀文学の評価と片山親子と堀の関係の整理は、
現在、本書が最も詳細かつ妥当な評価をおこなっている。
他方、弱点もある。まず、芥川作品の読みの浅さ。おそらく、川村氏は、芥川の
晩年の作品群のみに着眼しすぎている。初期以来の作品の流れがあるうえで読みを
構築していないのは明らかだ。そして、キリスト教と芥川の関わりからの退避。
「西方の人」などの晩年の芥川の宗教性との関わりについて触れずに、その死をまとめるのは、少々乱暴だろう。むしろそうしたものにどのような接近をおこなっていったのかを考える必要があるだろう。そして、堀の「菜穂子」の評価についても疑問を感じさせる。家と結婚の問題だけでは「菜穂子」の世界は解決しない。そこには、モーリアック「テレーズデスケルー」の影がある。人間の「悪」の問題。これについて川村氏は全く触れていない。三島由紀夫「小説家の休暇」や遠藤周作「私の愛した小説」などの指摘について、触れることなく、「菜穂子」の世界についてまとめるのは危険すぎる。そこには、堀における「西と東」の問題もはっきりとあるはずなのに。
ただ、上記のような問題は部分的なものでしかない。
宗瑛をめぐる川村氏の筆致は、絶えず情熱をかんじさせる。そして、抜群の読みやすさ。宗瑛の復権にまちがいなく本書は端緒をなした。