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テレビは日本人を「バカ」にしたか? 大宅壮一と「一億総白痴化」の時代 (平凡社新書)
著者 北村 充史 (著)
戦後マスコミのご意見番・大宅壮一希代の名言「一億総白痴化」。それが映し出した時代の姿とは? 創生期テレビ界の活気と混乱を生き生きと伝える、昭和史ノンフィクション。【「TR...
テレビは日本人を「バカ」にしたか? 大宅壮一と「一億総白痴化」の時代 (平凡社新書)
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商品説明
戦後マスコミのご意見番・大宅壮一希代の名言「一億総白痴化」。それが映し出した時代の姿とは? 創生期テレビ界の活気と混乱を生き生きと伝える、昭和史ノンフィクション。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
北村 充史
- 略歴
- 〈北村充史〉1939年奈良市生まれ。京都大学法学部卒業。著述家。NHKドラマ部ディレクター、チーフプロデューサー、総合企画室主幹等を歴任。ドラマ「風と雲と虹と」「思い出トランプ」などを制作。
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興味深い話をたくさん読めて面白かったが,このタイトルはネラい過ぎなんぢゃないの?
2008/07/07 15:49
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SnakeHole - この投稿者のレビュー一覧を見る
1956年というから,オレはおろかアトムも生まれる前のこと(アトムは2003年だろって,まぁそうですが),11月3日の神宮球場は東京六大学野球の王座をかけた早慶戦で満員の盛況であった。……いや前日からの徹夜組が約1,000人,外野が当時芝生席だったこともあっておよそ 65,000人を収容し,なお入れずに球場周囲で騒いでいるやつが2,000人ほどいたってんだから,現代で言えば松井と井川とハンカチ王子がヤクルトに入り,イチローと城島と松阪が入ったソフトバンクと神宮で日本シリーズ……やってもそんなには集まらんだろうなぁ。
とにかく,その試合のプレイボール前後,一塁側早稲田の応援席最前列で若い男が立ち上がり,慶応の三色旗を振りながら「フレー,フレー慶応!」と三度連呼して逃げたんだそうな。居並ぶ早大応援団は怒るというより呆気にとられたらしく,さしたるもめ事もなく男は消え,それだけなら「慶応ファンには変わったヤツがいる」で済んだかも知れない。が,その晩7時半から日本テレビの番組「何でもやりまショー」で,件の慶応応援男が「番組が出題した無理難題を無事クリアした」として賞金を受け取ったことから話が大きくなった。早大関係者の抗議を容れた六大学野球連盟が日本テレビに対し,翌日の早慶戦の中継拒否を申し入れたのである。
そしてこの事件こそ,あまりにも有名な大宅壮一のTV評「一億総白痴化」という言葉が生まれた契機であった……と,まぁこんなつかみで半世紀におよぶテレビとそれに絡む文化論の類いを総覧する,という本なんだけど,読了した印象ではタイトルの正副が逆である。どっちかというと内容は「大宅壮一と『一億総白痴化』の時代 テレビは日本人を『バカ』にしたか?」という……テレビが日本人を『バカ』にしたかどうかの検証よりは大宅壮一のテレビ評がいかにして「一億総白痴化」という耳に馴染んだフレーズに収斂していったか,を追った文献学みたいである。興味深い話をたくさん読めて面白かったが,このタイトルはネラい過ぎなんぢゃないの?
え,ほんではお前は「テレビが日本人を『バカ』にした」と思うのかって? もしそうだとすると,生まれた時に既にテレビがあったオレはつまり生まれた時から「『バカ』にされ続けてきた」人間であるわけで,そんな難しいことはわからない(笑)。ただ,本書に引用してあったオーソン・ウェルズの「私はテレビが嫌いだ。そしてピーナッツも,同じくらい嫌いなんだ。しかしピーナッツを食べだすと,やめられない」という言葉と,冒頭の慶応応援男が実は一般の挑戦者なんかではなく,日テレがしこんだ俳優だったという事実はきっと忘れないだろうと思う。