紙の本
岡崎乾二郎の道具箱
2007/05/14 19:22
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Q2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ノーテーション(楽譜やメモを指すらしい)」を巡って、
作品の閃きから組み立て手順まで明晰に解き明かす本。
とにかく、そのスケールの大きさがすごい。
建築、音楽、ダンス、美術のジャンルをまたいで、制作技術の歴史と未来をフォーマルに分析する——
こんなこと、この著者以外のだれが考えつくだろう?!
ここまで手のうちを見せていいのかというくらい、
岡崎乾二郎の知識とアイデアがつまっています。
とても刺激的な一冊です。
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卒論の為にとりあえず読む。
が、間違いなく名著だと思う。
特に秀逸に感じたのはやはり現代芸術に関して編された部分ですかね。
村上隆が作品を美術史上に明確に位置づけをして作品を制作することを声高に宣言して久しいが、そのような考え方をノーテーションのといった概念を用いて再度考察していくような感じに近いと思う。
自分の作品をつくるにあたって意味の核を見いだせない人や、そもそも作品に核自体がない人なんかは絶対これを読んだほうがいいなと思います(自分はそんなパターンだったので)。
岡崎乾二郎(wiki抜粋)
略歴
東京都出身。父親は建築家、母親は発明家。四人兄弟。多摩美術大学彫刻科中退。Bゼミスクール修了。
作品は絵画を中心に、彫刻、立体作品制作や建築設計、さらには自然環境や地域社会の基盤を結びつける社会文化活動(灰塚アースワーク)も行っている。その一連の活動のなかから、2007年には、広島県庄原市総領町に広大ななかつくに公園、おととい橋(羽地大橋)などが完成している。多くの個展を開き、様々な美術館のグループ展にも招待されているほか、美術、建築から文化全般に至る評論、著作も多い。
[編集]主な活動
8ミリ映画「回想のヴィトゲンシュタイン」
美術雑誌「FRAME」(第1-3号)編集執筆
コンピュータ・アート・ワーク「Random Accidental Memory」
「灰塚アースワーク・プロジェクト」企画制作
「ヴェネチア・ビエンナーレ第8回建築展」日本館ディレクター(コミッショナー:磯崎新、テーマ:「漢字文化圏における建築言語の生成」)
近自然公園「日回り舞台」
ART TODAY 2002 岡崎乾二郎(セゾン現代美術館)
おととい橋(羽地大橋)
なかつくに公園
[編集]主な著書
『和英対峙 現代美術演習』共著, 1989, 現代企画室
『「批評空間」増刊号 モダニズムのハードコア:現代美術批評の地平』共同編著, 1995, 太田出版
『現代日本文化論11 芸術と創造』共著, 1997, 岩波書店
『20-21世紀 DESIGN INDEX』共著, 2000,INAX出版
『ルネサンス 経験の条件』2001, 筑摩書房
『必読書150 』共著,2002, 太田出版
『漢字と建築』共同編著, 2003, INAX出版
『れろれろくん』ぱくきょんみとの共著, 2004, 小学館
『ぽぱーぺ ぽぴぱっぷ』谷川俊太郎との共著, 2004, クレヨンハウス
『絵画の準備を!』松浦寿夫との対談, 2005, 朝日出版社
『トリシャ・ブラウン―思考というモーション』共同編著, 2006, ときの忘れもの
『芸術の設計―見る/作ることのアプリケーション』著・監修, 2007, フィルムアート社
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芸術としての建築。設計として他分野の芸術も捉えているので、参考程度に流し読みすればいいでしょう。方法論としては、巻末のソフトウェアを如何に使いこなすかといったところか。いずれにしても、興味深く読ませてもらった。
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「芸術諸ジャンルの表現形式をそれぞれの技術的特性から理解したい」あとがきより。
「作る現場」の教科書。
使えるアプリケーション/アーカイブガイド付き
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著者が執筆した部分と、プロジェクトにより書き起こされた部分とにわかれており、両者で言葉の圧縮率が大きく異なるため、本全体に配される情報のバランスがあまり良くないと感じた。
しかしながら、優れて正確に、設計-デザインを捉えているので、その領域に深く関心がある方には読んでもらいたい。
思考することと、それを表現として形に起こすこと。この当たり前であり途方もない距離を、より良く認識してうまく進むための指針をイメージすることができた。
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この本を買いに新宿サザンテラスの紀伊國屋に行ったら十数冊平積みされていたのにまず驚いた。美大や専門学校の教科書にでもなっているのだろうか。2600円だから学術書としてみれば安い部類になるのかもしれないが。
タイトルからではちょっと内容を把握しづらいし、じっさいこういう原論的な話は案の定むずかしい。いわゆる芸術と呼ばれるものの主要分野である、美術・音楽・建築・ダンスの4つを技術論として読み解くというもので、「芸術は何によって構成されるのか」を問うていて、「芸術とは何か」を問うているわけではない。本書においては形式が内容に先行している。
自分なりにこの本の内容をひと言でまとめるとすると、「芸術とは本来、作者のインスピレーションによる極めて一回性的(つまり反復できない)なものだったが、それを反復・再現可能にしてきたプログラムは、どのように構成されるのか?、そしてそのアプリケーションの構成要素についての解説書」ということになるだろうか。
建築から音楽、美術、ダンスにいたるまで、それらを「可視化する」ための技術について説明されている。たとえば、音楽で言えば、コード表や楽譜、ムーグの周波数チャート、鍵盤楽器や弦楽器の配列、さらにはDTMソフトウェアのシーケンスがいかにしてルール付けされてきたかを執拗なほどに詳しく見ている。
芸術という、とても即興的で一回性の強い行為を、いかにルール付けしてアプリケーションとして成立させて反復可能なものとするか。芸術に直接携わることのない自分ではあるけれど、どれだけ多くの人々に感動や共鳴をもたらして気持ちの良いユーザー体験を実現するかという、メディア運営にもいくぶんか似た要素があることも確か。それにしても、ここまで綿密に史料を引っ張り出す筆者の熱心さに頭が下がるばかり。
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建築家がおすすめの本、ということで手に取りました。
建築、音楽、ダンス、美術の4つの分野を「設計」という観点から読み解いています。
特にそれぞれの分野でのコンピュータの役割に焦点が当てられているのですが、俗に言う「IT万歳!」の風潮とは一線を引いています。
コンピューターの発展がいかに反面教師的にその分野の発展に貢献しているのか?が読んでいて興味がわきました。
内容も学術的な面もありつつ、著者の主張がはっきり分かる内容で、読んでいて気持ちがいい本ですね。
これから社会に出て行く美術系の学生さんに読んでもらいたい一冊です。
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コンピューターやソフトウェアの登場によって、多くの人が、同一のインターフェイスを用いながらも、多種多様なジャンルの作品を生みだすようになりました。本書では音楽、建築、ダンス、美術の4つのジャンルについてそれぞれ「技術から表現形式を読み取る」ことを目的として論が展開されていきます。
私たちは普段芸術作品を鑑賞するときには、「こんな材料で作られている」「こういうモチーフが使われている」という具合に目に見える「表現」に目が行きがちです。しかし本書ではそれが生み出されるもととなる「技術」に着目することで、多様なジャンルが存在する芸術において共通する、普遍的な要素を見つけ出そうとしています。また、巻末には初心者でも技術を学べるように、おすすめの書籍やソフトウェアの説明があり、まさにジャンルを超えて、技術を理解し、使いこなすための教科書になっています。
(ラーニング・アドバイザー/芸術 AKAGI)
▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
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