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商品説明
結婚八年目の記念にバリ島を訪れた中志郎と真智子。二人にとって、意味のない発言のやりとりにこそ意味のあった時代は、はるか昔に過ぎ去っていた。そんな倦怠期を迎えた二人だったが、旅行中に起こったある出来事をきっかけに、志郎の中で埋もれていたかつての愛の記憶が甦る。本当の愛を探し求める孤独な魂たちへ。新感覚の大人の恋愛小説。【「BOOK」データベースの商品解説】
結婚8年目の記念にバリ島を訪れた中史郎と真智子。倦怠期を迎えたふたりだったが、旅先で起きたある出来事をきっかけに、かつての愛の記憶が甦る−。本当の愛を探し求める孤独な魂たちへ。新感覚の大人の恋愛小説。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
佐藤 正午
- 略歴
- 〈佐藤正午〉1955年長崎県生まれ。北海道大学文学部中退。「永遠の1/2」ですばる文学賞を受賞。ほかの著書に「ありのすさび」「ジャンプ」など。
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紙の本
でたらめな物語と思わせながら、実はどんな恋愛小説よりも現実的な結末に言葉を失った
2007/03/12 22:41
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
中志郎と真智子は倦怠期の夫婦。バリ島旅行に出かけた先で、常夏の国でも手袋をしている不思議な女・石橋と出会う。その石橋が手袋を脱いで、中志郎と手を合わせたところ、石橋から志郎へとあるものが移動していくのがわかった…。
あのベストセラー「ジャンプ」から7年。待ちに待った佐藤正午の新作がようやく登場しました。この7年間、含蓄がありながらどこか人を食った趣のある「ありのすさび」「像を洗う」「豚を盗む」といったエッセイ集に親しみ、先だっては新書「小説の読み書き」と短編集「花のような人」といった軽めの著作に遊んだものですが、やはり佐藤正午の長編小説に今一度じっくり・どっぷりつかってみたいと飢餓感を募らせていた私にとって、本書は読書の愉悦に浸ることの出来た一冊となりました。
そもそもこれはジャンル分けを拒む小説です。出版元は恋愛小説として売るつもりなのかもしれませんが、そうであるともいえるし、そうではないともいえます。石橋という不思議な能力を持った女と志郎との物語かと思わせて、にわかに津田伸一という物書きの一見軽佻浮薄でスキャンダラスな恋愛物語へと乗り換わっていくところなど、読者を見事に欺いてくれるコンゲームのような様相も呈しています。ミステリアスで、幻想的で、荒唐無稽で、とにもかくにもつかみどころのない、一体どこへ読者を連れて行くつもりなのかといぶかしい思いを募らせながら頁を繰ること数時間。
浮世離れした物語にしかみえなかったこの小説は最後の段落(505頁)で突如として、痛ましくも苦い愛の現実を突きつけてくるのです。世に溢れる“恋愛小説”の大半こそが実はどうしようもなく現実離れしたお話に思えてきて仕方ないほど、この物語の最後は、うつし身のやるせなさを、輪郭線も鮮やかに浮かび上がらせてくるのです。私はこの最終段落で、この物語の謎めいた展開が一気に氷解したように思え、そしてまたその「答え」を前にしばし呆然と言葉を失ったほどです。
これほど面白い小説を読み終えた今、早くも私は佐藤正午の次なる長編小説に対して飢餓感を募らせ始めています。次回もまた7年待たされるのでしょうか。