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相剋の渦 文庫書下ろし/長編時代小説 (光文社文庫 勘定吟味役異聞)
著者 上田 秀人 (著)
徳川宗家を相続した家継の傅育係・間部越前守が襲撃された。賊は次期将軍の座を狙う手の者か?勘定吟味役・水城聡四郎は、新井白石に忌避されている身でなすすべがない。そんな時、尾...
相剋の渦 文庫書下ろし/長編時代小説 (光文社文庫 勘定吟味役異聞)
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商品説明
徳川宗家を相続した家継の傅育係・間部越前守が襲撃された。賊は次期将軍の座を狙う手の者か?勘定吟味役・水城聡四郎は、新井白石に忌避されている身でなすすべがない。そんな時、尾張藩を放逐されたお旗持ち衆の画策や、長崎奉行減員の噂を知った。そこに、敵対していた豪商・紀伊国屋文左衛門が、聡四郎に手を組まぬかと再三にわたって言い寄って来るが…。【「BOOK」データベースの商品解説】
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紙の本
勘定吟味役、剣劇など旺盛なサービス精神
2010/07/18 21:37
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
上田秀人の描く江戸幕府勘定吟味役である水城聡四郎の痛快な物語のシリーズ第四作である。
時代は徳川将軍第六代である徳川家宣で薨去し、後継にまだ五歳の幼児である家継が決まった頃である。もちろん、政ができるわけもないので、教育係りであった間部詮房が側用人としてこれから実権を握ろうとしていた時代でもある。
同時に主人公の水城聡四郎のボスで、庇護者でもあった新井白石の立場も微妙なものとなる。将軍が交代となると、その側近も入れ替わる。その前に新井白石の命に背いた聡四郎は、白石の怒りに触れていた。つまり、両者の関係はそれほど良好とは言えなかった。
将軍が幼少ということは、将軍としては相応しくない。そうなると早くも次の将軍の座を争う動きが始まるわけである。家宣の血筋が幼少ならば、それ以外ということになるが、そこで御三家の登場である。
水戸家は適齢ではないので、尾張家か紀州家が有力候補である。これらの動きに加えて、側用人であったが隠居の身となっていた柳沢吉保、聡四郎との戦いに敗れた紀伊国屋文左衛門など、歴史上に名を残す有名人が登場し、ストーリーを華やかにする。
さすがに上田秀人である。読者の興味を惹くような舞台装置と将軍家の後継をめぐる暗闘を実に面白く描いている。今回はとくに長崎奉行に関するエピソードが挿入されている。長崎奉行は様々な役得が莫大なものになるので、なり手が多いし、次の地位への足掛かりともなっている。これらの事情が詳細に描かれており、幕府の官僚組織の腐敗ぶりの一端を見る思いがする。
勘定方や勘定吟味役の説明が繰り返し出てくるのが余計であるが、主人公の官僚としての活躍と剣士としての剣劇のシーンが実に細部にわたって描かれている。おまけに商人の娘のが婚約者に擬せられて登場する点もサービス精神が旺盛で、随分欲張りなエンターテイメント作品である。