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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2006.2
- 出版社: 羊土社
- サイズ:19cm/93p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-89706-850-9
紙の本
小さな小さなクローディン発見物語 若い研究者へ遺すメッセージ
著者 月田 承一郎 (著)
少年時代から生命科学に憧れを抱いていた著者は、常に情熱をもって学問に励み、自らの「視力」を磨き続けた…。発見の感動を知る科学者・月田承一郎が歩んできた道を著した書き下ろし...
小さな小さなクローディン発見物語 若い研究者へ遺すメッセージ
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商品説明
少年時代から生命科学に憧れを抱いていた著者は、常に情熱をもって学問に励み、自らの「視力」を磨き続けた…。発見の感動を知る科学者・月田承一郎が歩んできた道を著した書き下ろし。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
発見の感動と、mementomoriと。二つのメッセージが伝わってくる。
2006/08/15 16:53
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一人の生物学者が自分の研究・発見を生い立ちから綴った短い自伝的一冊。研究紹介書としても良く書かれているが、この一冊が通常の「自伝」と少し違うのは、著者が膵臓癌に罹患したことを知り、余命少ない中で研究を続けながらこの物語を短期間で書いたことである。
ただ研究者の発見物語として読んでも、この本はこれから研究者になろうかと考える人に知って欲しい、研究、発見の感動が伝わってくる本である。著者は研究を山登りに見立て、「みんなの目指す山に向っていても、<視力>があればみんなの見過ごしている山を見つけることができる」という。「生い立ち」の章では「何のためかがわからないような勉強も、将来宝物を見逃さないための全方向の視力を高めるための勉強」であり、それが科学における「視力」であると書いている。まだ気付かれていない、未発見の山の近くを通るかどうかには「運」も関係するだろうが、それが見えるかどうかには広い知識を備えていることが必要、ということなのだろう。セレンディピティという言葉が思い起こされ、知識とは何かをわかりやすく表現してくれた言葉だと感じた。
著者の「視力」で細胞の機能に重要なタンパクを発見していった経緯からは、苦しい時期もあるけれど、いろいろな人との触れ合いや闘いを通りぬけて得た発見の感動がとても活き活きと伝わってくる。具体的な研究の進め方、手法、理論などは専門的な分子生物学実験の知識がないと詳細は理解できないかもしれない。それでも現代の研究の実態、著者の感じた発見の喜びは充分に伝わるだろう。クローディンという物質の発見経緯やその内容を初学者に紹介する本としても要領よくまとまっていて良い本になっている。研究者になることを考えている人には是非読んでみて欲しい。
著者は2005.12.11に他界。享年52歳であった。本書はその2ヵ月後には出版されている。2003年には学士院賞も受け、本書の主題にもなった発見も論文になっているので、本書のような「発見物語」の執筆の予定は病気を知る前からあったのかもしれない。大きな発見をし、まだまだこれから、と本人も思っていたことと思う。それでも、死は訪れるときは容赦なく訪れる。余命少ないことを知ったあと、どのように過ごしていくか。文中には、死を受け入れる言葉と、出版を予定した言葉、遺しておきたい言葉が入り混じっていて、「人の死」への向い方、を考えさせられる。
2週間ほどで書き上げられたという本書は、100ページ足らずの薄くて小さな一冊であるが、さまざまなことを読み手に語りかけるだろう。研究・発見の苦労も、感動も。死も、生きることも。