「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
- カテゴリ:一般
- 発行年月:2006.8
- 出版社: 太田出版
- サイズ:19cm/279p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-7783-1028-4
紙の本
映画『太陽』オフィシャルブック
著者 アレクサンドル・ソクーロフ (ほか著),リンディホップ・スタジオ (編集)
終戦前後の昭和天皇の葛藤を赤裸々に描き、世界各国で絶賛されながら日本公開が危ぶまれたロシア映画「太陽」の全貌がついに明らかに。ソクーロフ監督へのインタビュー、初公開のシノ...
映画『太陽』オフィシャルブック
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
終戦前後の昭和天皇の葛藤を赤裸々に描き、世界各国で絶賛されながら日本公開が危ぶまれたロシア映画「太陽」の全貌がついに明らかに。ソクーロフ監督へのインタビュー、初公開のシノプシスほかを収録。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
映画『太陽』シノプシス | ユーリー・アラーボフ 著 | 16-20 |
---|---|---|
映画『太陽』をめぐって | アレクサンドル・ソクーロフ 述 | 22-47 |
歴史のラディカルな「個的還元」に向けて | 沼野充義 著 | 48-52 |
著者紹介
アレクサンドル・ソクーロフ
- 略歴
- 〈アレクサンドル・ソクーロフ〉1951年イルクーツク生まれ。モスクワ国立映画学校で学ぶ。ペレストロイカまで全ての作品は公開禁止の処分を受けていたが、90年代以降世界中で評価が高まっている。作品に「孤独な声」等。
関連キーワード
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
一瞬見た夢なのか?
2006/09/02 11:20
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栗山光司 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ソクーロフ監督は沼野充義との対談で、日本人に対して、気恥ずかしいほどの語りを行う。昭和天皇にパチンコ玉を撃った奥崎謙三のドキュメント映画『ゆきゆきて、神軍』(監督:原一男)や『MISHIMA』(ポール・シュレーダー監督、緒方拳主演)は一人の元兵士が昭和天皇に対して戦争責任を追及したり、人間宣言に対して裏切られた感情を蔵して自栽した作家の映像は過剰な物語がないと人間は生きることが出来ないのかという問いをつきつけられましたね。
映画『太陽』において足立正生との対談で「歴史的認識の中で天皇を描かないでどうするんだ!」と足立さんに一喝されたら、「私は歴史なんて、興味がない」とソクーロフに返されたということです。
僕はこの映画は未見です。関西での上映が遅れており、映画を見る前にオフィシャルブックである本書を先に読むという反則を犯してしまったのです。(本当に映画はまっさらな気持ちでみたいものですよね)
わかっているけれど、辛抱できなくて読んでみたら、まずは沼野充義との対談なのです。そこで、面と向かって「…世界には人類の文明を守る番人のような国が二つある。それがイギリスと日本だと思うんです。…」とソクーロフに社交でなくベタに言われる。
沼野さんでも僕でも、多くの日本人たちが、小さい頃から刷り込まれていたマッカーサーの有名な言葉「アングロサクソンが45歳の大人だとすれば、日本人は精神的にはまだ12歳の子供みたいなものだ」が一笑に付される。「とんでもない、正反対ですよ。世界には未成年国家が二つある。一つは早熟なませた子供で、もう一つはいつまでも成長しない子供です。それがアメリカとロシアです。」
一体どんな人なんだろうと、映画を見る前から監督自身に興味がつきない。本書所載の鼎談(島田雅彦×渡部直己×上野昂志)はソクーロフの俗なエピソードも語って彼のエロチシズムが日本の風景に対して寡黙に舌なめずりしている視線が感じられるが、恐らくその視線が『太陽』に正対しようとして視線を外し、撮影現場には多数の鏡が用意されたということなのか、鏡像を通して、「歴史」をズラした非常に主観的な「もう一つの生」としての「記憶」を虚構化したものではないか、「日蝕」としての太陽なのでしょう。
椹木野依は「機械仕掛けの『太陽』」で1988年の暮れから翌年の元旦にかけて皇居で起こった出来事の空白に挿入する思考実験を行う。
あのとき夜になっても放送を終了しないテレビの報道画面の向こう側に、《…ほとんど心臓の鼓動と血液の循環を保つための機械的なシステムにまで還元されて、その時、天皇の脳や意識の状態がどうであったかは「知るよしもない」けれども、朧げで走馬灯走りのような追憶と人生の圧縮のなかで一瞬見た夢ーーそれがこの映画『太陽』の内容であると考えると、自分には驚くほどしっくりくるのだ。》
どちらにしろ、早くこの映画を観たい、観た後では、本書に対する感想がまるっきり違ってくるかもしれない。
歩行と記憶