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りっちゃんさんのレビュー一覧

投稿者:りっちゃん

135 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

政府の施策は税金の無駄遣い、もやいに学んで、有効な対策を!!

29人中、24人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 著者はもやいの湯浅さん。住所不定状態にある人たちがアパートを借りる際の連帯保証人になるという活動や相談活動などから見えてきた日本の社会の危うさ。「自己責任論」のまやかし。貧困とは何か。その貧困への対策とは?わかりやすく説得力のある言葉で書かれている。
 2007年の東京新聞生活図鑑に描かれた、三層のセイフティネット。雇用、社会保険、公的扶助。
「未だかつて正規雇用を募集しても人が集まらず、非正規雇用を自ら望む人たちが多数を占めたという時期はない」「自由で多様な働き方」を求めて、人々が非正規労働に流れていったとする考え方は後付けであり、実際のプロセスを歪曲している」よねぇ。
「非正規で働けば、より高い失業リスクにさらされる。派遣労働の合間、または企業業績のわずかな変化の影響で、失業の憂き目に遭うことがある。しかし彼/彼女らの多くは、非正規であるがゆえに雇用保険に加入しておらず、失業しても失業給付を受けることができない。失業しやすく雇用のネットからこぼれ落ちやすい非正規労働者ほど、実は社会保険のネットにも引っかかりにくい。」「さらに、この人たちは、たとえ生活困窮に立ち至ったとしても、事実上生活保護を受けることができない。そもそも生活保護という制度自体を知らない人がいる。制度の存在を知っていても、自分が受けられるとも、また受けたいとも思わない。さらには本当に生活に窮して自治体窓口を訪れたところで、「まだ若いんだから働けるはずだ」という「水際作戦」が待ち構えている。」「つまり、三層であるべきセーフティネットが三段構えになっていない。」
私の場合も、失業保険・社会保険完備の所なんて、はなからないのだ。実感だなぁ。うーん、“すべり台”というより“穴ぼこ”に近い。
怒りの矛先がまちがっているとは思うものの、アキバ殺人事件が起きるのは当然とも言える。
 五重の排除とは、教育課程、企業福祉、家族福祉、公的福祉からの排除。「若い人たちには「まだ働ける」「親に養ってもらえ」、年老いた人たちには「子どもに養ってもらえ」、母子家庭には「別れた夫から養育費をもらえ」「子どもを施設に預けて働け」、ホームレスには「住所がないと保護できない」――その人が本当に生きていけるかどうかに関係なく、追い返す技法ばかりが洗練されてしまっている生活保護行政の現状がある。」、最後のセイフティネットがこうでは・・・やりきれないです。
五番目は、自分自身からの排除。「第一から第四の排除を受け、しかもそれが自己責任論によって「あなたのせい」と片づけられ、さらには本人自身がそれを内面化して「自分のせい」と捉えてしまう場合、人は自分の尊厳を守れずに、自分を大切に思えない状態にまで追い込まれる。ある相談者が言っていた。「死ねないから生きているにすぎない」と。これも実感だなぁ。
 「“溜め”とは、溜池の「溜め」である。大きな溜池を持っている地域は、多少雨が少なくても慌てることない。その水は田畑を潤し、作物を育てることができる。逆に溜池が小さければ、少々日照りが続くだけで田畑が干上がり、深刻なダメージを受ける。」
例えば、親が大学まで出してくれた。親と同居で食うには困らない。貯金があれば失業中も暮らしてはいける。相談できる友人がいる。アパートを借りる際の保証人になってくれる人がいる。人生経験とか自信とかもあるかな。“溜め”がない人もいるんだということが、なかなか理解できないかもしれない。貧困への「自己責任論」の濫用を防ぐためには、「貧困の背景・実態を多くの人たちに知らせる必要がある。公的セーフティネットの機能不全ぶり、五重の排除という背景、“溜め”がないという状態、それらが広く伝わって初めて、貧困には自己責任だけでは片づけられない多様な要因のあることが社会的に共有される」。だから、この本も書いたということだ。
 で、政府の対策というと、天下り先が増え、一部の企業が儲かり、利用者がほとんどいないという代物。東京都の「あんしん入居制度」にしても、「二〇〇六年度の累積利用件数が、東京都と二三区すべての入居支援制度の利用者を合わせても、大半がボランティアで運営されている一民間団体である〈もやい)の実績に及ばない、という冗談のような事態が続いている。」
「貧困指標(貧困ライン)が存在しない」ので、生活保護基準が「国全体の最低生活費でもある」。「二〇〇七年一〇月一九日、厚生労働省はついに一般世帯の消費実態(生活扶助支出相当額)と生活保護世帯の生活保護基準を比較する詳細な分析を公表した(「生活扶助基準に関する検討会」第一回資料)。それによれば、所得の低い六~八%の人たちは、生活保護世帯よりも貧しい暮らしをしていた」。「しかしながら、その分析結果は、貧困層の概算や捕捉率の推計、低所得者対策の基礎情報など、貧困問題の解消に結びつく方向で活用されることはなく、「生活保護を受けていない貧乏な人たちがこれだけいるのだから」と、生活保護基準(最低生活費)切下げに向けた材料として「活用」された。」
 基準が下げられたということは、今、豊かに生活している人も無関係ではない。いざという場合に、自分たちだって、その程度の保障しか受けられないということなのだ。
 「なぜ、日本政府は貧困問題に向き合おうとしないのか。日本社会における貧困の広がりを認めなければ、貧困が生み出される社会構造はそのままに放置され、貧困はさらに拡大する。生活苦による犯罪、児童虐待を含む家庭内暴力、自殺が減ることはなく、社会の活力はますます失われ、少子高齢化にも拍車がかかっていくだろう。ただちに大規模な実態調査を行い、その結果を踏まえて対策を立てるべきである。
しかし、まさしくそれゆえに、政府は貧困と向き合いたがらない。」「政府の「小さな政府」路線に根本的な修正を迫らずにおかない。」からなのよね。「 自己責任論は、政府に向かっていうべきことなんだよね。
 湯浅さんが関わっている「反貧困」活動は、個々の問題への解決を計ると同時に、セイフティーネットの綻びの補修を計り、日本社会へ問題提議をし、社会を動かすことにつなげてもいる。すばらしい。

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紙の本

「特上の国」大賛成!!

17人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「活憲」「特上の国」。いいなぁ、いいなぁ、こういう発想。日本を特上の国にするの、大賛成。サイトもたまに見てますけど、感覚、意見、ほとんど一緒。年齢が近いことが大きいのでしょうか。この本でも自衛隊を、災害救助隊や、地雷撤去など、今までの実績を生かして、世界にも活躍する非軍事組織への転換を提案されていますけど、私も、若い人たちにそう提案しているんだ。反応がないのが寂しいけれど・・・
 若い人たちが、北朝鮮や中国の脅威を感じているようだけど、私には、「んなことないでしょ!!」としか思えなかった。この本で、北朝鮮の軍事費が日米両国の軍事費の0.006%と知り、「ほれ見ろぉ」という気分です。中国はだいぶ増えてきていますが、それでも、今までの経済的な差は大きいよねぇ。
 理想をきちんと掲げ、その上で現実を客観的に見据え、そのギャップをどう埋めていくかの現実的な提案。著者の真面目さに好感を持ちます。
日本の現状分析も確かです。
 戦争をしないとならないアメリカという国。そのアメリカの「年次改革要望書」のままに動く日本政府。アメリカ国債をいっぱい持たされているのに、「ドルの切り下げ」をちらつかされ、「NO」をいえない関係者。イラクへの自衛隊派遣の不自然さ、靖国にこだわる小泉首相、日米同盟の強化、自民党憲法草案、どれを見ても、アメリカのために戦争する国にされてしまう危険性が私たちには見えているのに、「バカの壁」でしょうかねぇ。見ようとしない人がいっぱいいる。「偽書」を書いた人のように。私には、そのことが一番心配。いじめがはびこった教育の悪い影響かしら?
 軍備では、人は守れないのよ。ひとり一人が生き生き出来る暮らしを考えないとね。
 「戦争による荒廃から立ち直り、民生中心の平和経済の力によって世界第2位の経済力を実現しました。経済援助の実績もあります。アメリカと軍事同盟を結んでいるとはいえ、紛争当事国となることはなく、武器の輸出をせず、戦闘行為による戦死者も出していません。戦争を必要とせず、国際紛争を武力によって解決しないことを憲法で謳っています。つまり、「特上の国」となることは夢物語ではなく、それを現実に変えるための条件や政治的資源を、日本という国は持っているのです」そう、私たちの国は誇りの持ている国なのです。若い人たちも自信を持ってくれれば、きっと変わってくるんじゃないかな。
女性として、著者の発言ではないけれど、『女性が全員で強姦放棄宣言しても強姦はなくならない』に反発を感じます。何でこんなたとえなの?『男性が全員で強姦放棄宣言をすれば、ほぼ、強姦はなくなる』悪いのは強姦する側です。戦争を仕掛ける国です。善悪の違いがあいまいになっていることを非常に危惧します。
 それと、著者にもちょっと文句。みんなで一緒に踏み出せば、という提案。それぞれでいいんじゃないかな。それぞれの場で、自分の出来ることで、「特上の国づくり」はじめましょう。道はいっぱいあってもいいと思うよ。方向さえ確かなら。

