紙の本
正直言って、打率の高さでは恩田陸より上じゃあないか、って思うんですね。ま、打席数では恩田圧勝なんですが。で、今回は海上都市での都市伝説、っていうかSFなんですが、立派です
2006/03/05 21:17
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
プロローグとエピローグに挟まれて、本文は四つにわかれ、簡単に1〜4までの番号が振ってあるだけの簡単な構成です。そのせいでしょう、目次はありません。奥付の前の頁に、カバー写真 伊奈英次、見返しイラスト 寺田亨、装丁 鈴木成一デザイン室とあり、この作品が「SF Japan」「週間アスキー」に掲載されたものに手を加えられたものだと書かれています。
見返しイラスト 寺田亨、とあるように、いつもなら殆ど見ないところにも楽しめる要素がありますから、じっくり楽しんでください。本文は200頁にも満たない作品ですが、内容は実に濃くて、文章の重さと相俟ってジュヴナイルなら10冊くらい読んだ充実感があります。
舞台は、タイトルにあるアクアポリス、要するに水上都市です。数千本のハイカーボン・ワイヤーで海底にアンカーされています。この水上の要塞は波を予見する量子コンピューターによって制御され、殆ど揺れることが無い、とされています。そこには多くの人が暮らしますが、アクアポリスの誕生の背景には、震災と大沈下を経験したQ市と、それに備えようとする国家と自治体の判断があった、ということになっています。
いわゆる自立型の海上都市なわけで、その安全な運営のためにも居住者は厳密に制限され、内地からの訪問も管理されています。要するに、定員のある巨大な船舶と考えればいいのですが、規模が違います。
で、この話はそこで12歳を迎えた、将来画家になりたいと思っているタイチこと立花太一が、母親から「学校で牛が暴れたんだって」と聞かされた場面から始ります。ただし、その直前に「アクアポリスには映画館もプラネタリウムも植物園もあるが、動物園はない。牧場もない。」という文章があります。
で、そのありえない牛を見たというのが、加土カンナです。海岸公園から小学校まで突進してって、フェンスもドームも突き破って、校庭のジャングルジムをぶっ潰したよ、というのです。その牛というのが全長は10メートルもあった、というのですから彼女の目撃譚は嘘として処理されてしまいます。
一方、タイチは学校の校庭の花壇であるものを発見します。それから5年、高校生になったタイチの前に二人の人間が現れます。一人は年齢不詳の白髪の女性で、普通なら美女、ということになるのですが、このお話ではどちらかというと痩せぎすの色気も何もない中性的なオバサンで、自分のことをJと名乗ります。もう一人がゴショウメという国土保安院の人間です。
上手いです。面白いです。しかも、文章が濃密で、それでいて美文を気取ったところがありません。SF的なセンスだって、なかなかです。正直言って、恩田陸より上なんじゃあないか、そんな気がします。少なくとも今まで読んだ作品すべてが同じレベル。しかもユーモアだって書ける。ま、恩田との差は作品数ですね。ただ、恩田の場合は波があって、出来不出来の差が大きい。それは文章にも如実に出て、平気でスカスカの文を書いたりしますもの。その点、津原は高いレベルを維持しています。この人、もっと騒がれていいですよ、ホント・・・
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人格希薄化(パーソナリティペーリング)現象に覆われる日本。そのQ市内、海上に浮かぶ「アクアポリス」で何かが起ころうとしている。「自我が偏在するように、死もまた偏在」する世界で、タイチは如何に…。クライマックスへ向かって事態は大きく展開していく。
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もう化け物の領域です。怪物です。何者なんですか、この人は。何を書かせても軽くその各ジャンルの大御所、ベストセラー作家を越えてます。これジャンルなんなのかな…ヤングアダルト、SF、ジュブナイル、ボーイミーツガール、バディ・ヒーローもの、幻想で怪奇、色々入り混じってますが解れがちっとも見当たらない。ジャンルミックスとはよくいったものだなー。この人の本ばかり読んでいると魂が食われてしまいそうです。侵食される。読後すごく満足しましたが続編が書かれるなら是非読みたい。「信じられる方向へ進め」ってもういちいちかっこいいんだよー!!うおー!
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わたしの理解力が足りないみたいです…おもしろかったんです。設定すごいし、SF好きだし。ただ、よくわからない言葉が多かったんです。オリジナルの語なのに読者がわかっているのを前提に話が進められているような。話が中途半端なような。もったいないのでもう1回ゆっくりちゃんと読もうと思います…理解力!!!!
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架空の街とかふしぎ設定の話って、全然読まないのだけど、だから馴染めなかったんかなぁ。
創作ワード、近未来設定、面白いんやけど説明不足でよく分からないまま話が進んでモヤモヤ、このまま終わらんよなモヤモヤ、雰囲気は格好いいけどモヤモヤ、もうページ数がモヤモヤ・・・
やっぱり終わっちまった!
