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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2006.5
- 出版社: 新潮社
- サイズ:20cm/189p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-10-405203-5
紙の本
着物あとさき
一枚の布への想いを大切に、創意工夫で美しく着こなす。幸田家流装いの楽しみかた。【「BOOK」データベースの商品解説】母から娘へ、娘から孫へ。着物の命は果てることなく−。も...
着物あとさき
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商品説明
一枚の布への想いを大切に、創意工夫で美しく着こなす。幸田家流装いの楽しみかた。【「BOOK」データベースの商品解説】
母から娘へ、娘から孫へ。着物の命は果てることなく−。もう着られないと諦めていた母・幸田文の着物を美しく甦らせた著者が、幸田家流・装いの楽しみ方を伝授。布への想いを大切に、創意工夫で美しく着こなしましょう。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
着物のことを何も知らなくても、一気に読める本
2006/08/15 21:25
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:白くま子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
実のところ、青木玉さんの本の書評を書くことは嫌なのだ。
大ファンであるから、好きすぎて、どの本も「とにかく良かった。是非読んで下さい」としか書けなくて終わってしまうのではという心配がもちろんある。だが私が一番懸念するのは、私が物や言葉を余りにも知らない人間なので、そういう人間が書いた書評を読んでくださった人が、青木玉さんの本を読もうという気になってくれるとは、とても思えないということである。
いやらしい謙遜ではない。例えば、私は着物に関する様々な名称や単語をほとんど全く知らない。漢字だけで書かれていてルビがふってなければ、まず読めない。だから着物に関する著書が多い青木玉さんの本を読むときは、その読めない単語を目で飛ばして読むか、適当に当て字ならぬ当て読みして、読み進めているのだ。
恥を承知で言う。私の、読めなくて意味も全く分からない、数ある着物用語の中から例をあげると、
単衣(ひとえ)を「たんい」、袷(あわせ)を「はまぐり(蛤)」と自分の頭の中で当て読みして読んでいたのである。初読のときは(正直言うと、今もよく分かっていないのだが)、意味などもちろん何も分からなかった。着物の部位なのか、種類のことなのか、布地のことなのか、皆目見当もつかなかった。なお私は着物の一大生産地で生まれ育ち、今も在住している中年女性である、などと書くことは、恥の上塗りか・・・。
袷(あわせ)を「はまぐり(蛤)」と読むような女性がすすめる「着物に関する本」を、読んでみようという気になる人はいないのではないかという心配があるのだ。結果的に、人の「読もうという気持ち」を逆に萎えさせてしまうのではないか、と。
でも、もうここまで書いてしまったのだから、開き直って書く。
この方の著書は、恥ずかしいぐらいに着物のことを何も分からない物知らずが読んでも、面白い。一気に全部読ませるのだ。
この方の著書には、どの本にも1ヵ所はホロリとさせる部分がある。「小石川の家」「幸田文の箪笥の引き出し」「なんでもない話」・・・、何度も読み返して泣いた。どの本にも心に残る場面、文章がいくつもあり、日々の生活の中で、ふとしたときに手に取り開く。もう諳んじるほど読んでうなった名文が、そこかしこに詰まっていて魅了してくれる。
この本「着物あとさき」の中では、98ページからの「色移る」の梔子色の紬(くちなしいろのつむぎ)の部分がジンときた。相変わらず私には読めないし意味も分からない、着物に関する単語が、いくつも出てきた。それでもやはり心に迫ってくるのである。この感覚を何と説明したらいいのだろう。何かが伝わってくるのである。
青木玉さんはもっと評価されていい文筆家だと思う。歯がゆいくらいである。幸田露伴の孫、幸田文の娘であるという点ばかりが取り上げられすぎていると感じる。また、ご本人が著書の中で、余りにも謙遜なさりすぎるというところも影響しているのかもしれない(そこがまた奥ゆかしい魅力であるのだが)。
青木玉さんという方はご本人が才能あふれる魅力的な文筆家だ。著書が出る度に待ち構えて飛びついて一気に読んでしまう。単語を飛ばして読みながら涙してしまう。抑えた美しい言葉、奥ゆかしさの中から、心が伝わってくる、稀有な存在の作家である。