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紙の本

「改革」の中味をみてよぅ。ひどいもんだよ。

15人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

どこをどういう風に騙されてしまったか。私たちの暮らしの安全が、どこまで脅かされてしまったか。これから、どこの「改革」を狙われているのか、その結果私たちがどうなるのか。とっても詳しく書いてある本です。著者は、「拒否できない日本」の関岡英之さんと、精神医学と教育に詳しい和田秀樹さんです。
特に医療問題は深刻です。もともと日本の医療保険制度はWHOの総合評価で第一位なんですって。「改革」なんてする必要なかったんじゃないかぁ?!
アメリカは総合評価で第15位、国民一人当たりの医療費はダントツの世界第一位。国民皆保険なんかない。医療費がすごく高くて長期入院ができなくてホテルから通う位なんだって。病気して破産する人もいるって。薬価も高いし、薬そのものも、まず、カブセルが信用できないって。薬の認可も効率よく、手早くだから、死亡事故や薬害も多いんだって。そんなアメリカ並になったら、安全も安心も得られっこない。すごく怖いよう。
すでに、高齢者の自己負担が増えている。サラリーマンも3割負担になってしまった。それに高齢者も2週間で退院させられちゃうんだって。そのあとは、医療保険がほとんど利かない療養型病院やリハビリ病院に移されるんだって。大体特老の数が足りなくて、どこも待機老人が一杯いるんじゃないかぁ。社会的入院をせざるを得ない現状をほったらかしにしておいて、追い出しはないよ。年寄りに冷たい国だねぇ。
混合治療もおかしいよ。新薬が保険対象になるのに時間がかかるからっていっても、副作用とか調べるのに時間はかけてもらいたいし・・・大丈夫ならいつかはなるはずなのに、それを最初から保険対象とせずに、自由診療の方に回したら、貧乏人はその薬を永遠に使えないってことじゃないか。「医は仁術」って言葉はどうなるの?人のいのちもおカネで買う時代になっちまうのかい?嫌だねぇ。
「患者の自己負担率が高まれば、公的保険でカバーされる範囲が事実上、縮小することになる。そうなれば、自己負担分をカバーするための民間保険が誕生する」
「つまり、小泉政権下で進められた医療制度「改革」は、公的医療費を抑制して、民間保険会社のビジネス・チャンスの拡大を目論むという側面があったのです。
 それを先取りするかのように、いまテレビや新聞では、「よ〜く考えよ〜♪」と国民の将来の不安を煽るような外資系民間保険会社のCMが過熱しています。」
もうすでにダマされて入ってる人がいたよ。それだと、やっぱりお金のある人しか助からない。日本人みんなが、今までのように、早めに、気軽にお医者さんにかかれることが、一番いいんだよ。その方が、みんな健康でいられるし、そうなれば医療保険の経費も少なくて済むはずだよ。せっかく国民皆保険があるのだから、それを活かそうよ。
“政府の諮問会議はどんな顔ぶれなのか?”、中小企業の代表や、一般勤労者や消費者や地方自治体の代表はいない。医療の関係者や専門家もいない。財界人やエコノミストが多い。これでは、自分たち企業の金儲けのための「改革」になって当然だよ。
“戦後日本人の食習慣を激変させた「人体実験」”“「消費者の温存」と「教育」に力を入れよ”も読めば納得。100年先を考えなくっちゃぁ。製造業立国、日本。「中流階級向けのクオリティの高い商品をつくれる国は日本だけ」「教育水準が高く、落ち着きと自信に満ちた中流層こそ日本の強さの源泉だったわけで、中流が下流に没落していく格差の拡大は、日本という国家の弱体化以外のなにものでもありません」
 参院選からは、方向転換。暮らしやすい日本、笑顔でいられる日本にしよう!!

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紙の本

紙の本ルポ貧困大国アメリカ

2008/04/19 01:09

アメリカはまさに貧困大国、日本も?

16人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 著者は堤未果さん。川田龍平さんのパートナーになられた方です。ご聡明な方ですね。
 プロローグでは、サブプライムローンがやはり2重の詐欺であったことが語られています。
 「その利率は一般のプライム(優良顧客)と比べ非常に高く、最初の二、三年は利子が低いがその期間を過ぎると急激に一〇~一五%に跳ね上がる」。
 セールスマンの口上は、「あなた方が国境を越えてやってきたアメリカという国は、不可能を可能にする場所なんですよ」。さらに、「住宅価格は上がり続けますから」
 「アメリカの住宅ブームが勢いを失い始めた時、業者が新たに目をつけたターゲットは国内に増え続ける不法移民と低所得層だった。自己破産歴を持つ者やクレジットカードが作れない彼らでも住宅ローンを組めるという触れこみで顧客をつかむやり方だ。
 ・・・英語のできないヒスパニック系には、あまりきちんと説明をせずに契約させるケースが非常に多く、利率も同じ所得層の白人と比べもともと三割から四割高だったという」。
 「この債権を担保としたサブプライム担保証券は一般の住宅ローンを担保にした証券よりリスクは高いものの金利自体が高いために利回りが大きく、ヘッジファンドや銀行が飛びついた」。
 まぁね、金融業界が飛びついたのはアホとしか言いようがない。そのあおりを食らう日本って、いい“かも”だわね。結局不動産屋は儲けたわけだ。リスクを上手に回避して・・・しかし、空き家がもったいないなぁ。ずらりだもの。もやいの事務局長湯浅氏が「貧困ビジネス」と呼んだそうだけれど、貧乏人からカネをふんだくって、借金だらけにさせて、セールスマンの心は痛まないのだろうか。いや、彼自身も追い立てられているのだろう。ノルマを果たせなければ自分が喰えなくなる。貧すれば鈍する。心も貧しくなる。まさに貧困大国。
 『まるでハゲタカです。・・・こういう人たちの個人情報が金融機関に出回っているんです。それを見ながら地図上に印をつければ「カモ」の分布図ができあがる。金融機関の営業マンたちはそれを見てピンポイントで勧誘に回るというわけです』
 「貧しいために大学に行きたくても行けない、または卒業したものの学資ローンの返済に圧迫される若者たちや、健康保険がないために医者にかかれない人々、失業し生活苦から消費者金融に手を出した多重債務者、強化され続ける移民法を恐れる不法移民たち……こうした人たちが今、・・・束の間の「夢を見せられ」、暴走した市場原理に引きずり込まれているのだ。」
 未果さんの文章は、詳細なデータと、的確な分析、そして生の声。この3点セットで問題を追っていく。だから、わかりやすいし、納得できる。
 なぜ貧困児童に肥満児が多いのか・・・なんと、校内にジュースやファーストフードの自販機があるのだ。「無料ー割引給食プログラム」という制度はあるのだけれど、予算削減のため、人件費を削減し、調理器具も整えず、メニューがジャンクフードのオンパレードとなる。マクドナルドやピザハットなどの大手ファーストフード企業と契約する学校も増えているそうだ。
 アメリカ国内の飢餓人口・・・「2006年度に全米でフードスタンプを受給したアメリカ人は2619万5449人で、2000年から5年間に930万人増加している。」 『イラクや北朝鮮で非常な独裁者が国民を飢えさせていると大統領は言いますが、あなたの国の国民を飢えさせてるのは一体誰なの?と聞きたいです』
 人災だったハリケーン・カトリーナ・・・単なる人災と言うよりも、大量殺人という印象だねぇ。『移民対策』としてカトリーナの被害者が増えるようにしたとしか思えない。さらに、私が知ることのできかったその後では、「二〇〇七年の時点の報告では、たとえばニューオーリンズ市の四六万人の住民はうち半数以下しか帰還しておらず、住民の六〇%は今も電気が使えず、病院は半数が閉鎖したままで、再開した託児所は被災前の二三%。緊急支援と瓦礫除去費用に数十億ドルが費やされたと発表されているにもかかわらず、ニーオーリンズの町には洪水時に出た瓦礫の三分の一が二〇〇七年現在もまだ放置されたままだ。
 ブッシュ政権が民間企業の一つであるバリバートン社の子会社、ケロッグ・ブラウン&ルート社に委託した復興予算の五億ドルは一体どこにいってしまったのだろう?」
 旅費もなく、援助も打ち切られた避難民。「人影の消えた瓦礫だらけの居住区では、昔からあった低所得者用の公共団地が取り壊され、高級コンドミニアム群とショッピングモールが建設された。」被災地再生計画は怒りの声をあげる避難民の間で「民族浄化計画」と呼ばれている。」
 アメリカ国内の格差問題を追っていくと行き着く先は軍隊。そのシステムが見事すぎて怖い。その軍も民営化されて、世界の格差問題にもつながっている。
 日本もすでにアメリカ並になりつつある。なんとかならないか。そのキーワードは、やはり日本の憲法第9条にあると思う。
 「何が起きているかを正確に伝えるはずのメディアが口をつぐんでいるならば、表現の自由が侵されているその状態におかしいと声を上げ、健全なメディアを育て直す、それもまた私たち国民の責任なのだ。人間が「いのち」ではなく「商品」として扱われるのであれば、奪われた日本国憲法二五条を取り戻すまで、声を上げ続けなければならない。」
 9/11以降のアメリカのマスメディアの動向を見て、自身がジャーナリストになることを決意されたそうだ。その選択に拍手を送ります。

