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紙の本
悪魔な恋人♥ (ラヴァーズ文庫)
著者 森本 あき (著)
「俺の命が欲しいなら、俺を満足させろ」。落ちこぼれ悪魔リルは、次の任務を成功させなければ消滅(死)してしまうというピンチに直面していた。悪魔の仕事は人間と契約し、その命を...
悪魔な恋人♥ (ラヴァーズ文庫)
悪魔な恋人
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商品説明
「俺の命が欲しいなら、俺を満足させろ」。落ちこぼれ悪魔リルは、次の任務を成功させなければ消滅(死)してしまうというピンチに直面していた。悪魔の仕事は人間と契約し、その命を奪うことだが、優しいリルは一度も人の命を奪ったことがなかった。そんなリルに与えられた最後のチャンスは、由緒正しき公爵家の長男、九条直次の命を取ること。直次は、家の財力と権力にものを言わせ、やりたい放題に生きてきたが、誰にも言えない本当の望みがあることを隠していた。リルが直次の望みをみつけられれば、その命はリルのもの。できなければ任務失敗でリルは死ぬ。どちらが勝っても、どちらかがいなくなる…。恨みっこなしで始めた勝負だったが、心優しき悪魔は、いつしか…。【「BOOK」データベースの商品解説】
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一番怖いのは人間というのはよくある話ですが…
2007/03/20 16:48
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hamushi - この投稿者のレビュー一覧を見る
信じられないほど気だてのいい悪魔の少年リルと、人生に絶望するあまり並の悪魔よりよほど悪魔的になってしまった直次という青年が、お互いの命をかけて恋愛するという、かなりトンデモない設定のお話なのですが、涙腺のツボが巧妙に、しかも多量に配置されているためか、ほだされまくっているうちにどんどん読まされてしまいました。
直次は由緒正しい侯爵家の長男なのですが、父親がゆきずりのロシア人女性に産ませた子であるという理由で、十数年に渡って巨大な屋敷に監視付きで幽閉され、幼少期から学校にも行かせてもらえず、金と物とセックスフレンドだけは欲しがるだけ与えられるものの、肉親からは存在しない人間として全く顧みられることなく、孤独に暮らしていたのでした。
児童虐待、人権蹂躙も甚だしいシチュエーションなのですが(そこまでするぐらいなら、口止め料つきで養子に出すが自然でしょう…)、悪魔が普通に実在するような世界観なので、そう違和感もありません。幽閉されている直次のところには、引きも切らず悪魔がやってきて、契約を取り付けようと迫るのですが、もはや人生に何の期待も持てない直次は、悪魔の甘言にまるで引っかからず、全て撃退しています。
リルも最初は、直次と契約して命を奪うために接近するのですが、直次のあまりにも惨い生い立ちと、自分と同じように、いらない子供として孤独に苦しむ心を知り、次第に気持が通じ合うにしたがって、放っておけなくなってしまいます。
直次と契約できなければ、できそこないのリルは、今度こそ悪魔失格の烙印を押されて消滅させられてしまうことになっています。けれども契約が成立すれば、直次の魂は地獄に落ち、運良く悪魔に生まれ変わったとしても、記憶も人格も別物になってしまう……二人に用意されている結末は、ちょっと意外なものですが、なかなか粋なはからい、というべきものでありました。
蛇足ですが、リルの父親である堕天使が、直次と同じ顔をしているという設定は、一見それほど効果的でない、ムダなもののように思えましたが、そのおかげであとになってじわっと深みを感じる部分があり、おもしろいなと思いました。それにしても、悪魔も直次ではなくて、彼を幽閉しているような最低な侯爵家の大人を狙って地獄に落とせばよさそうなものなのに、それをしないのはなぜなのか。悪魔的な仕打ちをしてはばからない一族だけに、魔界ともうまく話がついていたりするのかもしれず、そう思うと、最後まで全く顔を出さない侯爵家とやらの人々の存在が、かなり不気味なものに思えてきます。
あと、名前だけしかでてこないけれども、リルに「あのひとたちは、ホントにすごいんだから」と言われているインキュバス(淫魔)を、ちょっと見てみたいと思いました。