紙の本
東北 蝦夷(えみし)を蔑んでいるような本
2023/04/26 14:20
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投稿者:トマト - この投稿者のレビュー一覧を見る
これでは、中央(朝廷)が東北に住む民を「鬼」として認識していた通りの蝦夷の描き方で、未開の民としか思えない表現ばかりです。
文化も知恵もあり、平和を愛する民の住む東北を貶めるようなところが多く、ガッカリです。
読んでいて胸が悪くなるような描写が、とくに蝦夷の女性に対してあり、怒りに似たものを感じました。
紙の本
呰麻呂、阿弖流為、母礼等、田村麻呂等にかかる霧を晴らす傑作
2008/02/03 22:19
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
荒蝦夷の蝦夷(えみし)とは、古代から中世に掛けて朝廷に従わない陸奥の住民に対しての蔑称である。彼らは奈良時代から平安時代にかけて朝廷に帰服することに抵抗してきた。今まで高橋克彦の描いた陸奥の国にどっぷりと浸かっていたが、熊谷達也という作家が描いた新たな蝦夷の陸奥が誕生した。
本書では、平安時代初頭の反乱の大将である伊冶公呰麻呂と阿弖流為を中心に描いている。主人公は呰麻呂である。熊谷は、呰麻呂と阿弖流為とを親子という設定にしている。物語の始まりは丁度、呰麻呂が乱を起こして決起するところである。これが後の阿弖流為と坂上田村麻呂との戦いに発展していく。もっとも、戦いといってもそれほどの戦にはならなかったと聞く。この部分の国史である『日本後紀』が散逸しているので、戦いの様子は不明であるそうな。
高橋克彦はすでに『風の陣』、『火怨』などで奈良、平安時代から続く陸奥の独立戦争の様子を小説にしている。さらに、沢田ふじ子も『陸奥甲冑記』で阿弖流為を描いている。
これらを年表から見ると、伊冶公呰麻呂が反乱を起こし、国府の多賀城まで攻め込んだのが780年で、阿弖流為が征夷大将軍、坂上田村麻呂に下ったのが802年である。
この間、22年であるが、呰麻呂が乱後はどうしたのか、阿弖流為との関係はどうであったのかなど、謎は多い。本書はその間を小説にして著したものである。
朝廷軍に対抗する蝦夷の酋長たちの駆け引き、朝廷に対する蝦夷も必ずしも一枚岩ではなかったという舞台設定である。それゆえに阿弖流為は田村麻呂に投降したという論理構成である。
さらに、阿弖流為のパートナーである盤具公母礼等が女性であったという仮定も面白い。さらに母礼等は巫女であったというのも、史実が定かではないこの時代に神秘のベールを一枚掛ける役割を果たしていよう。
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全1巻。
マタギとか書いてた人。
の、
みちのく史。
2作目。
前回アテルイ。
今回アザマロ。
1作目よりは良い。
少し湿気みたいなのが戻ってきてる。
けどあいかわらずとんでも設定。
それが嫌なんだって。
前作よりましとは言え
あいかわらず弱い。
もっとジメっとしてほしい。
この人は。
んで、
一般的な史実を書いてほしい。
創造はいんだけどそれが効果無し。
むしろ嫌。
薄い。
本当。
いつまで期待を持たせたままなんか。
ちゃんと当ててほしいなあ。
みちのく史で。
期待してんだから。
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「荒蝦夷」とともに、東北に住んでいる人間なら読んでおかねばと思い手に取った一冊。地元が多賀城ということもあるし。
朝廷側の記録にしか残っていない蝦夷ってどんな人々なんだろうと思いながら読んでました。
うーん、こうあって欲しいです。
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あらすじ(裏表紙より)
宝亀五(西暦七七四)年、陸奥国の北辺には不穏な火種がくすぶっていた。陸奥を支配せんと着々と迫り来る大和朝廷。そして、その支配に帰属する、あるいは抵抗する北の民、蝦夷。動乱の地に押し寄せる大和の軍勢の前にひとりの荒蝦夷が立ちはだかった。その名は呰麻呂。彼が仕掛ける虚々実々の駆け引きの果て、激突の朝が迫る―。古代東北に繰り広げられる服わざるものたちの叙事詩。
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「まほろばの疾風(熊谷達也著)」と時代はかぶる
熊谷達也としては「アザマロ(呰麻呂)はアテルイ(阿弖流為)の父」という設定のようだ
こちらはアザマロが主人公
同じ作者だが
登場人物像が違っていたり
アザマロの死に様が違っていたり