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紙の本

紙の本昭和天皇・マッカーサー会見

2008/11/21 12:53

右翼さんにぜひ読んでもらいたい

27人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この本を読めば色んな矛盾がすっかり解き明かされます。天皇が拒否した靖国神社にお参りすべきかどうか、天皇がマッカーサーに心から感謝した東京裁判を否定するのかどうか、日本を属国から独立国にしたいのか、それとも天皇制を堅持するのか。ぜひこの本を参考にしてください。
 まえがきに「筆者がとった基本的なアプローチは、昭和天皇の「お人柄」といった情緒的なレベルのものでは全くなく、占領下というきわめて“特異な環境”のもとで、天皇制の防衛を至上の課題とする「政治家」としての昭和天皇が内外情勢をリアルに分析していたであろう“同じ地平”にたって問題のありかを再構成する、というものである。こういうアプローチによって初めて、「立憲君主」という自己規定の枠組みを乗り越えて昭和天皇が、“超憲法的”に「高度に政治的な行為」を展開した背景を捉えることができるのである」とあるように、学者として非常に緻密に、内外の文書を立体的に検証し、冷静に“空白”を推論している。
 でも、私はただのおばちゃんなので、「東条さんかわいそう」。 この本を読んで今まで疑問だったことが、「エッ、そうだったの。だからかぁ」、と納得できた。
 前回の参院選。東条さんのお嬢さんも立候補していた。人手もお金も足りないのだろう、ビラが破けかかって風に揺れていた。「英霊の骨を集めたい」。彼女の主張もわかるよ。戦争中も、今も、「お国のために」戦った人のいのちを軽視している。私には今とこれからを生きる人の方が大事だから、票は入れなかったけれど・・・右翼は何をやっとるんじゃい?何で援助しないんだぁ?
 解けましたねぇ。この本で。東条さんは嵌められたのでした。汚いなぁ。やり方が。
 「ヒロヒト、インタビューで奇襲の責任を東条に押し付ける」。ニューヨークタイムズの見出しどおりだったんです。表向きは、GHQや天皇の側近、政府みんなで協力して、「軍閥に利用された」を宣伝、一方で、マッカーサーとの会見で「この人たちを釈放して自分を処刑してもらいたい」と言ったと、東京裁判の証人にささやいたんだって。逆だろう?本当にそう考えていたのなら、天皇が自分で東京裁判に出廷してそう言えばいいのに・・・卑怯せんばん!!まぁ、彼は侍じゃないからね。天皇の歴史からいっても、当たり前と言えば当たり前。自分の命が惜しいのは誰でも同じ。
 だれに責任を負わせるか。で、東条さん。罪をおっかぶせたから、東条さんも合祀されている靖国神社なんて、怖くて行かれない。天皇の言うことを彼ほど聞いた人はいないと天皇自身が言っていたそうだから、黙って、処刑された東条さんがかわいそうでならない。ビラが風に揺れていたのを気の毒に感じたのは正解だったんだなぁ。
 「従来、近年の戦争は、多く自衛権の名において戦われたのであります。満州事変然り、大東亜戦争また然りであります」と断言した吉田茂が、何で憲法違反の安保条約なんかむすんだのか?ピストルでも突きつけられたんじゃぁないか?という疑問も、この本で解消。
 天皇は、命の恩人マッカーサーも総理大臣も“バイパス”して、アメリカと交渉していたんだってさ。日本のほうからどうぞ基地を使ってください、というふうにします。戦犯になった人たちを解放すれば、もっとあなた方のお役に立ちますよ、と。
 アメリカの属国になったのは、おまえのせいか。属国の歴史は古いのねぇ。2代目3代目の腰抜けどもがペコペコするのも当然のなりゆき。
 “バイパス”だけではない。直接呼び出されることもあったそうだよ。総理大臣に圧力をかける。「自分は国民の代表」と胸を張って断ればいいのに・・・あの頃の人には、現人神。吉田茂はあの時アメリカ行きを何とか他の人にと、抵抗したのに、呼び出しうけてあきらめたようね。屈辱的な安保にサインした総理として歴史に名を残しちゃった。これも気の毒。
 明治憲法も、立憲君主ではなかった。ヒロヒトはなるべく口を出さないようにしていたということだけど、その判断は情勢による。例えば、「「満州は田舎であるから事件が起っても大した事はない」と、あきれるほど率直に語っている」。田舎の人間が何人死のうと関係ない。自分の身に危険が及ばないなら、どんどんやってってこと。「つまり、満州事変に対処するにあたり昭和天皇の行動を律した“判断基準”は、「統帥権干犯」という憲法上の根本問題ではなく、ひとえに満州をめぐる情勢認識にあった。だからこそ、大権を侵した朝鮮軍や関東軍に撤収を命じることはなかったのである」。憲法なんてどうでも良かったのよね。自分の恣意のまま。当時の政府は「不拡大」の方針だったのに・・・
 だから平和憲法、国民の象徴になっても、変わらずに天皇外交をやっていた。憲法違反なんて認識もなしに。日本が属国になってもいいから、守りたかったものは何か。笑ってしまいます。三種の神器。共産主義の台頭によって天皇制がなくなることを恐れたため。「お人柄」は怖がりだったんですねぇ。国民をも怖がっていたんですねぇ。国民に「卑怯」がばれるとヤバイ、朝鮮戦争が休戦になると、国民に共産主義が浸透するのがヤバイ。
 著者は最後にこう語ります。「憲法をひたすら遵守し、戦争の過去を痛切に反省し、「アジアの中の日本」を何よりも重視し、さらには「国際社会の友好と平和、人類の福祉と繁栄に寄与する」ことを切望する明仁天皇の基本的立場は、戦後の日本が歩むべき道であったばかりではなく、今後の日本が進むべき方向性をも示す文字通りの「象徴」であり、皮肉な表現を使うならば、昭和天皇が残した“最も重要な遺産”と言うべきではなかろうか」
 わたしが思うに、ちっとも象徴じゃぁないよ。だって、運動会に行ったからってまた雅子さんバッシング。今時の親なら両親揃って行くよ。父親の育児休暇ってないの?有給は?まったく派遣社員よりもひどい労働条件だよねぇ。おお、そういう意味では象徴かも。冗談抜きで、雅子さんを大事に思うなら、美智子さんを大事に思うなら、天皇制、やめた方がいいよ。
 明仁さんがいくらいい人でも「田吾作」どもが狙っていることに変わりない。国民主権と天皇制は不自然。彼らがちゃんと生きていけるように配慮も必要だし、今すぐに憲法改正は怖いし、ちょっと時間はかかるけれど、早めに廃止しようよ。安保もね。

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紙の本

学びあい

15人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

学問道場の主宰者でもある副島隆彦氏が編者。題名の上に、“最高支配層だけが知っている”とあって、帯に“真実はやがて世の中に、ザワザワと広がる”とある。そのとおりなんだろうね。私も知っている話があるから・・・
副島さんの「安倍信三の奇怪な変節」は面白かった。安倍首相がアメリカから「カルト・オブ・ヤスクニ」とにらまれている。中国などアジア各国からは「何があってもアメリカに一言も文句を言えない国」と見破られている。安倍首相の顔つきからもそれが確認できるというのはとっても納得がいった。ただねぇ。アメリカからにらまれている分、あせって、ますます年次要望書どおりに9条改悪が早まるような気もして、私はとっても怖いんだけど・・・シンゾー政権は長く持たないと予測しているけれど、恫喝すれば意のままに動く政権なら、アメリカが保たしてくれるかも。
全体を通して、日本がいかに外国から都合のいいように利用されてきたか、ということを言いたいようだけれど、信長・秀吉・明治の志士たちも、結果的に日本を植民地にはしなかったから、それなりにしたたかだったのかもしれないと、私には思える。今がいちばん植民地っぽいのでは・・・米軍に長いこと占領されっぱなしだし、USAには各州単位の地方自治があるけれど、日本の場合は、連邦の意のままに動いているから、「属国」。お金は貢いじゃうし、企業は乗っ取られるし、労働者は、アメリカの資本家たちの都合のいい働き方に変えられちゃうし・・・独立国家になるのはいつ?
こんな状態であることは、ネットを利用している人は結構しっていると思うけれど、大新聞社たちは知らないのか、知らない振りをしているのか。憲法記念日の紙面を見た限りでは、憲法改悪は規制のコースになっているような書きぶりだった。今こそ改正のための論議をいたしましょうだって。確かに改正なら、私も論議に加わりたい。でもね、絶対多数の政権が意図しているのは、アメリカの要望どおり、9条を改悪して、アメリカのために戦えるようにするのが目的って、はっきり見えているではないか。それを、色々書き加えて、時代にあった憲法にしようってさ。そんなのんきな問題ではない。憲法の中の国民主権、三権分立、地方自治、平和主義を、法律を整備して、(たとえばさぁ、安保はいらないとかさぁ、最高裁がいつも国側の勝利になるのをやめるとかさぁ、ばら撒きでなく安定した収入が地域にいくようにとかさぁ。)もっとしっかりしたものにしていく。それが先だと思うよ。
マスコミがこんななもんだから、副島さんたちが頑張っていても、みんなはまだまだ、日本が独立国とはとても言えない状態だと言うことを知らないんだろうなぁ。
最後の章も、怖いねぇ。
「ホワイトカラーエグゼンプションには「巨額の賃金横取りである上、過労死を急増させる」って。
「人材派遣業の自由化」もアメリカの意のままだった。おかげで給与格差も生じているけれど、企業だって大変だろうに。日本式では、技術などを社員同士で互いに向上し、伝え合うという教育ができたのに、いまや、「マニュアル」人間ばかり。だから、団塊の世代の退職が怖いんでしょう。技術などの伝え合いができていたら、何も怖いことないもの。若い正社員に任せればいいだけなのに・・・いつ首をきられるか分からない人間は、その場の成果を上げることに必死で、悠長に、“お客様のため””社のイメージを壊さないように”なんて配慮までできやしない。これって目立たないけれど、結構日本の産業の底力をぶち壊しているんじゃぁなかろうか。
編集主幹からのことば。なかなか意気盛んで好印象。若い人たちのひたむきな学びあいっていいねぇ。
相互教育・社会教育がもっとあちこちに沸き起こること。それが独立国への道に繋がっていくと思う。