もう1、2作は読んでみよう。
08.12.06
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近未来の話。モンスター化や道満の子孫が出てくる。Jの設定はどうにかならなかったのかな。少年たちは好きだけど、この話に陰陽が必要だったとは思えないし。軽いラノベにすりゃ良かったんじゃないかなー
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海上都市『アクアポリス』で暮らす少年『タイチ』。牧場も動物園もないアクアポリスに巨大な牛が現れたという話しを同級生から聞かされた。その場所、学校へ向ったタイチが出合ったのは、小さな男の子だった。
5年後、新体制の学校制度である『sss』に通っていたタイチの下へ、政府機関を名のる人物が会いに来る。
「君は、ヌレオンナを見たはずなんだ。」
出だしは非常に引き付けられた。なにかがはじまる・・そんな感じの期待感。でも、おしいな~。道魔法師とか精霊とか、まあありがちだけど嫌いじゃないテーマが上滑りしてるというか。『空虚点』とか、『稀薄者』とか、せっかく曰ありげな言葉を出してきてんのに、けっきょく最後まで何のことやらよく分からずじまいだったし。なにより、登場人物を生かしきれてないなぁ・・物語のキ-となってるはずの少年の役割もあったんだかなかったんだか。最初のワクワクが、肩透かしを食ったようでがっかり。
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プロローグをパラ見しておもしろそうだったから読んでみたけど、どうも期待していた方向とは噛みあわず。てっきりSFなのかと思ってたら、どちらかと言えば児童向きの話だった。
とにかく全てにおいて説明が足りてない気がする。要所要所しか文字として顕在化されてないというのか。それで結局、アクアポリスとは、空虚とは、ペールとは何だった訳?解決したの?っていう疑問が最後に残る。
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世界観やキャラクターは魅力的、なんだけど、よくできたアニメ映画みたいな印象を受けた。ジュブナイルとして読むならものすごくいい話だと思う。(青)
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年齢不詳のお姉さん”J”がカッコイイです。私の中のでは、「妖怪大戦争」の”鳥刺し妖女アギのイメージ。陰陽道や中華街や濡れ女や牛鬼やら・・・この手のものが好きな人にはたまらない要素が満載。ジャンルとしてはホラーじゃなくてSFになるのかな?ティーンズ向けかも。
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Q市にあるアクアポリス。人工の島は「空虚」時にほかの街が水没した時にも水没しなかった。
アクアポリスに出身のタイチは、Q市の陸地側にあるSSS(スーパーサイエンススクール)に通い、週末だけアクアポリスに帰ってくる暮らしをしているが、タイチの元に「J」と名乗る女が現れ……。
近未来?をイメージしたSFです。「J」とその敵対するグループ?との丁々発止の戦いはいやすごいなぁと感じましたが、ちょっとオイラにはイメージし切れなかったかなぁ。
近日、再読してみます。
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海上都市アクアポリスを舞台とした近未来SF。
Q市のアクアポリスで育ったタイチは街の存亡を巡る陰謀に巻き込まれ、Jと名乗る謎の女とともに牛鬼、濡女を追う。
同じ世界観・設定を共有した複数作家によるプロジェクト「憑依都市」に連なる物語だそうで、用語や設定の詳細な説明が省かれています。
なので、少し読みにくかったです。
印象のみのイメージ先行型描写が多く、頭の中で点と点をつなぐように補完しながら読み進めていくので、物語の筋を追うのに必死でした。
ハイブロウでトリッキーな文章が織りなす独特の世界観に魅せられましたが、自分の貧困な想像力が恨めしかったです。
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大好きな伊坂幸太郎さんがお薦めされてて、それはまた別の作品なのだけど、それをきっかけに今回読んでみました。
今作は海上に浮かぶ五角形の人工都市アクアポリスを舞台にしたSF小説でありながら、陰陽師や悪魔祓いのような要素も出てきます。
この世界だけの固有の名詞や社会制度が説明も少なめにどんどん出てくるので、混乱しながら読んでましたが、主人公タイチが自分の成すべき使命に立ち向かう辺りからグッと引き込まれました。
他人の才能への嫉妬や落胆、自分の身をも差し出す正義への衝動、記憶の中だけの父親や気安い友達、煩わしくも温かい家族への思い、タイチを通して描かれてる感情の全ては思春期の男の子の共通の感情だと思います。
特殊な世界観を舞台に、そういった普遍的な感情を描いたところに共感しました。
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カバー写真:伊奈英次
見返しイラスト:寺田亨 http://toruterada.exblog.jp/
装幀:鈴木成一デザイン室
トリプルズ:SSS
PP(パーソナリティペーリング):人格稀薄化
モンスターレーション:怪物化
ペール:稀薄者
エンプティ:空虚者
ルーラ:憑依体
イオ・ミヒ:黄泉
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SF。ファンタジー。
水上都市を舞台にした近未来SFに、妖怪(?)ものの怪奇小説ぽさもあり。さらに、学園、青春、アクションも追加したジャンルミックス作品。
ストーリーは王道だと思うが、世界観が最後までよく分からない。さすがに説明不足では?
想像が追いついたら面白そう。