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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2006.5
- 出版社: 集英社
- サイズ:20cm/271p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-08-774810-9
紙の本
聞き屋与平 江戸夜咄草
著者 宇江佐 真理 (著)
日暮れの両国広小路。商家の裏手口から男が現れる。深編み笠に、着物の上には黒い被布。置き行灯をのせた机と腰掛け二つ。一つは男が使い、一つは客のためのもの。男は黙って話を聞く...
聞き屋与平 江戸夜咄草
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商品説明
日暮れの両国広小路。商家の裏手口から男が現れる。深編み笠に、着物の上には黒い被布。置き行灯をのせた机と腰掛け二つ。一つは男が使い、一つは客のためのもの。男は黙って話を聞く。ただ聞くだけだ。が…。おもわず語ってしまう胸のうち。誰かに聞いて欲しかったこの話。江戸・両国。人の心の機微を描く連作時代小説。【「BOOK」データベースの商品解説】
江戸・両国。薬種屋の隠居・与平は、日が暮れると別の顔になる。町行く人々が抱える人生の悲喜こもごもをひたすら受けとめる「聞き屋」になるのだ。おもわず語ってしまう胸のうち。人の心の機微を描く連作時代小説。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
聞き屋与平 | 5-46 | |
---|---|---|
どくだみ | 47-91 | |
雑踏 | 93-135 |
著者紹介
宇江佐 真理
- 略歴
- 〈宇江佐真理〉1949年北海道生まれ。函館大谷女子短期大学卒業。「幻の声」でオール讀物新人賞、「深川恋物語」で吉川英治文学新人賞、「余寒の雪」で中山義秀文学賞を受賞。
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紙の本
もしも聞き屋が存在したなら
2006/06/12 20:27
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
誰にも言えない話や、どうということのない話を、黙って、だが時に相槌を入れながら聞いてくれる他人がいたらどうだろう。あくまで他人、だ。家族や恋人ではなく、だからこそ語れる胸の内というものが、誰にでもあるのではないだろうか。聞き屋与平を生み出した宇江佐さんの真意はそこにあるのではないかと思う。辻占でもない、本当にただ聞くだけで、助言めいたものは一切しないーそこに、私は一種の潔さと、相反するようだが儚さを感じる。
それはともかくこの聞き屋与平。薬種屋の隠居である。夜中になると机を出して人を待つ。向き合った腰掛けに座った客には麦湯を出す。こんな細かいところにも与平の心遣いが感じられてあたたかい。与平のあたたかさは第一話でもうそれと知れる。いつも話を聞かせにくるおよしが苦界に身を落としそうになると知って、自分の三男の出店の女中になれるよう、渡りをつけるのだ。ここから、およしと与平の間には絶対に解けない絆が生まれる。しかしやさしさや清々しさが心を打つ反面、鯰の長兵衛という嫌な人物も登場する。彼は、与平が昔先々代が死んだ火事で何か罪を犯したにちがいないと思ってしょっちゅうからんでくる。そうしては銭をとっていく。岡っ引きだからってこんな権利があるの、と素直に腹を立ててしまいたくなる。いや、嫌な人物は他にも登場する。先々代の妻だったおうの、およしの母のおまさ、話が進むにつれて、いい人物も出てくるが嫌な人物も出てくる。だが、それこそがまた人の世なのだろう。
最後に悲しいと感じるか、ああよかったと感じるかは人によりけりだろう。私は悲しかった。あまり詳しくは書けないのだが(どうしてだとか、その状況だとかは)、まわりにやさしさを与え続けてきた与平が「殺意に近い憎しみ」を感じたからである。あまりにも与平サイドでこの本を読み続けた私にとって、それはつらいことだった。それでもなおかつ、この作品はいい作品です、とお勧めはしたいのだが。