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紙の本

ワンパターンの言い訳にうんざり!!げっそり!!

15人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「男たちは壊れ始めているのではないかという感じがする」「こうした加害者意識の無い加害者たちの意識を“男性問題”として俎上に挙げない限り問題の本質は見えてこないだろう」そうよ。当然、男が加害者であれば男性問題なのです。
 加害者はまず、訴えられるほど相手の女性が傷ついたり、怒りを感じているということが理解できない。相談員に説明を受けたあとでも、「その程度のこと」「目をかけてやったのに」「被害者意識が強い女」「派遣は水商売のような客あしらいが上手にできる人たち」「いやよいやよも好きなうち」。まったく、同じ仕事場の女性に対してこんなふうに捉えているのかと思うとげっそり。
 げっそりしたい人、あほな男の見本を見たい方は是非お読みください。
 セクハラ男性の特徴は4点。①公私混同。女性側が「仕事の話があるからと誘われたので断れなかった」と言っているのに、加害者は「さぁ、そんなふうに言ったわけでも・・・」と実にあいまい。時には「いくらでも代わりはいる」の脅しもあるため、女性側はなんとか穏便にとお断りを伝えているのに、「彼女が望んでいることは雰囲気でわかった」。②自分勝手な妄想。「他者への共感能力の欠如」。そして、訴えられたことに対して反省するどころか、相手の女性の悪口を連発。(盗人猛々しい)③女性への攻撃性。そして、最後に④逃げる。まぁ、専務やら弁護士が代わりにご苦労さんです。自分で責任取れよ!!
 政治家や官僚もそうだよねぇ。日本の借金、あれだけの金額、どうやってこさえたのさ。公私混同が一杯あるねぇ。天下りとかも。「愛国心」を持ち出すって言うのも、セクハラっぽい。「靖国問題」も他国との関係を視野に入れてない。自分勝手な妄想が相当入っているんじゃないかなぁ?女性へのバッシングは石原氏の得意技。「改革」なんて叫ぶのも、自分の失敗を棚に上げるためによそへ転嫁目的の攻撃だったよね。そして無責任。逃げる。政治家や官僚はこの4点、しっかりお持ちですわぁ。
 ジェンダーバイヤスフリー。ゆがんだ性差とでも言うのかな。それに捕らわれないで生きましょう!!という呼びかけなんだけど、セクハラ男性は、ゆがみきってますなぁ。下駄を履かせてもらっていた時代には、権力をかさに来て、知らん振りできたのに、今は呼び出されて、言い訳をしなくてはならない。仕事場でもリストラ大流行りだから、あっさり首になったり、お連れ合いさんにばれて離婚されたり、まぁ、散々でお気の毒。でも、その前に被害者はもっと大変だったんだから、自業自得よ。
 「ここに来て男達の価値が急速に下落しているように見えるのは、単に男性優遇処置の有効期限が切れ、正当な価値評価がはじまったに過ぎないのだ」「もう一方で気になるのは、すでに触れてきたように自らの抱え込んだ喪失感を他者に転嫁して強引に埋め合わせを求めたり、または弱者に怒りを向けたりすることで、自らの崩壊を食い止めようとする動きである」「まさにこうしたあがきや自分への苛立ちが、最近の自己本位な性犯罪の多発化や、社会的に地位や立場を忘れた痴漢行為やセクハラへの暴走、逸脱のスプリングボードとなっているとは言えないだろうか」一見、関係ないようだけれど、人質三人に対するバッシングも、子どもが被害者の殺人事件もみんな同じ根っこから来ている。格差社会になれば、ますます心に余裕がなくなるけれど、人間として優しさを失わずに生きていく事が大事なんじゃないかな。男性のみなさん、下駄をはかずに素足でのお付き合い。いいもんだよ。

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騙されないために

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 風呂釜が故障して、買い換えたのだけれど・・・最後に営業マンが言った「つぎはガスコンロですね」が引っかかる。「冗談じゃぁないぜ」。途中、「今だけ、お客様だけ特別情報」、「なんとか身内に泣いてもらって」作戦をしっかり取られたのはわかっていたが、客のために買い替えを勧めたのかどうか?別な工事会社にも問い合わせるべきだったのかなぁと・・・著者ほどではないと思うけれど、私も騙されやすいのかも・・・、
「この際、正直に打ち明けてしまうことにします。私はこれまで、実にだまされやすい人間でした。」「自分でも心配になるくらい」カモにされていた著者。それで実験社会心理学者として、承諾の心理について研究を始めたのだそうです。
 テクニックの大まかなカテゴリーは、返報性、一貫性、社会的証明、好意、権威、希少性。なんとなく身に覚えがありますよね。例えばタッパーウェアー。友人の家に呼ばれ(好意)、なにかプレゼントをもらい(返報性)、「使いよかった」例を自ら紹介(一貫性および社会的証明)。タッパーウェアーでうまいこと買わされたとしても、懐がそう痛むほどの金額ではないし、それなりに使えるものだからいいけれど(置き場所には困る)・・・ことほどさように、この心理学は社会のあちこちで日常的に存在しているということです。
 返報性は確かに社会的に必要なものでもあるけれど、もし、お返しをするとしてもできる範囲、もしくはより困った人にすればいいのだ。実際、世の中はそういうふうに廻っているのではないかとも思う。「ありがとう」だけは即、その場で言いましょう。
 一貫性は怖い。人生が狂う場合もある。一回認めてそれにはまりこむと、自分でもおかしいと感じていても引き返すことができなくなる。「こんな宗教にのめりこんで」と、友人の例ではしっかり見えるけれど。自分は?
 セーラーが大酒飲みで結婚の約束を果たさないティムといったんは別れる決意をし、別な男性と婚約までしたのに、ティムの口説きに負けて、ティムと同棲、約束を反古されても、二人は愛し合っている、自分は幸福であると信じきっている。あらあら。
 「機械的な一貫性には、もう一つもっと手におえない魅力があります。私たちが考えることを避けるのは、苦労のためではなく、考えることによって厳しい結果が生じるためであることが時々あります。理路整然と考えた結果、望んでいない答えがいまいましいくらいはっきりしてしまうことがあるために、私たちは精神的な面で怠け者になってしまうのです。」
 研究者たちが潜入し、理論で打破したはずの宗教セミナーの参加者はこう言ったそうです。「僕は今夜はお金を払うつもりはなかったんだ。今、本当に文無しに近い状態だからね。だから、次の会合まで待つつもりだったんだ。だけど、君の友人が話し始めたとき、お金をすぐに払った方がいいと思った。そうしなければ、家に帰って彼の言ったことをまた考え始めてしまって、そうしたらもう決して申し込まなくなるって思ったんだ」。
 社会的証明も、なかなか怖いものがあります。「風」とか「空気」に、ことに日本人は弱い。いじめの温床でもあります。「集団的無知」は命にかかわる。救急法で「誰か助けて!」ではなく、「そこの人、救急車を呼んで!」と、特定の人に具体的に指示するように教わったのがこれだったのだなぁ。事件や事故の場合、「誰か他の人が助けるだろう」という心理が働くそうです。「誰も騒いでいないから、たいしたことではないだろう」で、目撃者が多すぎるとかえって殺人事件の通報が遅れたりすることがあるのだそうです。
 「自殺」報道が、他の「自殺」や事故を誘発するのも、社会的証明の作用とか。日本の報道はいけませんねぇ。具体的方法まで教えちゃって・・・真似しろ!!といっているようなものです。
 好意。学校における形式的な人種差別廃止のための統合では、逆に偏見を強めてしまったことが記されています。「典型的なアメリカの教室」では、日本でもだね。子どもを教育させるというよりも競争させているから、よくないんだよ。 そして、実験です。少年たちのサマーキャンプで、実験者が意図的に双方の集団のミーティングに競争的な活動を導入したら、悪意が増大しました。そこで、「協力すればお互いの利益になるような一連の状況を作ったのです。たとえば、一日がかりの遠足の途中で、町へ食べ物を買いに行くために使える唯一のトラックが動かなくなっているのが「発見」されます。そこで、全員が集められ、車がそこから抜け出るまで、皆でトラックを押したり引いたりしたのです。」悪意の増大実験よりも時間はかかったそうですが、子どもたちは変わりました。
 学校でも、「学習におけるジグゾー技法」を実施。「生徒たちをいくつかの協力チームに分け、それぞれの生徒には試験に合格するのに必要な情報の一部分(つまり、ジグゾーパズルの一つのピース)しか与えません。このシステムのもとでは、生徒は交替で教えあい、お互いに助け合わなければなりません。良い成績をとるためには、一人ひとりが他のすべての人を必要とするのです。」
 学力の向上こそが(協力する能力も含め)勉強の目的だものね。受験は例外だけど。
 権威の持つ影響力の実験結果は、ぞっとする。「何の罪もない他者に対して、苦痛を与えるように指示された場合、普通の人はどの程度の苦痛まで与えようとするのだろうか?」が実験の目的だったのだけれど、なんと、「約三分の二の実験参加者(被験者)は、犠牲者(「生徒」)からの懇願を聞き入れず、研究者が実験の終了を告げるまで、自分の前にある三十個の電気ショック・レバーを次々に引き、最後のレバー(四百五十ボルト)までも引いたのです。」
「実は、ミルグラムは最初、ナチが優勢であった間、ドイツ国民がなぜ強制収容所で何百万もの罪のない人々の殺戮に加担したかを理解しようとして研究を始めたのである。」でも、アメリカでも簡単に実験結果がえられちゃった。ナチズムはなにもドイツの特産ではないということだわね。
 現代社会ではますます情報が多くなり、時間が急ぎ足で過ぎるから、簡便反応が多用されるだろうって。ずるをする人たちには報復を。そして、大事なことは、足を止めて、自分の胃や心の奥からのシグナルを聞いて、自分の頭で考えよう。今はマスコミが当てにならないからなぁ。小泉の「改革」に「カチッ・サー」で、投票しちゃった人が、今頃になって、後期高齢者医療制度(長寿の人を放り出してふんだくれ!!制度)の欠陥に気がついて憤っている。騙されちゃったままにしないで、「優しさ」を大事にする社会にしていきましょうよ。もうこれ以上、騙されないために、この本を読んでみたら?

