紙の本
民話の謎から豊かな人生を
2006/08/26 10:36
9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:金田 悦二 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「大きなかぶ」の六つのなぞとは?
なぜ「じゅうたん」が空を飛ぶのか?
桃太郎の出生の秘密とは!?
森にお菓子の家があるのはなぜか?
民話、伝説、昔話等は実に荒唐無稽である。しかし、その荒唐無稽さには奥深い理由があるのだ。本書では民俗学や口承文芸と関係をもつ分野の研究者たちが幅広い視点から世界の民話に潜む謎を解き明かしながら、変容してきた民話の楽しさ、文化の多様性の大切さを語っている。
また、随所に織り込まれる「若返り・不老不死の願い」「水に棲む妖怪・妖精」「特別な数字」などのコラムも学問の面白さを存分に感じさせる。
かつて、吟遊詩人が語り、シルクロードの商人が旅で見聞きしたことに多少の味付けをして物語風に語ったというが、そこには単に情報伝達にとどまらず多様な文化が背景にあった。編者は、個別性と普遍性を同時に提供する口承文芸から得られる多様な価値観をグローバル化し、未来社会のデザイン・人生の多様なモデルの提示につなげようとしている。
絶滅危惧種と憂慮される民話の世界がこんなにも深くて面白いものだったとは。子どもに昔話を語ることは、「大人が自分のために時間をとってくれた記憶が 大切にされた自分 という感覚を育てるだろう。しかも共有した楽しい時間の記憶は大人の生き方にもうれしい影響をもたらすはず」という指摘にはうなずける。民話を読んでみよう、語ってみようと思う。
新書版で携帯に便利、民話ごとに読み切りなので空いた時間にちょこちょこ読める。「子どもに接する職業であるか否かに係わらず手軽に本書から多様な価値観を摂取してまなざしひとつで人生を豊かにするすべを得ることが期待できる」という。すべての大人たちへの心からのメッセージである。
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投稿者:6EQUJ5 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「大きなカブ」や「空飛ぶじゅうたん」「桃太郎」といった世界の民話を解説。丁寧に記載していますが、あまり「なるほど」という内容は無かったかな。残念ながら。
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大きなかぶは中身が無かった。これは、有用な学問を求めるここ数年の日本社会の帰結である。童話の謎解きというと、傑作「ハーメルンの笛吹き男」を連想する。この本にそのレベルを期待すると失望する。別々の著者により全部で14本が載せられているが、1本1本がやはり短すぎるようで、紹介レベルで終わって発展性がない物ばかりである。ただし、前書きによれば、紹介がこの本の趣旨のようであるから、無いものねだりかも知れない。あとがきによると、文部科学省・学術審議会学術分科会、人文・社会科学特別委員会の報告書に基づき平成15年度から実施されている「人文・社会科学振興プロジェクト研究事業」のプロジェクト群の一つ「豊かな人間像の獲得」の中の、「伝承の現場からの考察」グループの自己紹介の選集のようなものが本書だそうだ。つまらない理由が分かった。
星について
各著者毎にバラバラな内容であり、面白そうな題材が少ない。民話とそれを生み出した社会状況についての掘り下げも浅く、尻切れトンボで終わっている話が多い。そもそも、取り上げる価値があるのか疑問の話もある。とはいえ、資料的な意味は少しはある。よって、星2個。
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昔話・童話の謎について書かれていますが、一時期流行した「本当は怖い・・」といった内容ではありませんのでご安心を。
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森は神々の住まう聖なる空間だった。そしてグリム兄弟もまた森という空間が日常世界とは異質な世界であり、尊くかつ不思議な領域だと意識していた。キリスト教伝道師たちは、ゲルマンの民にとって聖地である森にキリスト教の聖なる教会を建てることで、聖地の二重化を図り、改宗を促進したという。このように元来の自然信仰をうまく取り込みながら、ゲルマンの民を改宗させてゆくとき鍵となったのが、やはり森だったのだ。そしてグリム兄弟もまた自らがキリスト教徒であるというその枠組みを超え、自分たちの根源、心の故郷としての聖なる森を意識していたのだ。
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[ 内容 ]
本書は、世界中の昔話や伝説など人々の間で伝承されてきた物語がいかに多様で面白さに満ちているかを知ってもらうために編まれたものである。
たとえば、幼稚園や保育園で子どもに絵本を読む人々や、家庭であるいは地域社会で子どもに接する人々に読んでいただければうれしい。
そして、子どもと接する職業であると否とにかかわらず、毎日食べる食事のように何気なく、気軽に、手にとって話題を摂取していただければなおうれしい。
[ 目次 ]
第1章 ふしぎな力(大きな「かぶ」の六つの謎(ロシア)(齋藤君子) なぜ「じゅうたん」が空を飛ぶのか?(イラン)(竹原新))
第2章 妖精たちの棲む森(森にお菓子の家があるのはなぜか?(ドイツ)(大野寿子) 水辺の美女が愛される理由(東スラヴ)(塚崎今日子) 妖精がなぜ子どもを取り替えるのか?(イギリスなど)(美濃部京子))
第3章 世界の英雄たち(「草原の英雄」を生んだ両親は誰か?(ユーラシア)(坂井弘紀) 英雄らしくない英雄が人を惹きつける理由(インド)(長崎広子) “不完全な将軍”が雨乞いの神様になるまで(朝鮮)(真鍋祐子) ラテンの民衆はピカロ(悪者)がお好き(スペイン)(三原幸久))
第4章 鬼退治のはなし―日本の英雄たち(おばあさんはなぜ桃を食べたのか?(内ヶ崎有里子) どうして桃太郎に出生地があるのか?(齊藤純) 「らいこうさま」はどこへ行った?(加藤康子))
第5章 絵になったお話(毛糸絵になった洪水神話の謎(メキシコ)(山森靖人)
絵本の声が聞こえますか?(阿部紀子))
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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絵本などで有名なおはなしも本によって細部がちがったり。
口承伝統を研究している人たちがそれぞれ成果を発表しています。
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研究者たちがそれぞれの研究を紹介するのが主旨だったようで、正直ちょっと物足りなかった。
内容はそれぞれ興味深いけど、テーマも研究方法もバラバラなので雑多な感じがいなめない。
民話研究の足掛かりとか、興味を持つきっかけにするには良い本だと思う。
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≪目次≫
第1章 ふしぎな力
大きな「かぶ」の六つの謎
なぜ「じゅうたん」が空を飛ぶのか?
