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商品説明
「俺」は見た! 聴いた! 「荒ぶるもの」の素顔。イラク戦争開戦から4年。クラシック音楽家が「耳を澄ませる」という観点から、米陸軍最大規模の基地の街フォートブラッグを取材した奔放なルポルタージュ。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
伊東 乾
- 略歴
- 〈伊東乾〉1965年東京生まれ。東京大学大学院情報学環准教授。作曲家・指揮者、作家。90年出光音楽賞受賞。「さよなら、サイレント・ネイビー」で開高健ノンフィクション賞受賞。
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紙の本
醜悪な生物のつくられ方
2007/11/30 05:33
6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
米国の軍隊がいまイラクで行っている行為、それはかつて同軍がベトナムで行っていた行為の繰り返しなのであるが、それを「ケダモノ」に例えるのは、“本物の獣”に対して、大変失礼なことである。
本物の獣は、人間の軍隊のようにむやみやたらに、無意味・無節操に、他の生き物を殺すことは決してしない。
米国軍だけではない。かつて日本の軍隊が中国やアジアの各地で行った蛮行もまったく同様である。
どうも人間は、いざ戦争となると、ケダモノ以下、地球上に生きる生き物として最も下劣な生物に変身するらしい。
それでは、その醜悪な生物に変身してしまう人間の性質というのは、人間が生まれながらにして持つ、いかんともしがたい本性・本能なのであろうか。
そうでもないらしい。本書が教えてくれる。
それまでは、人に対して手を挙げることさえできなかった者が、戦場に出たとたん一般の人々に対し平気で銃を向ける。その「醜悪な生物のつくられ方」を本書は教えてくれる。
兵士達が常日頃から、いかに人間性を捨て去るように訓練され続けているか。サブリミナルな領域で兵士達に埋め込まれ続ける戦争の一パーツとしての精神。
その最も完成された形態としての米軍組織を、本書は見せてくれる。しかし、これは大なり小なりどこの軍隊も一緒なのであろう。
過去のあいつぐ戦争で、人間はここまで残虐な組織を確立させてしまった。
そして、本書にさらに付け加えることが可能であるなら、もう一つ重要な要素として、他民族・他国民に対する差別意識の潜在化をあげたい。他民族に対する差別意識を植え付けられた兵士は、戦場でなお一層、残虐となりうる。これは、過去の日本軍の残虐性に典型的に現れている。
アメリカでは、ベトナム戦争、イラク戦争を経験した兵士たちの中に精神を病む者が多く出ている。日本でも先ごろ、イラク戦争を経験した自衛隊員に多くの自殺者が出ていることが報道された。
人間だって、もともと地球上の一生物として、他者と共存・共生して生きていくようにつくられているのだ。その人間の本性を「戦争向きに」無理やり作り変えようとしてきたことが、この人間の精神の破壊に結びついているのだと信じたい。
今のやり方は、やはり間違っている。人間の本性がそれを教えてくれている。