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3択?これっきゃない。

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経済の専門家である森永卓郎さんが書いた本です。副題は「戦争すると損します」。日本はこの61年間戦争していませんが、憲法違反を繰り返すことによって、すでに一杯損してます。その分私たちは暮らしずらくなっています。そんなことが、おだやかでわかりやすい言葉で書かれています。私たちの知恵で、戦争によって誰が利益を得て、誰が被害を受けるのかを調べ、いま日本で世界で起きていることの本質を知り、戦争のリスクを減らすための努力はできると提唱しています。私たちが何もかも失う前に・・・
3択です。
①「アメリカに守ってもらう」
②「みずから防衛する」
③「けっして攻撃されないように、世界中の国々と友好関係を結ぶ」
ブルドックソースの株主さんが「日本の味でなくっちゃ!」とおっしゃっていました。その心意気、いいなぁ。ハゲタカファンドに負けるな!!です。で、りそな銀行に公的資金が約2兆円注入され、りそな株主=外資は大儲け。「税金を使った利益供与に近い、国益に反する行為と言えるのではないでしょうか」。「いいんだよ、どんどん辞めて、人はいくらでも入るんだから・・・」、新自由主義経済では人材確保なんかできない、お客様へのサービスが低下して、消費者としても困ることになる。ハゲタカファンドの暗躍は、日本人株主ばかりが被害者ではない。
なんでそこまでアメリカに貢ぐのかというと、「アメリカの核の傘に入って、守ってもらっているから」?「日本は何の根拠もないまま、アメリカ政府の高官の発言によれば「どの同盟国よりも気前よく」、言われるままにぼんぼんおカネを払っているだけなのです」。じゃぁ、米軍は日本を守ってくれるの?「そんなことはありません。現実に、守ってくれていません。7月に北朝鮮が弾道ミサイルを示威行為として発射したときも、日本は詳細な情報はまるでもらえませんでした」。沖縄だって、海外を攻撃するのに都合がいいだけで、日本を守るための拠点ではありません。「日本の取ろうとしている行動は「自分でおカネを払って、アメリカが日本を占領しやすいようにしている」とも言えます」
アメリカと日本以外のほとんどの国では、世界平和への脅威はアメリカであるとの認識です。そんな国がよその国を本気で守るとあなたは思いますか?そして、そんな危険な国の基地があるということは、リスクも一杯ということです。
自衛隊を軍隊にしようって? 「国の一般歳出の1割ぐらいは防衛費にあてられています」。米国、英国、フランスに続いて4位はなんと日本の453・2億ドル。防衛予算を削れば消費税は3%で済むって。日本を守れるのか、という問題では、もうこれは簡単。太平洋戦争は何で負けたんでしたっけ?そう、石油です。資源のない国日本。さらに、食料の自給率の悪さで、兵糧攻めにも弱いし、人口集中で東京がやられたら一巻の終わり。どう戦おうと勝てるはずがない。武力では。
つまり「日本にとって何の付加価値も生み出していないものに、毎年、莫大なカネを使い続けている」というのが、いまの日本の実情なのです」。
道は③の外交努力しかないのです。ヘンに怖がって、無駄金使うよりも、自然体でいいではないか。森永さんの信念は「人を殺すよりは、むしろ殺されるほうを選ぶ」。努力・勤勉・心意気・共感そういうものの方が武力より力があると思いませんか?いざとなったら、抵抗だってできる。森永さんは「竹やりで戦います」と答えたそうだけど、私は言葉とか歌とか目つき、顔つき。そして“笑い”。そう、圧制は笑い飛ばしちゃえ。

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今頃気づくなんて・・でも、これからが怖いねぇ

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 「日本と世界を騙し続ける独裁国家アメリカ」の下、帯に「驚いた!!」ベンジャミン・フルフォードさんの写真。もう、しょうがないなぁ。ジャーナリストならもっと早くに気づけよ!! まあね。「あまりにもひどい人間の悪業を前にすると、とくにそれが自分もかかわっているとなると、人間は事実を否定しがちである」から、仕方ないのかもしれないけれど・・・大半の人はアメリカ政府の発表にのっかって、テロ行為を非難しちゃっているからなぁ。でも、いつでも訂正“可”が人間の特質。素直が一番。私は、あの映像を見たら、あまりにも決まりすぎ???がずーっとあったし、被害者の家族の「おかしい!!」という本もたまたま見かけたしねぇ。だから、今頃「驚く」なんて・・・とつい思ってしまう。
 良心的な専門家たちの証言や情報など、詳しく書かれている。これでも納得しない人って、ぷふっ。つまり、かかわり度が高いってことかな。面子だとか、自分の存在が損なわれるとか、生きるためには黙っていたほうが利口だとか。一部の人が権力を握ると、それもお金儲けのためにとか、自分たちだけが偉いとか、妄想が入ってくると本当に怖い。独裁国家にもうなってしまっているのか。
 9・11後の「愛国法」は、ナチス・ドイツの法律とソ連の法律を足して2で割ったようなものなそうな。ただ「テロリスト」と呼ばれれば逮捕されちゃうなんて・・・選挙ジャックもあの手この手。なんか日本よりものすごいねぇ。有色人種には、間違った投票用紙を渡したり、機械が少なくて長時間待たせたり、投票機械そのものの操作とか・・・汚いなんてもんじゃないね。
 怖いのは、スカル・アンド・ボーンズという秘密結社の優生思想と妄想。もちろんブッシュもメンバーね。そいつらのアメリカ新世紀プロジェクト(PNAC)によると、「あたらしい真珠湾攻撃」と中東の基地は実施済み。さらに生物兵器の開発。宇宙軍を創設を計画している。微生物学者がた〜くさん不審な死を遂げているって。岸信介がA級戦犯をまぬかれるためにアメリカに差し出したとか言う「石井部隊の研究」を続けてるってことね。人種別に効く生物兵器だって。SARSみたいにアジア人だけに効くのを開発しているのかしら。もちろん小泉さんもかかる可能性がある。だって彼らからしたら「ポチ」だもの。用が終わればいらないのよ。そういう優生思想って嫌ぁね。
 詳細な情報と、それに基づく推論が本文に書かれている。それと別にコメントのように、フルフォードさんの意見、提言が書かれている。ちょっと飛ぶので読みずらいけれど、内容がうなずけるので、非常に読みやすくはある。
 コメントの方は、教育で言えば、「日本はもっと自主性を育てるカリキュラムを」とか、なかなかよい。「アメリカで塩漬けになっているお金」を有効に使って、自衛隊を世界の災害救助隊にしようって。それは大賛成なんだけどさ。戦艦大和からのネーミングは嫌だなぁ。第3ステージで日本は勝てるだって?「勝つ」必要なんかないよ。それより、日本は日本として、アメリカにも、他の国にも、ちゃんと意見が言えるようになって欲しい。もちろん、第9条を持つ平和国家としてね。SARSの特効薬をもっているのは?・・・そんなもんで脅されないでね。
 ところで、フルフォードさん、私は「古歩道」という名が好きなんですが・・・まだならないの?

