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商品説明
【地方出版文化功労賞・特別賞(第22回)】百の診療所より一本の用水路を! パキスタン・アフガニスタンで1984年から診療を続ける医者が、戦乱と大旱魃の中、1500本の井戸を掘り、13キロの用水路を拓く。真に世界の実相を読み解くために記された渾身の報告。【「TRC MARC」の商品解説】
白衣を脱ぎメスを重機のレバーに代え大地の医者となる。「百の診療所より一本の用水路を!」パキスタン・アフガニスタンで一九八四年から診療を続ける医者が、戦乱と大旱魃の中、一五〇〇本の井戸を掘り、一三キロの用水路を拓く。「国際社会」という虚構に惑わされず、真に世界の実相を読み解くために記された渾身の報告。【商品解説】
目次
- 序章 九・一一事件とアフガン空爆
- 第1章 爆弾よりパンを
- 第2章 復興支援ブームの中で-医療活動の後退
- 第3章 沙漠を緑に-緑の大地計画と用水路建設の開始
- 第4章 取水口と沈砂池の完成-〇四年三月から〇五年四月
- 第5章 第一次潅漑の実現へ
- 第6章 沙漠が緑野に
- 第7章 人災と天災
- 第8章 第一期工事十三キロの完成
著者紹介
中村 哲
- 略歴
- 〈中村哲〉1946年福岡市生まれ。九州大学医学部卒業。ペシャワール会現地代表、PMS(ペシャワール会医療サービス)総院長。著書に「アフガニスタンの診療所から」など。
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紙の本
まっとうに生きる
2008/06/13 14:03
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:りっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は、ペシャワール会の過去6年間の活動報告である。ほとんどは用水路建設について、技術的なこと、苦労・工夫・解決などに費やされている。中村さんは講演会でお見かけした時よりも、現地での写真の方が存在感がある。治水は大事業。完成させるとは、すごい人だ。人を生かす、活かすことも実行されている。謙虚で純で、真面目で科学的。自分の意志を貫き通す姿に敬服。
アフガンでのペシャワール会の活動は、まずはハンセン病患者の診療から始まり、水があればすぐに治るものが、干ばつで水がないために悪化してしまう。食糧が足りなければ栄養失調状態で、治るものも治らない。命を守るために、井戸を掘り、灌漑工事をすることになる。厳しい自然との闘い、人災にも用水路の完成のため対応。そして「平和とは決して人間同士だけの問題ではなく、自然との関わり方に深く依拠している」と気づくのだった。
アフガンの地理的特徴は、ヒマラヤに続く山岳地帯で、谷が深く、そこに各部族が住んでおり、地域ごとの自治が営まれている。高い山の万年雪が水源となるのだが、それが年々少なくなってきている。急に溶けて激流となり、土石流となって押しよせ、また毎年、最大の大干ばつとなる。村があったところが数ヵ月後には、何もない砂漠と化してしまう。
中村医師は水路工事のために聴診器ではなく、重機の操縦桿を手に。蛇籠工法という、日本の伝統工法が主力。金網の中に石を入れて、それをつなげ、その上に柳を植え、金網がさびた頃には、柳の根がしっかりと石の間に張って守る。コンクリートでは、氾濫が起き易い。しかも、蛇籠なら、現地の人が必要な時にはいつでも修理できる。工事を始めるといううわさを聞きつけ、たくさんの人が集まってきた。日当で、なんとか食いつなぎ、そして水が通れば、農業ができる。食べていける。生きていける。
2007年に第一期工事を完了。その間、危険だったのは米兵による機銃掃射。
「テロ特措法」成立時に国会の参考人として発言している。「信じがたい狂気の支配する時であればこそ、正気を対置して事実を伝えるべきである」との思いから、「アフガンの現状、特に大干ばつによる人々の惨状とアフガン難民の実態を述べ、自衛隊派遣よりも飢餓救援を訴えた」けれど「自衛隊派遣は有害無益」に野次と怒号が。現地を知らない者が、知っている人の言に耳を傾けないとは・・・
“無益”なのは、イラクの自衛隊の飲料水で立証済み。日本政府の言う“国際貢献”とは、“ブッシュ政権への貢献”でしかない。自分たちが使ったのとほぼ同量を浄水するのに374億円の税金が使われた。用水路第一期工事の費用は、9億円。本気で“国際貢献”をする気があったら、中村さんに学べ!!
