- 販売開始日: 2014/08/01
- 出版社: 朝日新聞出版
- ISBN:978-4-02-273113-5
ヒルズ黙示録・最終章
著者 大鹿靖明
堀江貴文、村上世彰、東京地検特捜部。彼らの闘いが描き出す現代日本社会の実相。2006年に証券取引法違反容疑で逮捕、起訴された、二人の「カリスマ」。「時代の寵児」としてもて...
ヒルズ黙示録・最終章
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商品説明
堀江貴文、村上世彰、東京地検特捜部。彼らの闘いが描き出す現代日本社会の実相。2006年に証券取引法違反容疑で逮捕、起訴された、二人の「カリスマ」。「時代の寵児」としてもてはやされた彼らは何をしてきたか、なぜ、摘発されたのか。社会の新勢力を代表する彼らと、旧勢力を代表する検察側との死闘を暴きだす、同時代ノンフィクション。
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自分しか愛せないかわいそうな男=堀江貴文は、部下(宮内亮次・中村長也)には裏切られ会社の金を使い込まれ、村上世彰には馬鹿にされ、三木谷には出し抜かれ、そして会社を追われすべてを失った
2007/01/10 22:43
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書を読んでの一番の感想は、堀江貴文という男は、結局、友達が一人もおらず、部下からも慕われず、同僚からも馬鹿にされ、村上世彰からも馬鹿にされた、非常に哀れで、孤独で、悲しくも滑稽な存在だったということだ。この友達が出来ないという堀江の性格は筋金入りで、前著の「ヒルズ黙示録」によれば、彼の孤独・孤立は小学校から始まるとのことだが、どうも誇張ではなさそうだ。東京地検特捜部に踏み込まれ、ライブドアの存続自体が揺らぎ、社内が騒然とする中で、堀江が放った言葉は「俺は知らないよねー」「関係ないよねー」という言葉であり、真っ先に心配したのは会社の将来でも、部下の今後でもなく、当時交際中のモデル上がりのタレント「吉川ひなの」のことだった。これじゃあ部下が堀江のことを見放すのも無理はない。
本書のもう一人の主人公である村上世彰についても、著者は正確にその本質を描いている。落ちこぼれやニートたちの神様にしか過ぎなかった堀江と異なり、村上さんには頭脳も、ヴィジョンもあった。ただ彼の最大の失敗は、その、あまりに優れたヴィジョナリーぶりが世間の注目を集めすぎ、彼の元に世界中から「私のお金を運用してください」と資金が集まりすぎたことだった。1億や2億のはした金を運用することは大した手間ではない。しかし4000億円を運用するとなると話は大きく異なってくる。村上氏が東京スタイルや昭栄に対して仕掛けたような地道なアクティビストファンドマネージャーではやっていけないのである。それで彼が見出した答えがオツムが足りないくせに金と虚栄心だけは人一倍持っている堀江や三木谷という「カモ」を嵌めて、彼らに割安で取得した放送会社の株を高値で売りつけることだったのだ。
著者の追及の矛先は東京地検特捜部にも及ぶ。著者は特捜部を手のつけられない「関東軍」と呼ばわり、その捜査手法の荒さを容赦なく指摘する。確かに東京地検特捜部の捜査手法には問題は多いだろう。しかし、私には、大鹿靖明氏が指摘する東京地検特捜部の欠点は大鹿氏自身を含む日本マスコミ全般、なかでも「ジャーナリスト宣言」などとエラソーにしている朝日新聞にそっくり当てはまるではないかと思えて仕方なかった。著者は東京地検特捜部の捜査手法「スジ読み」を「あらかじめ内偵した段階で事件のスジをつくり、強制捜査突入後は、そのスジに合致した証拠と供述で無理やりこじつける」ものだと糾弾する。しかし、これは朝日の報道姿勢そのものではないか。「アメリカ=悪」「中国の反日姿勢は理解」「中国韓国の反日行動に日本人が反発することはナショナリズムの乱用にあたり危険」「憲法9条改正=悪」...朝日新聞が垂れ流す予断と偏見は枚挙に暇がない。笑わざるを得ないのは、著者が本書の締めくくりで日本の最大の対立軸のひとつが「世代間闘争」でありライブドア事件は、この「ジジイと若者の戦い」の象徴だったという、かなり荒っぽい「スジ読み」を展開していることだ。ライブドア事件は単なる粉飾決算事件であると私には思えるのだが(本業は赤字であるにもかかわらず、それを香港に設立した投資事業組合を利用した「自社株食い」で、さも黒字であるかのように見せかけ、その偽りの決算をベースに多額の資金を調達して株価が低迷している他企業に買収攻勢をかけたというのが事件の本質)。それに、日本が「欧州や米国のように資源と富の蓄積のない」貧乏国家であるかのような噴飯ものの「スジ読み」をしていることも笑わせる。日本やいまや1500兆円を越す個人金融資産を保有する大金持ちの国である。世界の貯蓄の過半を日本が保有しているのである。その日本がどうして貧乏国家なのであろう。「弱者の味方」を気取りたい朝日としては日本人は何時までも「いたいけな弱者」でなくてはならないのだろうが、残念ながら日本はいまや非常に豊かな世界の強者なのである。