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へこたれないよ!!

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 東京新聞の「へこたれない人々」欄で森雅裕の名前を見て、「ん!?」。懐かしいなぁ。図書館でよく借りました。芸大出身のソプラノ歌手、生意気でいて、スタイル抜群、根が優しくて、頭もいいし、性格悪い、いえ、強いし、大好きだった。お相手の男性との会話がなんとも楽しくて・・・シリーズものになるかと思っていたのに、刀ものになって、その後がなく、どうしてかなぁと思っていたのだった。

 著者本人が「生意気」だから干されたんだって。えーっ。私は大昔のか、外国物の推理小説しか読まない。今の日本のはあまり面白くないのだもの。ロマンがないというか、生身の人間が見えないというか。例外的に、この人のはすごく面白いと思っていた。有能な人を干すなんて、もったいない。だから本が売れなくなっちゃうんだよ。

 この本は残念ながら推理小説ではない。ホームレス一歩手前で、必死に就活して、何とかコンビニの店員さんになったものの、若い人たちとの夜勤は身に応えるし、客層は荒れているし、啖呵をきりたくてもそこは「お客様は神様です」の上の指示に従わなくては、飯が喰えなくなる。つらいねぇ。

 乱歩賞作家なんて肩書きが付いているのにコンビニのオジサンをやるのは、これまたつらいものがあるかも・・・
 それでも真面目(???)に働くのです。何とかお店が存続できるように、頭も使うのです・・・
「雰囲気を一新するとか、他店との差別化を図るとか、地域の特性にそった品揃えをするとか・・・」。コンビニ教育の経験者も、乱歩賞作家も、「旧日本軍が大学教授も小作農も同じ一兵卒として招集した愚行」同様、使い捨て。「50過ぎてコンビニのバイトをやるなんて、どーせ落ちこぼれの駄目男として見下していたのだろう」・・・男の悲哀も感じさせられます。

 何かと制約は多いものの、それでも客との啖呵は痛快である。
「馬鹿にしてんのかこの野郎!!」
「滅相もない。それとも、馬鹿にされる心当たりがおありですか」
「名前をいえ!!!」
「ですから、森です」
「お客様、ひらがなも読めませんか」

『あした、カルメン通りで』と『蝶々夫人に赤い靴』『自由なれど孤独』をまた借りてきて読んだ。買えないのだもの。啖呵、意気が良いねぇ。やはり、同じ著者だわ。

 友だちがいつの間にか友だちでなくなったり、もしかしたら、ホームから落ちちゃっていたかもなんて経験は、私と一緒だねぇ。

 「時代だけが変わったとは思えない。人も変わったのだ」。新自由主義からこっち、なんだかねぇ。人間が人間でなくなったというか。「貧乏して何よりつらいのは食い物がないとか必要な品が買えないとか、そんなことではない。友達がいなくなることだ」。「管鮑貧時の交わり、という言葉がある。失業中で苦しんでいる友人が私と会うたびに「俺は実家暮らしだから、お前より恵まれている」と福沢諭吉をくれ・・・なのに、何台もの高級車や広い土地建物を所有する金満家たちが、こちらは別に金銭など期待していないのに「迷惑だ」と背を向ける。おかしなものだ。」
本当にねぇ。「迷惑」って嫌な言葉。
でも、金満家が幸せとも思えないんだなぁ。

「落ちこぼれですけど何か?」。
 いいですねぇ。こういうの。私も負け犬の遠吠えをやってます。今の日本はひどい状態だけれど、ほんの少しでも良くしたいから、ま、ひとりでもですね、ぼちぼちとやっていきましょう。

 森さん、また失業中のようだけど、この本が売れますように。それで、尋深と音彦のコンビが復活してくれると、わたしの人生もより豊かになれる。

 そうだねぇ。落ちこぼれが、生き抜くこと、今の世の中では、それ自身が闘いなのかも知れない。それもできれば楽しく。「迷惑」とほざく金満家たちが羨ましがるほどに・・・森さん、もし、失業が続くようなら、府中緊急派遣村においでよ。

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紙の本

紙の本スローターハウス5

2008/02/15 22:33

「子供十字軍」と「偶然の気まぐれ」

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 ドレスデンの空襲のことを書きたかったけれど、すごく書きづらかったんだと思う。時間をいっぱい費やし、書いては破棄し、お酒もいっぱい飲んで、忘れたいこともあったんだろうと思う。重いよね。きっと。だから、〈電報文的分裂症的〉にならざるを得なかった。
捕虜生活とドレスデン空爆のほとんど実話に基づく話、地球での裕福な結婚生活を描いた話、そして、トラルファマドール星での檻の中の話。それらが時間を勝手に飛び越えて、主人公ビリーに迫る。私たち読者にも。
  トラルファマドール星人は言う、「今日は平和だ。ほかの日には、君が見たり読んだりした戦争に負けないくらい恐ろしい戦争がある。それをどうこうすることは、われわれにはできない」「いやな時は無視し、楽しい時に心を集中するのだ」
ビリーが父親を亡くした子どもに「お父さんは別な瞬間にぴんぴんしている」と慰めていたが、生まれた瞬間になくなった赤ん坊の場合は、いつまでもそれをくり返さねばならない。そんな人生つまらないよ。やはり未来の可能性はあると信じなければ・・・
  でも、人間って不思議。本当に嫌なことは忘れてしまえる。特に自分が加害者であった場合は・・・日本人だって、原爆投下は忘れないが、「南京大逆殺」「731部隊」「慰安婦」「沖縄戦での集団自殺強要」これらを何とか否定しようと躍起になっている。自分を正当化したい、その気持は理解できなくもないけれど、現在や未来の空爆をやめさせるためには、なんの力にもならない。
 普段、安逸な生活を送るビリー。ドレスデンの空襲について何も語ろうとはしない。車のドアをたたく黒人を無視する場面が印象的。信号が変わったからごく自然にスタートさせただけ。彼に悪意があったわけではない。でも、無視。そう、ビリーの裕福な生活においては、それが当たり前といえる。「ドレスデンの空爆」のこと、ベトナムの北爆のこと、息子がベトナムで戦っていること。考えたらつらい。無視する。それがいちばん楽。それでも別にとりたてて理由はないのに、泣いてしまうのはなぜ? それはビリーが人間だから・・・優しさのある人間だから・・・
 トラルファマドール星での生活も、地球での生活に似ている。地球の家具、電気製品付き。美人と一緒の夢のような生活、食べ物にも不自由がない。それでも動物園の檻の中。「自由がない」などと不満さえいだかなければ、「結構な生活」と言えなくもない。
 この本は、メアリ・オヘアとゲルハルト・ミュラーに贈られている。メアリは、戦友であり、のちにドレスデンを再訪する時も一緒だったバーナード・V・オヘアの妻。
 彼女は言う「あなたたち赤んぼうだったじゃない」。オヘアやヴォネガットの子どもたちと同じくらいの年齢で、実際戦争にかり出されたのだ。彼らを捕まえたドイツ兵は10代前半と書かれている。いつの時代も、同じだ。「子供十字軍」という名をこの本につけることを約束する。「子供十字軍」。実体は当時のストリートチルドレンを北アフリカで売るために組織されたものだった。ごく一部が、ジェノヴァの善良な市民に助けられ、故国へ帰ることができた。ジェノヴァの市民も、組織した修道士らも、人間なんだなぁ。
 ドレスデンの空爆についての記述は少ない。何しろ米軍の捕虜は頑丈で広い生肉貯蔵庫にいれられたから・・・逃げまどった経験はないのだ。交代で帰った見張りの兵やうっかり戸を間違えて裸を見てしまった少女たちの死が想像できるだけ。
 空襲の悲惨さは、死体の発掘作業中のバラと芥子ガスのような臭いに表れている位。むしろ、戦争の不条理(こっけいさ)に字数が割かれている。
 道化者のような格好の捕虜ビリー、ご馳走を食べて下痢をした作者、戦争中には泣かなかったビリーが馬の怪我を見て泣く場面。窃盗容疑で銃殺されたエドガー・・・
 戦後、ヴォネガットの問い合わせに「その情報は現在もなお極秘事項」との空軍広報課の返事。空爆について書くとヴォネガットから聞いた人が、強制収容所の話をする。ドイツのしたことを非難すれば事が終わるかのように。『ドレスデンの壊滅』と言う本の序文には、「わたしが理解に苦しむのは、敵国の民間人の死を嘆くイギリス人やアメリカ人が、残忍な敵との戦いで生命を散らした、味方の勇敢な飛行棟搭乗員に対しては一滴の涙も流さないことである」。「戦時下においてはよくある悲しいできごとのひとつであった。決定を下した人びとは、決して邪悪でも残酷であったわけでもない」。
 でもねぇ、ドレスデンでも東京・大阪の空襲でも、高温の火がどのように作用するかを知っていて効果的に、しかも、住民が逃げられないように周りから爆弾落としたって、何かで読んでいる。原爆の開発の全容なり目的が当事者に秘密だったように、ボタンを押した人は、邪悪ではなかったかもしれないけれど、計画を立てた人は、悪魔だねぇ。でも、またその悪魔も人間なんだなぁ。で、悪魔もボタンを押した人も、その結果を直視しようとはしない。その悲惨さを忘れてしまう。言い訳だけを記憶して・・・
 そんな人間もまるのまま見えていて、しかも憎めない作者は、こうつぶやくしかない。世の中とは〈そういうものだ〉。悲しみと諦めと皮肉と「これは決して正義ではない」マークが入り混じっているせりふ。それがあちこちに出てくる。
 書くのがつらかったんだろうなぁ。で、
 サム、こんなに短い、ごたごたした、調子っぱずれの本になってしまった。だが、それは、大量殺戮を語る理性的な言葉などなにひとつないからなのだ。・・・
 わたしは息子たちに、どんな状況にあろうと殺戮には加わらないように、敵兵殺戮のニュースがはいっても喜んだりはしゃいだりしないようにと言いきかせている。
 またわたしは息子たちに、殺戮機械を作るような会社には勤めるな、そうした機械が必要だと考える人々は軽蔑してよいとも言ってきた。
 これは本音だね。
 本人からするとこういう風にしか書けなかったのだろうけれど、ゴタゴタした調子ぱずれの感じが、ヴォネガットさんらしさにもなっているし、ビリーや作者の苦悩が仄見える効果となっている。また、解説めいた、グチめいた第一章が、小説本体と絡んで面白さを増している。なるほど、ビリーの奥さんのチョレート・バー好きは、モデルがいたんだぁ。
 もう一人の献呈者、ミュラーさんはドレスデン再訪のときに仲良くなったタクシーの運転手。後に手紙で「偶然の気まぐれにより、私達がいつかまた平和で自由な世界のタクシーの中で出会う日が来ることを心から待ち望んでおります」と手紙をくれた人。
 作者も書いているが、「“偶然の気まぐれにより”というところが実にいい」のだ。それがあっての人生。そして、東ドイツにあったドレスデンは、東西ドイツ統合後、歴史的建築物の再建計画が進んでいるそうな。

