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漆黒の騎士を従えて (プリズム文庫)
グラディエスタ王国の第二王子・カオルは、国の命運にかかわる使命を帯びて旅に出た。お供は世間知らずの貴族の子息だけで、すぐに村で面倒を起こしてしまう。助けてくれたのは、強烈...
漆黒の騎士を従えて (プリズム文庫)
漆黒の騎士を従えて
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商品説明
グラディエスタ王国の第二王子・カオルは、国の命運にかかわる使命を帯びて旅に出た。お供は世間知らずの貴族の子息だけで、すぐに村で面倒を起こしてしまう。助けてくれたのは、強烈な存在感を放つ漆黒の髪の旅人・シンだった。その夜、カオルは宿で賊に襲われるが、またしてもシンに助けられる。危険すぎる旅の護衛としてシンを雇いたいカオル。けれど、報酬としてシンから要求されたのは、男同士の『やらしいこと』で…。【「BOOK」データベースの商品解説】
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王国の未来がちょっと心配…
2007/11/12 18:54
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hamushi - この投稿者のレビュー一覧を見る
けなげで美しい、でもいささか世間知らずな王子様と、ワイルドで甲斐性のある用心棒のお話です。
もうその設定だけで、めくるめく「お約束」の世界が展開することが確約されたも同然ですが、「お約束」がしっかりと果たされるのは実はとても気持ちのよいことであり、その中身の充実度が一定以上であれば、それを期待して読んだものとしては文句の出ようがありません。何世紀にもわたって「忠臣蔵」が手を替え品を替え上演・上映・放映されるのも、視聴者側の似たような期待感からではないかと想像します。逆に言うなら、皆に愛されるツボであるからこそ、「お約束」は「お約束」として成立するのだとも言えるでしょう。
王位の第二継承者である王子カオルは、悪徳宰相による圧政と陰謀から祖国を救うべく、兄である皇太子の戴冠式に必要な法典を入手するために、密かに王都を旅立つのですが、世間知らずで腕のたたないお供の貴族たちの不始末のおかげで、のっけから賊に襲われ、窮地に立たされてしまいます。が、あたかも台本に書かれているかのようにタイミングよく登場した見知らぬ旅人によって、王子は危ないところを救われます。シンという名の旅人は、いささか胡乱な男ではありますが、お供の青年貴族を百人以上たばにしたよりも、よほど頼りになりそうなので、王子は彼を用心棒に雇うことに決め、ふっかけられるのを覚悟しつつ報酬の交渉に入るのですが、旅人が要求したのは、美しい雇い主との、いわば逆援助交際関係だったのでした……。
報酬としての「逆援」のはずが、いつのまにか本気の恋愛にすり替わってしまうのは、いかにもこのジャンルらしい「お約束」であり、およそ現実味はないのですが、ファンタジーだからよいのだろうと思います。もっとも現実味はないとはいえ、お話のなかでは、報酬という形式を借りてはいても、実は最初から「心」が付帯した関係であるということが、しっかり描かれていくため、それなりの納得感が生じており、そこもまた「お約束」の一部であるとも言えます。
さらには、ゆきずりの男と思っていた、いささか好色要素過多の用心棒が、実は王子様をよく知る男で、幼少のみぎりから熱い思いを秘めて見守っていた人物だったとか、兄である皇太子の、弟王子に対する微妙に常識逸脱気味の愛情表現とか、まさに痒いところにきっちり手が届いたというようなお話の成り行きに浸ることで、脳を砂糖漬けにして憂いを忘れるひとときを堪能することができました。
完全に蛇足ですが、ここの王国、王が病に倒れただけで悪徳宰相があっというまに国を傾けるというあたりに、深刻な人材不足を感じさせます。実際、カオル王子の護衛についてきた貴族たちも、恐ろしく使えないバカばっかりでした。王家の人たちは恋愛にうつつを抜かしているヒマに、しっかり政治を立て直して体制を整え、人材育成すべきであろうと思われます。でないとそのうち革命が起きそうです。