紙の本
倒叙ものとくれば、見込み捜査、これって常識なんですが、この予断をもって捜査をする、証拠を集めるってえのが嫌いなんですね、私。例え大倉の小説でも、ユルセナイ・・・
2006/08/13 23:15
5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ええ、長女が受験を控えているから、というわけじゃあないんですが、大倉の経歴に「学習院大学法学部卒業」とあるのを見て、つい嬉しくなって(理由はないんですが)娘にみせたところ、彼女も何故か嬉しそうに「学習院かあ」なんてニコニコ、うーん、楽しい発見でした。
で、大倉崇裕といえば我が家での、というか私の中での評価は高い。都筑道夫亡き後の本格推理小説作家のなかでは、一番かもしれないなんて密かに思っているわけです。そういう評価をさせたのは、なんといっても落語雑誌編集者・牧大路と間宮緑が活躍する『三人目の幽霊』『七度狐』『やさしい死神』の三作で、これなくして大倉は語れない、とまで思うわけです。
でも、残念なるかな、今回は大路・緑の落語シリーズではなくて、まったく新しいシリーズです。しかも、スタイルは私の大嫌いな倒叙ミステリ。さらに、しかもです、カバー折り返しには
「現場を検分し鑑識の報告を受けて聞き込みを始める頃には、
事件の真相が見えている!?
おなじみ刑事コロンボ、古畑任三郎の手法で畳みかける、
四編収録のシリーズ第一集弾。
刑事コロンボ、古畑任三郎の系譜
福家警部補は今日も徹夜で捜査する。」
と、私のダイダイ大嫌いな刑事コロンボと、一度として放送を見ることがなかった古畑任三郎の名前があるではないですか。どうする、ミナコ、ではありますが、とりあえず大倉を信ずることにして貴重な一票を投じることにしました。結果やいかに?
閑話休題、脱線中止、本業復帰。創元クライム・クラブの一冊で、ブックデザイン 緒方修一、イラストレーション 山本重也・柳川貴代、巻末に「本書には「ミステリーズ!」連載時の挿絵を収録しました」とあります。まさに私が口を酸っぱくして出版社にお願いしていることなので、東京創元社さんに感謝。で、協力 町田暁雄 とありますが て何?。それは小山の解説に詳しいので、読んでみてください。
本をこよなく愛する人の犯罪を描く「最後の一冊」、自分の仕事を荒らされることを拒む元科警研科学捜査部主任の殺人「オッカムの剃刀」、ライバルである女優の企み「愛情のシナリオ」、そして自分の酒を守ろうとする工場主の誇り「月の雫」。主人公の福家警部補は、年齢不詳で容姿も身長152センチと小柄であること以外は殆ど描かれることのない30代の女性で、よく女子学生に間違われることがあるそうです。よく一緒に仕事をすることになるのが機動鑑識班の二岡友成。
やはり倒叙ものの限界を超えることはありません。基本的には、警察側の見込み捜査です。しかも、殆ど勘によって犯人を先に決め、じわじわと追い詰めていく。証拠はないけれど、犯人は分かっている、という発言が何度も福家の口から吐き出されます。いやですね、この姿勢。それなら先に犯罪を防げよ、って言いたくなりますよ。特に「オッカムの剃刀」なんて。
でも、一番倒叙もので厭なのは、基本的に被害者こそ悪人である、ということなんですね。そいつらさえいなければ、その後の犯罪は起きなかった(例外はあるんでしょうが)。つまり、正義を行った人間を、ただ法律をかざして証拠もないのに犯人と決めつけた人間を警察官が追い詰める、それが私には我慢できない。
それを解決しない限り、倒叙ものには限界がある、そう思うんです。なんとか、大倉にこの壁を突き破って欲しいのですが、彼が目指すのが「刑事コロンボ」であるのなら、やっぱり無理かな、なんて思いもします。
ですから、この本で私が最も感心したのは、小山 正の手によって明かされた大倉の生き方の秘密かもしれません。そこのところ、是非読んでください。町田暁雄協力の謎も、そこに出ているよ、ワトソンくん・・・
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これは面白かったなあ。現場を検分し鑑識の報告を受けて聞き込みを始める頃には、事件の真相が見えている?!おなじみ刑事コロンボ、古畑任三郎の手法で畳みかける、四編収録のシリーズ第一集。
と言うことで、ぜひとも第二弾も期待したいところです。