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紙の本暴かれた〈闇の支配者〉の正体

2007/05/21 12:49

これでいいのか、日本人

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ユダヤ・キリスト教「世界支配」のカラクリ ではちょっと混乱気味だったフルフォードさん、今回はジャーナリストは事実を追って行く者だと再確認されている。
「アメリカのある勢力が日本支配を完成しつつある——。
これはスパイ小説やSF映画の話ではない。
今の日本社会で密かに、しかし確実に進行している現象である」
長期信用銀行がアメリカのハゲタカ・ファンドに10億で売られ、国民の税金5兆円で不良債権を一掃し、新生銀行として上場益が1兆円。オランダ国籍だからどこの国にも税金を納めていない。
りそな国有化の件。竹中金融相の発言で株価の暴落があり、「大銀行は潰したりしません。りそな銀行は政府が守ります」と保証をつける。その間にハゲタカファンドはボロ儲けという図式。監査法人の会計士平田さんは不自然な自殺。りそなのインサイダー取引疑惑を追及していた植草氏は、覗きと痴漢の容疑で逮捕された。古歩道さんは「国策捜査」と呼んでいる。詳細に検証されているのでぜひそこを読んで欲しい。「裁判で私的な生活を攻撃して、とにかく家族を苦しめてやる」との脅し。植草氏は「私は無罪を訴え、最後まで戦います。自殺する可能性は絶対にありません」と宣言しています。もし植草氏に何かあったら、それは、“闇の権力”によるものだとということになる。
第2章アメリカに翻弄されるメディアと政治家 では、読売グループの故・正力松太郎が、CIAからコードネーム「ポダム」と呼ばれるエージェントだったことを記した文書がアメリカ公文書館にある。戦後すぐから日本人をおバカに変身させようとするCIAの作戦が実行されている。
石井紘基殺人事件も詳細に検証されている。他にも一杯あったね。角栄さんだって、独自外交をしたら、ロッキード。
まともな政治家は、検察とスキャンダルでタイミングよく消されてしまう。
日本の教育について、アメリカが押し付けてきた教育プログラムは受身のパソナリティを作ること、一生懸命勤勉に仕事させること(おかげで、過労自殺57%増加)、目立つ人の足を引っ張ること(イラクの人質バッシングもそういうことですね)。多くの日本人がアメリカからの露骨な内政干渉をまったく疑問に思わないものこの教育の成果だと断定しています。おいおい、これでいいのか、日本人。
第3章 世界を牛耳る支配の構図。アメリカ人も今のアメリカにはうんざりしているそうな。軍事費にかかる分福祉には廻らない。国民健康保険もない。自由の国っていっても報道の自由がない。イラク戦争ではジャーナリストを次々に殺している。
「“闇の権力”はアメリカの世界支配を狙う石油産業、軍事産業、国際金融資本と、それと利害を持つ政治家、官僚、メディア人の秘密結社である」。自分たちは神様だとでも勘違いしているのかしら?人口抑制のためにエイズ、鳥インフルエンザを生物兵器化している。一番効率がいいのは戦争だってさ。ザケンナヨ!!
秘密結社なんかいらない。私たち普通の生活者自身が、変えていかなくては…

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ほんとうにそのとうりですねぇ

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 扉にハワード・ジンの言葉が載っている。
  「政府は嘘をつくものです。ですから歴史は、偽りを理解し、政府がいうことを鵜呑みにせず判断するためにあるのです」
、9・11以降のアメリカと、3・11以降の日本を比較検討し、副題――アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること――が書かれている。「9・11の後、政府とマスコミを信じすぎたせいで、本当にたくさんのものを失ってしまったアメリカ」

 目次からいくつかを挙げてみると
  ノーベル平和賞を受賞した国際機関IAEAは原発推進
  〈風評被害防止〉という大義名分の下、政府がネットを監視する
  「復興特区」の名の下に市場化されつくしたニューオリンズ
  TPPでも政府は嘘をつく

 IAEAは途中でコロッと「安全です」となったので、当てにならん、とは思っていた。「ノーベル平和賞」は佐藤栄作が受賞してから、おかしいと思っていた。なので、私は騙されてはいない。「ただちに健康に影響はない」とか「風評被害」についてもほとんどの人はわかっていると思う。日本人だってそうお人よしではない。

 「復興特区」、ニューオリンズでのことは知らなかった。
  「最初に復興事業を受注したのは、FEMA(連邦緊急事態庁)前の長官ジョセフ・オールボーをロビイストとして雇っていた、ハリバートン社の子会社KBRだ。総額16億ドルの復興事業の8割以上は、政府関係者と関係の深い大企業が占め、税金による復興費用が支払われた後は、何層もの下請会社郡に丸投げされた。巨額の選挙資金と引き換えに、政府は〈不法移民の雇用解禁>と<最低賃金法の撤廃>という2種類の規制緩和によって、大資本の利益を大幅に拡大させている(Guardian,September27,2005)。」
  「カトリーナ災害から4ヵ月経った2005年12月、ミルトン・フリードマンがウォール・ストリートジャーナルに寄稿した論文でこう書いている。
  「カトリーナは悲劇だ。しかしこれは、教育システムを劇的に改革する機会ではないか」(Wall Streer Journal,December 5,2005)」
  で、教育も餌食となり、公立校が潰され営利目的の学校が次々と建てられたって。教職員組合をターゲットにする手法は日本でも、もう既に、の感ありだねぇ。学力の低下は「ゆとり教育」にあり、とされちゃっているけれど、本当かなぁ。先生への管理強化がいちばん悪いとわたしには思えるのだけど。

 フクシマ震災の「復興特区」。国がらみの地区では特に復興が遅れているというのは報道されているけれど、どうなっちゃうのか心配だねぇ。漁業・農業関係者もさぞややきもきしていることだろう。大企業などが進出して、自然と共存するやり方が無視されると、消費者の私たちにも無関係ではすまされない。「うすまった」=広く汚染された放射線の影響も地球規模だし・・・怖いねぇ。

 他にも怖いのはネット規制とTPP。ネットを使いながらも、良くわかっていない部分が多いし、掲示板の嵐などにも組織的なものを私は感じていたから、ぜひみなさん、ご用心を!!テレビや新聞のマスゴミが当てにならないからと言って、ネットだけに頼るのもよくないかも。

