紙の本
技術的な視点以外にもより多様な観点から失敗の原因要因というものを考察
2006/10/09 18:38
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
失敗学という学問が研究されているという。従来は事故や怪我は本人の不注意や未熟と見られていた。だいぶ以前から人間工学やヒューマンインターフェイスという観点から見直されてきてはいた。しかし、工学や技術的な面からの研究が主であった。ここへきて、技術工学的な観点だけではなく、社会科学的、人文科学的な視点から事故や怪我に至る失敗を解析しようとする流れがある。機械設備の複雑化高度化、大規模システム化、により個人ちょっとした失敗が大被害をもたらす事故に直結するようになってきたためであろう。
本書もそのような観点から書かれている。従来の失敗学の本は、やはり技術的な視点からのものであった。私が読んできたなかでは、この本が初めてより多様な観点から失敗の原因要因というものを考察している。人が失敗する背景となる組織の硬直化、効率化や目標達成の圧力、リスク管理の問題、人間心理の傾向、等々、人間が組織のなかで何故ミスを犯すのか、マネジメント的な面から解析している。今後は、文科系事務系の人びともよく考え、知っておくべきことが書かれている。
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世間を賑わせたあの企業の不祥事も含めてたくさんの事件の実例を具体的に紹介。その中から共通点を抽出して、まずい行動の原因を探る。ヒューマンエラーは、永遠に無くならないのですね。
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失敗事例に多数言及されており,分析もわかりやすい。「事故は傍流から発生する」,「専門家の落とし穴」,「悪魔は細部に宿る」などわかりやすい教訓が満載で,危機管理の良い教科書になると思う。
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世の中で起こっているたくさんの不祥事を例にとり、なぜこんなにもたくさん不祥事が起こるのか、繰り返されるのか、について書かれている。
まず、人間とは必ず失敗をする、というのを念頭に置く必要がある。その上でどのように「取り返しのつかない失敗」を回避するか、である。
取り返しのつかない失敗を回避する方法が3つあがっていた。?過去の失敗から学ぶ、?想定されるリスクを挙げて、シュミレーションする(形式上ではなく)、?失敗が起きてしまったときには、素直に謝罪し、将来に向けて二度と起こらないように徹底的に議論する。
特別なことは言っていない、と頭では分かるのだが、実際やってみるのは本当に難しいことだ。
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最近、コンプライアンス、不祥事というキーワードで集中的に本を読んでます。この本は流行の「失敗学」の流れをくんでますが、これまでの「失敗学」はどちらかというと技術分野に焦点をあてていたのに対し、本書はいろんな組織を対象としてとても読みやすく書かれてます。現職の警察官僚が書いた本だけあって、突っ込んだ分析もされていて納得できます。コンプライアンスの入門書として、またリスクマネジメントの事例集としておすすめです。
□人はなぜ、ミスを犯すのか
ヒューマンエラーの背景にある職場環境、ベテランだからこそ事故を起こす(単に経験年数が長いだけのベテランの弊害)、集団的意思決定のエラー(波風を立てるのはよくない)、リーダーシップの負の側面(強すぎるリーダーは「裸の王様」)
□危機意識の不在
危機感の麻痺(過去の教訓を忘れる)、安全対策の摩耗(些細な違反も積もれば山となる)、アウトソーシングの落とし穴(責任なければ無責任)
□行き過ぎた効率化
コスト削減のしわ寄せ(いつも犠牲にされるのは安全)、成果主義の病理(性急な成果主義の導入が組織を蝕む)、人間とコンピュータの争い(最後に主導権を持つのは誰か)
など、項目だけをみても示唆に富んだ内容で、組織として考えておかなければならない重要なことばかりです。
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樋口先生の講演と本から自分なりに整理してみました。
くそみそ理論
くそと味噌を混ぜるとくそ(全く使えない物)になる。
守らなくても問題のない基準が多いと、守らなければ大変なことになる基準もないがしろになる。
つまらない会議が多いと、大切な会議のレベルも下がる。
味噌にくそが混ざらないように、基準も会議も厳選していきたいものだ。
『紙』様信仰
組織が官僚化すると、規則や報告書などの文書類が増加し、本来の現場管理に傾注出来なくなる。
はんこの数が多いと、決定までに時間がかかるだけでなく、真剣に見る人がいなくなる。