作品は短編ですが、コロンボ同様に、まずは殺人のシーンから始まり、次にシーン展開があり、福家警部補の登場となります。このあたりは、古畑任三郎よりもずっとコロンボ的です。しかも、映像的なイメージがすぐに湧くような書き方なので、とても楽しめます。そのままドラマ化を期待したいものです。
福家警部補は、チビで童顔、警察バッチをなかなか見つけられなくて、警察官と見てもらえないのです。よれよれのコートは着ていませんが、黒いコートはよく着ているみたい。さらに、お酒に強く映画にも詳しいし、徹夜でもビクともしない「女性刑事」なのです。ドラマ化すると、はたしてどんな方が担当だろうなあ。
小説自体としては、もう少し切れ味を鋭く出来るのじゃないかなと思ったりもしました。こうした作品では、最後に犯人を諦めさせる「決め手」が重要です。その「決め手」はなるべく、誰もが目にしていて気が付かないようなことがいいですね。また「決め手」はひとつでいいです。
「最後の一冊」では本を愛するあまり、「月の雫」ではお酒を愛するあまりに、犯行を犯し、またそのためにほころびを見せてしまうのです。この2作品がよかったです。他も面白かったですが、「愛情のシナリオ」では、途中のカメラマンからの証言取りがご都合主義過ぎるようだったし、そのこと自体が「決め手」にもならないので、少々残念でした。
しかし、久しぶりに刑事コロンボを見るように楽しめました。
収録作品
最後の一冊
オッカムの剃刀
愛情のシナリオ
月の雫
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冒頭で犯人の視点から犯行の経過を描き、そのあと捜査担当の福家警部補が鉄壁と思われた犯行計画をいかに崩していくかを辿る、刑事コロンボや古畑任三郎バリの倒叙形式ミステリ。
今までの落語ものやマニアな作品とはちょっと雰囲気が異なるが、著者がコロンボ・マニアということで本書のような作品が出来上がったのだろう。シリーズ化されるようなので、今後の福家警部補の活躍が楽しみだ。
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どこまでも『刑事コロンボ』に忠実。犯人がボロを出すポイントが上手にシーンの中に組み込まれ、後半の追求シーンに強烈なジャブとなって再登場する様が面白かった。短編集なので各話は短くさらっと読めるが、プロットの組み立てにはさぞや苦心しただろうと想像してしまう。それくらい完成度の高い上質なミステリ。ただ、作中ではあまりリアリティが感じられなかったので、小説というよりは童話を読んでるようだった。
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・コロンボや古畑さんに連なる推理連作。刑事には見えない(且つ酒に超強い)タフな警部補が主役。面白かったです。長編でも読んでみたいですね。
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倒叙ミステリ。
最初から犯人が分かっとるモンで、なんかあっさりですな。
大倉さんはコロンボのノベライズをやってはるそうで。
読んでみよかしら!
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正統派の倒叙ミステリ。知的で論理的な犯人と、常に冷静で鋭く容疑者を追い詰めていく福家警部補との対決が非常に面白い。
様々な証言や証拠から、次第に真相に迫っていく過程と、次第に追い詰められていく犯人の心理的な対決も見物。
やはり「オッカムの剃刀」が一番か。叙述されていたことが伏線として最後の場面まで生かされていて、驚いた。
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幅広い作品を書かれる方ですねー。
落語やフィギィア、山岳、警察もの...そして今作、コロンボ!
実はギリギリ自分はコロンボ世代なはずなんですが
当時はほとんどTVドラマも見ておらず、コロンボというよりは
カックラキンのゴロンボを見ておりました。
確かに、古畑任三郎の手法で犯人を追いつめていく今作の
スタイルは1冊の中では4編がギリですかね...。若干後半に
飽きてきそうになったス。
でも他の大倉作品同様に、優しくホワッとさせる空気感が
漂い、いい作品だと思います。
既に次作も入手済み!