  これも目次の「なぜグーグル、ヤフーはよくて、2チャンネルは胡散臭いのか?」は反語です。マスゴミ同様、自分なりの判断を加えないとね。相撲協会での携帯チェックは、もう当たり前になってしまったようで。「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」、いわゆる“サイバー刑法”には気をつけた方がよいそうだ。

TPP「「2015年までに工業製品、農産物、知的所有権、司法、金融サービスなど、24分野の全てにおいて、例外なしに関税その他の貿易障壁を撤廃する」というその内容は、まさに投資家や企業にとって“バラ色の未来”と同義になる。
  政府が外貨の参入に対し国民を守る責任を放棄してくれるだけでなく、自分たちの利益を損なう規制に関しては、その国を相手に訴訟を起こす権利(ISD条項)までついてくるのだ。」

 私にはよくわからないのだけれど、どうもこの“ISD条項”と、「知的所有権」が特に怖そうだね。医療行為自体「知的所有権」にかぶっているとか。昔インディアンがそう思っていたように、私も、空や海、自然、は“みんなのもの”っていう感覚がある。“知”もそうだと思うよ。なのに、誰かに所有権があるなんて・・・国とか国家って物は私にはピンと来ないのだけれど、資産家がその堺を飛び越えて儲けに走ると、国の枠組みが壊れ、政府とのお約束の中で暮らしていた私たち庶民は、とんだ目に合うということになるらしい。地球上の「1%の人が99%の富を所有する」ためには、TPPはおいしい話なのかもしれない。でも、いつも思うのだけれど、その1%の人たちは幸福なんだろうか?むしろ、富とともに不幸も背負っちゃうのではないだろうか?『ロスチャイルド家の興隆』を読んだ限りでは、お気の毒としか思えなかったけれど・・・

 『おれおれ詐欺』もそうだけれど、恐怖感とか、時間に迫られるような時こそ、足を止めて、これまでのこと(歴史)を振り返り、先のことをじっくりと考える必要があると思う。関東軍はたくさんのおんな子どもを置いて撤退し、自らもシベリアに売られちゃったんだったよねぇ。軍はおんな子どもを守らないし、国はその軍の兵士さえ守らなかった。自分たちの身は自分たちで守っていかないと。

 いずれにせよ、自民党時代にできた原発で事故が起き、政権を握ったばかりの民主党では、その対処の下手さがモロ見えて、「政府は嘘をつく」ことがみんなに周知されて、そういう意味では、フクシマ震災で日本人みんないい経験を積んだとも思う。その経験を無駄にしたくないね。「嘘をつく」のが当たり前のことならば、その嘘を見破り、まともに動くように発言や行動をできるように市民の力をつけていかないとね。

 科学者は「除染」を研究してね。今政府がやっている「汚染を移動するだけ」・・・原発で儲けた企業がまた儲けるシステム・・・ではなくて、ちゃんと科学的に放射線が私たちの暮らしに影響しないように処理するシステムをつくって欲しい。

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紙の本

前進する韓国と、ひきこもり日本

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 還流にハマった友だちが言っていた。「私、韓国人って大好き!!」なるほど、この本を読めば、韓国人のパワー、と前向きさに魅力を感じる。
 「国内の外国人を大切に扱いましょう。それが国のイメージアップにつながる。そして、それは韓国製品の輸出増大につながる」という国益重視の考え方」。情は人のためならず。国益もそういうことなんだよなぁ。日本の場合は単に守るだけの「国益」。同じ言葉でも、韓国のは積極的かつ有効的。
 「前著『病としての韓国ナショナリズム』(洋泉社新書y・01年)を書いてから、すでにまる五年以上が経過した。この本は、九〇年代の韓国の盲目的な民族主義を、そこで暮らす外国人の経験を通して批判的に描写したものだ。」「当時、私の日からは、韓国のナショナリズムは「いらいらするほど稚拙」に見えた。もちろん、日本にくらべてもだ。
ところがその後、韓国のようすも日本のようすも、両者の関係も大きく変わった。なかでも大きな動きは日本と韓国の逆転現象である。つまり韓国では反日感情が沈下し、日本での「嫌韓」ムードが高まった。さらに驚くのは、「嫌韓」的な言説の中には、かつて韓国人が日本に対して行っていた「反日言動」をそのままひっくり返したようなものが多いということだ。
・・・それらは、かつて私が韓国の「病」と呼んだものである」
 「韓国人は自信を持った」、「もう日本のことなど気にしていない」、日本のネットは「情報が古すぎ」、「極端な時差ぼけ」。つまりは遅れているってことね。
 自信のない日本人は、この本を読むとますますかっかとしちゃうかも。
 先日、朝鮮大学のフェスタに押しかけてきた連中もそうなんだろう。「ぶっ殺せー」とか叫んでいたとか。まったく恥ずかしい人たちだよ。学生たちが近隣の大学や住民との友好目的で開いた行事だというのに・・・
 「政治外交と人々の実感との乖離が広がりつつある」、「メディアが滑っているのは日本も同じだ」。韓国に遅れを取っているとはいえ、日本にも、意図的な煽りには動じない、暮らしや実感を大事にする人々が増えている。
 朝鮮学校への助成金を求める署名を集めていて、みんなが「子どもの教育権」ということにとても協力的なのに、手ごたえを感じた。動くことが大事なのですねぇ。
 ワールドカップでは、「過剰な「テーバンミングック」にいや気がさして、途中で赤を脱ぎ捨てて、日本の青に着替えたりもした。
「赤一色のところに、そんな青いユニフォームでうろちょろしていて大丈夫?」
日本にいる友だちには心配されたけれど、それは大丈夫に決まっている。お年寄りから子どもまでいる運動会みたいな場所で、何か不測の事態が起こるはずもない。私も他の外国人も、勝利の勢いで気前のよくなった韓国人にお酒をふるまってもらっていた」
 順子さん自身も積極的な方なのね。「赤」から「青」へ。自分の意志どおりに着替える。そして、「このワールドカップの時、初めて私は日本のことが心配になった」。「ひきこもりの国」という本から「日韓」の違いを例に挙げている。
 韓国は民主化が遅かった。通危機期にも見舞われた。そしてグローバル化を受け入れ、「人々の多くも積極的にそこを泳ぎきるしかないと判断したのだ」。
 「韓国人は、一人ひとりが個人的体験の中で、世界と独自のつながりをもっている。それは華僑が作る同郷ネットワークというような閉じた輪ではない。決して頑強ではないが、でもしなやかな線。彼らにもやはり、「道」が見えるのである」と著者は言う。中国を「安い労働力を供給してくれる生産基地」としてでなく、「一三億の市場」と捉えるそのたくましさ。格差社会に対しても「韓国では中間層に対して、落ちないための注意ではなく、上がるためのノウハウを説く」。(これから)「「どうなるか、わからない。だから、いろいろ投資しなくちゃ」と、不動産、株、そして次世代、つまり子どもたち」への留学熱。「一つの民族としてはユダヤ人の次に海外進出度が高い」といわれるほどの国際性。
 ひきこもり日本とは対照的。
 「国家を信頼する日本人、信頼しないが期待する韓国人」の項が、ずしんと響く。
 「個人ができないというのなら、国がしてあげなくちゃ。そのための国でしょう」
 「韓国人は、国家に対する信頼は低くても、期待は日本人よりうんと高いと思う。この期待の高さは、やはり韓国が若い国だからだろう。医療、福祉、あらゆる面で、やっと先進国なみのことをしようとしはじめたばかりだ。北欧の福祉国家から福祉なき米国社会まで、世界じゅうの例を前において、住民はひたすら高望みの要求をしていく。すでにあるものが削られていく日本とは、まったく正反対の動きである」
 「蜂の大群のイメージが浮かんだ。遠くから見るとえらくガタイは大きいのだけれど、近くで見るとじつは小さな個人が懸命に飛んでいる。
 みんなが一つの船に乗っているわけではない。一人ひとりが独立して自分の羽で飛んでいる。
 これが、グローバル時代に船出した韓国人の姿だ」
 日本はなぁ。「赤信号、みんなでわたれば怖くない」だもの。自立がまだまだ。年金だって医療だって、なんとなく信頼してきたのに、ここにきて、あらら・・・。官僚さんがやることをあてにしてきたけれど、ちゃんと監視もしなくっちゃ。改革の中味もチェックしなくっちゃ。暮らしが危ない!
 韓国だって、問題がないわけではない。まだ休戦でしかない戦争中の国。分断された歴史が痛々しい。
 この本のあとがきには「この五、六年間の韓国社会の変化ぶりは「果敢」というに十分だった。それは私にとっては感動的だったが、果たしてそれがすべての韓国人にとって好ましいことだったのかどうかはまだ、わからない。「韓国はいつからこうなってしまったのだろう」
 韓国の年配者がふと口にするつぶやきからは、少子化、凶悪犯罪の増加、老人の孤独死など、韓国の新しい問題が透けて見えてくる」。
 著者は韓国で暮らしているから、韓国のことを心配している。私は日本で暮らしているから、日本が心配。
 自ら声をあげ、自ら行動することで、変えていくしかないのだと思う。 

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