大切なのは、誰が責任者かを明確にし、責任者が設備の発する声を現場で聞いて、責任を持ってやり遂げることだと思う。
紙とはんこの数を半分にし、現場に行く時間を今の倍に出来ないものだろうか。
高名の木登り
木登りの名人が弟子に高い梢の枝切をさせた時、高いところでは何も言わなかったのに、地上に降りる直前に「注意せよ」と声をかけた。
慣れて安心する頃が一番危ない。
新人は規則を呼んでから仕事に取り掛かるが、ベテランは規則を読まずに今までのやり方で実施することが多い。規則が変わっていた場合は大変な事になる。周りの人も新人には注意してもベテランには言い難い。ベテランや上司こそ気をつけて行動したいものだ。
小田原評定
北条家は打って出るか、篭城するかと延々と会議をしている内に、機を逃して滅びてしまった。
会議に出席する一人ひとりが、「これは俺の責任だ」と難題を背負ってやり抜く野武士集団であって欲しい。
グループシンク
チャレンジャー号は、燃料漏れを起こしたパッキンが危ないとメーカーは分かっていながら、遅れがちな発射スケジュールを取り戻そうと言う雰囲気に呑まれて言い出せず、爆発してしまった。
トラブルが発生すると、たくさんの人が集まって会議を行う。情報を共有し英知を結集するために必要なのかもしれないが、実際に発言するのはごく一部に限られる。
さらに偉い人が出席し発言すると、反対意見も出にくく、流れて行く。
本当に有用な会議とするために、出席する一人一人の「俺はこれに責任を持つ」という意識が欠かせない。
ロシアンルーレット
JCO事故は、効率化のために少しルールを緩め、前は問題なかったから次はもう少し緩め、というロシアンルーレットの連続だ。
ルールを少し緩めて実行する事が必要なら、専門家がきちんと判定してルール自体を変え、ルールを遵守する事だ。
後部座席のシートベルトも面倒くさいけれど、ルールになった限りは守っていこう。
責任なければ無責任
美浜事故は「情報を隠したりはしないが、登録漏れがあっても積極的に説明しない」というアウトソーシング特有の問題から起きた。
アウトソーシングすると関係者の間で情報や認識がなかなか共有されにくくなるが、そのギャップを埋めるのも道義的責任や法的責任を取るのも、発注元である���力会社だ。
「任せてあるから大丈夫」ではなく、どういった業務をどう実行するのか、どうチェックし、どう報告されるか、をしっかりと認識した上で発注していきたい。
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最近は頑張れば頑張るほど、「まずい」方向に向かってしまうのはなんでだろう?
⇒1年経って講演を聴く機会がありました。
やはりわかりやすかったです。
そして自分のまずい方向への吸い寄せられる力は
ますます強まってます。まずい。(09/03/14)
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サラリーマン作家を自称するだけあって非常に多くの人に共感を得られやすそうな論旨の展開で描かれている。そして組織をリアルに見ていることもよく伝わってくる。「チェックができていない→チェックすべき」という単純な論調ではなく、現場ではチェックが働きにくい力学までしっかり踏み込んで理解した上で描かれている。
しかしその対策や再発防止の観点ではやはり弱い。「チェックすべきだけど現実は厳しいよね」「こういうこともできたかもしれないね」という程度で止めてあるので解までこの本に求め始めると「じゃあ、どうするの」は非常にぼやけて見えてしまう。
あくまで組織の力学の理解と、その危険性を理解した上で自ら教訓として活かすには十分な内容だ。
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危機管理、リスクヘッジ、失敗学、大規模事故から歴史的合戦まで
幅広く組織行動のありようを述べた名著です。
著者は警察組織で危機管理に携わったベテラン。
「コンコルドの誤り」や「長篠の合戦」など多くの事例を取り上げています。
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文章が分かり易いのですらすらと気軽に読めるが、内容は決して人ごとではない、いつ自分の周囲で起こるかもしれぬ事例が満載。
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チェック項目40箇所。
ヒューマン・エラー・・・人間とはエラーを犯す生き物。
間違いは誰にでもあるが、現代はちょっとのミスが大惨事になる可能性がある。チェルノブイリ原発事故は原発自体がヒューマンエラーを誘発しやすく、しかも大惨事に結びつきやすいものだった。
福知山線脱線事故の例。組織や制度、人間関係によって
引き起こされた事故。
患者取り違えの医療ミス。ベテランだから起こすミス。年上の部下と