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いいですね~
コロンボフリークにはたまりません。
トリックなども完全に現代版になっており遜色なし。
次回作が是非読みたいです。
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現場を検分し鑑識の報告を受けて聞き込みを始める頃には、事件の真相が見えている?!おなじみ刑事コロンボ、古畑任三郎の手法で畳みかける、四編収録のシリーズ第一集。 (「Book」データベースより)
今年のミス本のランキングに、この本の次の本「福家警部補の再訪」が入っていたので、こっちから読んでみました。とても読みやすいです。大倉さんは「聖域」を読んだことがあったのですが、そちらよりも読みやすかったです。ミステリー自体はなんて言うんでしょうか・・・・・あまり込み入っていなくて、今までに本やドラマなどで見たことがあるような内容です。それがとても入りやすい原因かもしれません。そして福家警部補は本当に「古畑任三郎」でした。ちょっとKYで、でも人情味もあって、どこか刑事っぽくないんだけど、鋭い観察眼を持っている。
4つの短編が収録されているのですが、どれもどこか儚くて、それでいて芯の強い犯人。その犯人に一歩も譲らずに、でもとても丁寧に捜査していく福家警部補の姿はとても好感が持てました。続編も是非読んでみたいです。
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倒叙ミステリ短編集。女性版コロンボ、という印象。これぞ倒叙もの! という面白さがいっぱい。でもってやっぱり初対面から疑ってるし(笑)。
こういうのってどちらかといえば犯人に感情移入してしまうので、読んでいてかなりびくびくします。「駄目だ、余計なこと喋るな~」と思わず犯人に肩入れしちゃったり。こういう犯人って納得できる事情があったり、同情できる部分も多いしなあ。
好きな作品は「オッカムの剃刀」。動機となる部分に関して「見抜いた」福家警部補の洞察力も凄いなあ。まさか○○○から疑っていたとは……。
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先に「オッカムの剃刀」をドラマで見てしまいました。
すっかり福家警部補が永作博美さんがなってしまいました。
原作にほぼ忠実なドラマで面白かったです。
シリーズ化しないかな?
原作もドラマも古畑任三郎の様に先に犯人が分かっています。
女性版古畑任三郎のような感じで読みやすいです。
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縁なし眼鏡をかけていて身長152センチ。映画好きで実は酒豪。
童顔な上、前髪を眉の上で切りそろえているためかなり幼く見える。
そのため現場ではいつも捜査関係者と思ってもらえないが、本当は30過ぎの敏腕警部補・福家。
彼女が手がけた事件、「最後の一冊」「オッカムの剃刀」「愛情のシナリオ」「月の雫」の4編収録。
タイトルはよく目にしていたのですが、まさか倒叙モノ、しかも福家警部補が女性だったとは、驚きました。
倒叙ミステリというのは「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」のような、犯行の様子から始まる作品。
犯人がわかっているので、どのミスから犯人が追い詰められていくのか、それをどう言い抜けようとするのか。
という攻防のドキドキハラハラが見もの?なのかな?
実はあまり読んだことがないのですけど。そして上記の2つのドラマもあまり観たことがないのですけど。
どの作品も面白かったです。が、もう少し驚きが欲しかったかなぁ。
そんな私のお気に入りは動機の意外性から「愛情のシナリオ」。
あと「オッカムの剃刀」、要所要所でなんだか知ってる気がしていたのですが。
どうもドラマ化されていて、それを観ていたみたいです(2009年、永作博美さん主演)。
倒叙ミステリで思い出すのは東野圭吾さんの『容疑者X』と『聖女の救済』。
やっぱり倒叙の仕組みを使っていつつ、もう一段階読者をあっといわせる仕掛けが欲しいところです。
でも短編のキレも捨てがたい。この作品はこれでじゅうぶん楽しめました。
続きも読みます。
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犯人が誰か最初に分かっていて、刑事が犯人を追い詰めていくというコロンボあるいは古畑ストーリの短編集。福家警部補は毎度毎度「あなたが担当者?」と聞かれるほど刑事に見えない。背の小さいしかも童顔という設定らしい。実は私もそんな感じの貫禄のない体系と顔をしているのでなんとなく親近感。コロンボファンだったので、とっても面白く読めたのですが。犯人がちょっとお馬鹿すぎかなあという面も。これくらいの犯罪者なら、名探偵でなくても暴けるかも。
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何となく取った一冊だったが、面白かった。
感情の挿入が一瞬だれがのと迷うことがあったが・・・
犯人メインと言ううことか