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収録作品一覧
序幕 | 9-24 | |
---|---|---|
指輪 | 25-44 | |
経理課心中 | 45-80 |
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紙の本
最近の山田正紀は、その仕事量と質からいっても全盛期を彷彿させます。この作品は目立たないですが、その視線の先にあるものを少しだけ読者に見せる重要な作品かもしれません。
2006/01/14 20:56
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
1996年以来、様々な雑誌に書かれてきた作品に、書き下ろしの序幕と終幕をつけて、連作化したもので、単行本は2002年の出版。連作、といっても、アラビアンナイトふうな纏め方なので、いわゆる推理連作ではありません。15の短編に序幕、幕間、終幕、後書きが加わって出来ています。
小説家のおれは、評論家の鯖鯡榮太郎に殺意を抱き、道玄坂のカラオケ屋に誘い出すことに成功しました。そして、相手を殺す準備をして帰る途中でオヤジ狩の連中に捕まってしまうのです。作家であることに気付いた彼らが、命を助けてやる代わりに、と持ちかけたのは、彼らに面白い話を聞かせるというもの。作家であるおれは、しぶしぶ話を作り始めるのです。
夫の浮気相手に我慢が出来なくなった妻の狂気「指輪」。新しく自分の部署に配属された上司は、私の過去を知っている、二人の思いがすれ違う「経理課心中」。自分の前に現れた見知らぬ女。彼女は、貴方こそ息子が結婚したかった相手だと宣言する。新しいタイプのストーカー「ホームドラマ」。
電車に置き忘れた妻の骨壷。それは夫のものだという美女が現れて「青い骨」。自殺した男が残した言葉、それに従った少女を襲う狂気「明日どこかで」。公園デビューを果たそうとする若き夫が陥る悲劇「わがデビューの頃」。坂の多い街、Yでおきる交通事故の影に居るもの「天子の暴走」。
最後のほうの三篇は人間の精神や狂気を扱った作品です。自分の周辺に居る人間、家族などが消えていく男の独白。夫を裏切った妻を追いかけるSFふうの話。序幕を皮肉に締めくくる結末。ユーモアもの、ハードなSFこそありませんが、天才山田の様々な顔を見ることができます。
それにしても最近、立て続けに重厚な長編を読んでいるせいでしょうか、それに比べると、どうしても弱いなあと思ってしまいます。それに、本格的な連作ではないので、無理をして序幕、終幕で括らなくてもよかったとも思うのです。それはともかく、最近の山田の視線の先が見える、という点では、案外重要な作品かな、とも思います。