第2章 妖精たちの棲む森
森にお菓子の家があるのはなぜか?
水辺の美女が愛される理由
妖精がなぜ子どもを取り替えるのか?
第3章 世界の英雄たち
「草原の英雄」を生んだ両親は誰か?
英雄らしくない英雄が人を惹きつける理由
”不完全な将軍”が雨乞いの神様になるまで
ラテンの英雄はピカロ(悪者)がお好き
第4章 鬼退治の話ー日本の英雄たち
おばあさんはなぜ桃を食べたのか?
どうして桃太郎に出生地があるのか?
「らいこうさま」はどこへ行った?
第5章 絵になったお話
毛糸絵になった洪水神話の謎
絵本の声が聞こえますか?
≪内容≫
世界の民話(童話)を分析したもの。内容はまちまち文学的、社会学的、歴史学的などなど。
桃太郎の出生地の話などは結構面白かった。
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本書の執筆に関わっているのは,文科省の「人文・社会科学振興プロジェクト研究事業」の40グループの中の一グループ「伝承の現場からの考察」に参加した8名である.
ターゲットとなる民話は世界各地から日本のものまで幅広いため,興味を持てるものと持てないものがある.さらに各章の執筆者の実力と文章力の差も感じてしまう.平均すると星(★)2個半くらいかな.
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意外に真面目な内容で驚いた。
物語の文化的な背景などが書かれてあるが、物によっては全く馴染みのない物もあった。
じゅうたんが何故飛ぶのかと森にお菓子の家がある理由、水辺の美女と桃が食べられる訳辺りは雑談に使えるか。
まあまあ面白かった。
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世界の民話が、こんなに面白いとは!
文化や歴史的背景を知ることで、ますます面白くなる。
そのことを教えてくれる本。
表題となっている「大きなかぶ」の論考が一番面白い。
専門家ってやっぱりすごい、と思わせてくれる。
ただ、残念ながら、そういう楽しみを与えてくれる章ばかりでもない。
自分の、つまり読者の側の問題なのかもしれないが・・・
読み進んでいくうちに、テンション・ダウン。
読み疲れたから? それとも知らない民話ばかりになっていくから?
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思っていたのとちょっと違うかったです。最初だけ読んでみたけど、童話を読む際に、こういう注釈って本当に必要なの?って気持ちが先に立ってしまい、読み続ける気になりませんでした。
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第1章 ふしぎな力(大きな「かぶ」の六つの謎(ロシア)(齋藤君子、1944-、口承文芸学):なぜ「じゅうたん」が空を飛ぶのか?(イラン)(竹原新、民俗学))
第2章 妖精たちの棲む森(森にお菓子の家があるのはなぜか?(ドイツ)(大野寿子、口承文芸学);水辺の美女が愛される理由(東スラヴ)(塚崎今日子、ロシア文学);妖精がなぜ子どもを取り替えるのか?(イギリスなど)(美濃部京子、口承文芸学))
第3章 世界の英雄たち(「草原の英雄」を生んだ両親は誰か?(ユーラシア)(坂井弘紀、口承文芸学);英雄らしくない英雄が人を惹きつける理由(インド)(長崎広子、インド哲学);“不完全な将軍”が雨乞いの神様になるまで(朝鮮)(真鍋祐子、社会学);ラテンの民衆はピカロ(悪者)がお好き(スペイン)(三原幸久、1932-、大阪市、スペイン文学))
第4章 鬼退治のはなし―日本の英雄たち(おばあさんはなぜ桃を食べたのか?(内ヶ崎有里子、1959-、宇都宮市、日本文学);どうして桃太郎に出生地があるのか?(齊藤純、民俗学);「らいこうさま」はどこへ行った?(加藤康子、1954-、愛知県、日本文学))
第5章 絵になったお話(毛糸絵になった洪水神話の謎(メキシコ)(山森靖人、文化人類学);絵本の声が聞こえますか?(阿部紀子、教育学))
編者:小長谷有紀(1957-、豊中市、文化人類学)
コラム:荻原眞子(民俗学)
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昔話に潜む世界の秘密。
そういえば,なぜ「じゅうたん」が空を飛ぶのか。なぜねずみが加わったらかぶが抜けるのか。森の中のお菓子の家って何。昔話には色々と謎がある。そういうものだ,と思っていたけれど,民俗学や文化人類学の視点で見れば理由のあることなんだろう。シンデレラと落窪物語のように,違う地域で似たようなお話があるのとかも。
語られる,つまり口伝されてきた物語の寿命は。口承文芸の絶滅は大きな問題。でも,保存するのと同時に,どのように変化(衰退? 発展?)するのかも記録していくものなのだと,あとがきを読んで考える。