うまく付き合えていない。自分の力量に慢心があり、自分が絶対正しいと
思い込み、新しい技術・知識習得をしようとしない。
この慢心が予想外のミスを引き起こす。
戦国時代の例では、あの徳川家康も重要事の決定は自分一人で行っていた。集団解決は難しい。
チャレンジャー号爆発事故。事故が予期されていたが、2度の延期も
あり、自分の会社だけ反対して再延期させるのは申し訳ないという
集団意識から大惨事を引き起こしてしまった。
WBCでの誤審騒ぎの件。大本のルールの解釈。
日本航空123便の墜落事故。7年前の不適切修理が直接の原因。
その間、整備がされ、チェックもされているがすべて見過ごされてしまった。
クロネコヤマトメール便7000通未着。アルバイトと社員の意識の違い。
年功序列、終身雇用は戦後企業側が採用した制度。
資金のない会社が若手を引き止めるために用いた制度。
中華航空機墜落事故・・・人の手を最小限にしたが、ミスは起こる。
ヒヤリ・ハットの事例が活かされていなかった。
和歌山砒素カレー事件。当初黄色ブドウ球菌による食中毒と断定されていた。専門家の思い込み・・・夏祭りに化学物質が混入されるわけがない。
症状を聞いて、あり得るものは黄色ブドウ球菌と結論から出してしまう。
撤退する難しさ。コンコルド計画、長篠の合戦。「ここまできたのにもったいない。」・・・パチンコと同じ感覚。
失敗学に学ぶ・・・自らの失敗を真摯に反省した上で、同じ過ちが
繰り返されないようにその経験をありのまま伝え、それを聴く側も
自分がいつ同じ過ちを犯すかわからないという怖れを持つことが
失敗に学ぶ姿勢。
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[ 内容 ]
JR 西日本脱線事故、過去の教訓を忘れた雪印や日本航空…。
大きな事故や大事件の陰には、ほんのささいなミスが潜んでいる。
小さなミスの見逃し、先送り、ベテランならではの慣れからくる慢心、コスト削減一本槍で安全の手抜き、成果主義のみに陥った組織の崩壊。
いま、あらゆる分野で綻びが生じている。
近年、「失敗学」という言葉が普及しつつある。
これまでの失敗学は、技術工学の分野で研究が進められてきたが、いまは文科系の世界にもその必要性が問われている。
本書は、マネジメントの分野に着目して、組織の中で人はなぜミスを犯すのかを分析し、リスク管理の教訓を探ろうとするものである。
「これは、ちょっとまずい!」豊富な実例集である。
[ 目次 ]
第1章 人はなぜ、ミスを犯すのか(ヒューマン・エラーの背景に在るもの―エラーを誘発する職場環境 熟練者の落とし穴―ベテランだからこそ事故を起こす ほか)
第2章 危機意識の不在(危機感の麻痺―「今そこにある危機」が見えない 安全対策の磨耗―些細な違反も積もれば山となる ほか)
第3章 行き過ぎた効率化(コスト削減のしわ寄せ―いつも犠牲にされるのは安全性 成果主義の病理―性急な成果主義の導入が組織を蝕む ほか)
第4章 緊急時への備え(非現実的なシミュレーション―何のためのシミュレーションか 初動措置の重要性―対応の遅れが破局を招く ほか)
第5章 リスク管理の要諦(撤退判断の難しさ―リスク管理に「もったいない」は禁物 監視機構の実効性―お目付役は大丈夫? ほか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
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読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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大学の麻酔科でリスクマネージメントの仕事をしていた時に非常に影響を受けました。医療事故にプレイングマネージャとして携わる人には極めて良書だと思います。
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○結局のところ、多数の人々が集まって議論するのは、その集団内の「和」を形成する上では有用だが、効率性の面では問題があるということだ。(47p)
○余裕が必要以上に設定されていると、やがて関係者はそれを当てにして行動パターンを変化させるようになり、そのことが新たなリスクを招来する。(89p)
○情報の不足はあくまでも「結果」にすぎず、その「原因」のうちの相当の部分は、情報を求める側に在る。(172p)
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組織で失敗が繰り返されるカラクリの話。
人の心理的なことと、ではどうしたら失敗しなくなるか考えるヒントを豊富な実例をもとに満遍なく書かれてありました。
この実例は日程VS品質(or安全)の議論になった際ネタ帳として使っていきたいと思います。