かつて「日本人」は好意的に受け止められていた。「日露戦争」――西欧列強の国に対し、不撓不屈の精神で戦い、退けたこと。「ヒロシマ・ナガサキ」に原爆を落とされた国でありながら、経済復興を果たし、そんな経済力を持つ国でありながら、他国に対し派兵をしてこなかったこと。これを中村医師は「美しい誤解」と講演会で表現され、近年、真実が暴露されつつあると。強大な国にはへいこらして、弱い国には尊大な態度をとる国だと。せっかく築き上げたペシャワール会と現地の人々との信頼関係が損なわれ、現地での活動がやりづらくなる、これが“有害”なのですよ。まっとうな“国際貢献”の足を引っ張るなって。
タリバーンとはもともと神学生という意味。アフガンの農民たちは、多かれ少なかれタリバーン的な要素を持っている。機銃掃射事件の米軍の謝罪に「警戒して射撃」、「友人を失っているため非常に敏感になっている」とあったのに対し、中村医師は外務省宛にこう返答している。「確認して攻撃するのが常道」、「当方にも空爆や誤爆で親族を失った作業員・地域住民が少なからずいて敏感になっている」と。
空爆や誤爆の連続では、アフガン農民すべてを敵に廻してしまう。「2007年6月現在、アフガニスタン復興は未だ途上であり、戦火は泥沼の様相を呈している。米国と同盟軍の兵力は4万人を超え、初期の3倍以上に膨れ上がっている」。いくらISAFを増強しても、平和をつくるということに、武力は無力です。
アフガンにアメリカが侵攻した時には、食糧を首都カブールまで、アフガン人のスタッフが命がけでトラック輸送をしました。その食糧配布は、タリバーン兵士の協力で整然と行われたそうです。激しい空襲下でも治安が保たれて略奪などもなく、陥落時には事前に退去の勧告があり、計画的に撤去、人質の解放。うーん、タリバーン政権もなかなかやるわねぇ、という印象。「カルザイ政権が発足し、自由になったとの報道が日本でもされたようですが、その自由とは、阿片を栽培する自由、外国兵相手に売春をする自由、おべっかを使いぼろもうけをする自由などで、99.9%のアフガン人は、飢えに脅かされたまま」と、報道を鵜呑みにしてはいけませんねぇ。
大干ばつで400万人が飢餓線上(2000年5月・WHO)というときに、2001年の国連制裁。“国際支援”のNGOも撤退しました。復興ブームでまた登場。お金をばら撒き、物価を上げ、そして医師や技師も引き抜かれました。“国際”という名にウンザリ?
ジア医師の「男性虐待」説(冗談よもちろん)、ポンプ(国際団体が各村に一基を配ったが、石油代が高くて使えないor払える金持ちが水を売る)、人災(MADERAの堰)、土地収用問題、「アフガン人同士で争うな!!」と血を流しながら諌めたことなど、他にも紹介したいことはあるのですが、思わず涙してしまったこの文だけ載せて、あとは本を買って読んでください。
「上空を軍用機がけたたましく飛び交い、私たちは地上で汗を流す。彼らは殺すために飛び、人々は生きるために働く。彼らは脅え、人々は楽天的だ。彼らは大げさに武装し、人々は埃まみれのオンポロ姿だ。彼らは何かを守るが、人々には失うものがない。
「民主国家? テロ戦争? それがどうしたって言うんだい。外人とお偉方の言うことは、どうも解からねえ。俺たちは国際正義とやらにだまされ、殺されてきたのさ。ルース (ロシア=ソ連)もアングレーズ(英米人)も、まっぴらだ。世の中、とっくの昔に狂ってる。だから預言者も出てきたのさ。それでも、こうして生かせてもらってる。奴らのお陰じゃあない。神の御慈悲だよ。まっとうに生きてりゃ、怖いことがあるものか」
これが、人々と共有できる私の心情でもある。」
紙の本
アフガニスタンの現実
2009/07/22 14:06
5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しゅっしゅ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ペシャワール会の活動は、現地の人が望む支援を現地の人が建設、修理できる方法で行っている理想的な国際貢献だと思いました。
争いでいちばん苦しむのは子どもなど、弱い立場の人たちだという戦争の現実も見えてきます。
分厚い本ですが、はらはらどきどきし、あっという間に読んでしまいました。
世界中の人に読んでほしいです。
涙なしでは読めない、アフガニスタンの現実が見える一冊です。