する
筆者の中で蝦夷像が変わったらしい
他の作者の本も読まなきゃ偏るな・・・
と思う
内容は面白い
アザマロがカッコよく描かれている
--追伸--
「火怨(高橋克彦著)」の方が良い。
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この人は東北地方の作家で、東北にこだわった作品を書いております。
森三部作はかなり面白かったですし、短編集も味があってよかったです。
特に東北地方に広がる森の雰囲気や野生動物と対峙する緊張感なんか、いつもドキドキさせております。
で、今回の『荒蝦夷』。
これは平安時代の坂上田村麻呂の蝦夷討伐の前夜を書いた作品です。
同じ系列の作品で『まほろばの風』っていうのがありますが、これは坂上田村麻呂にやられる蝦夷の英雄アルティを主役にして書いているのですが、この『荒蝦夷』はアルティの父親のアザマロを主人公にして書いております。
同じような内容で同じような話なのですが、『荒蝦夷』のほうが好きですね。
内容も同じようなのですが、結構違ってきております。
『荒蝦夷』は蝦夷の大反乱が起こる前に終わっております。
両方の作品に共通しているのは、蝦夷と大和は別のものであるという認識です。
別のものだから差別みたいなものもないっているか、最初から違っているから違うものとして接しているっていうかんじですね。
そこで駆け引きとか争いとかが発生する、異文化同士の争いですね。
特にアザマロの残虐さを乾いた描写で書いているところはよかったです。
今度はアルティの反乱が終わった後に、この奥深い森林の中でどうなって奥州藤原氏の栄華に至ったのか、ってかんじの物語を書いて欲しいなぁ、と思います。
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名前や役職の漢字は読みにくかった。蝦夷国が出来るまでの話としては残酷に感じる描写もあるが楽しく読めたが、この1冊だけでは物足りない気がするのは「まほろばの疾風」を読めって事かなぁ?アテルイのエピソード1、エピソード0的作品で終わってる気がする。結局メンドイけど「まほろばの疾風」を読まんとアカンのやろなぁ。
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作者は知らなかったし、ぱっと開いたらエログロな処刑シーンだった。図書館ならそのまま戻すところだが、古本屋で歴史小説がそんなになかったこともあり、まあ取りあえずと購入した。
意外と、と言っては作者に失礼だが、意外と面白かった。
前半はちょっともたつく。
これは、私が地名人名を把握していないからというのもある。呰麻呂・・・かろうじて覚えているが、その他になってくると、炎立つとかそこら辺で出てきたなあ、というぐらい。インパクトがあるから覚えているぐらいなもので。
後半からかなり面白くなってくる。
それと同時に、作者の切り口が生きてくる。謀略や打算がうずまき、面白い。この話の蝦夷は、「自然と共生する高貴な野蛮人」でも「支配に抵抗する気高い自然人」でもない。野蛮でこすくて凄みがある。
解説が佐藤賢一で、さもありなんという感じだった。
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どうも主人公の残虐さ非情さについて行けませんでした。
余興の勝負で自分の娘が殺されるのを平気で見ている。戦いの最中に食料が不足すれば、関係の無い蝦夷の部落を襲い皆殺し(実はさらに・・・)にしてしまう。そこに「志」のようなものが有ればまだしもだけど、自分の勢力を伸ばすことが目的のように書かれている。
しかも、権謀術策が多く、登場人物たちが相手を如何に出し抜くかが物語の中心を占めている。
物語としての力はあると思う。しかし、どうも後味が悪い。
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古代東北史・蝦夷史のターニングポイントとなった780年の「伊治呰麻呂の反乱」に至る過程を描いた歴史小説。主人公の呰麻呂の残虐で野性的なキャラクターに綺麗ごとでないスケールの大きさを感じるか、単なる野蛮さを感じるかで評価は割れよう。史料不在で不明なところを大胆な仮想で埋めたり、明らかな史実改変を行っているので、注意が必要である。
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歴史物だが特別知識が必要ということもなく、分かりにくい言い回しもなく、引っ掛かることなくスイスイ読める。非道に見える呰麻呂の人間味が読み進めていくごとに顕になって、とても魅力的な人物だった。
荒蝦夷とは繋がった話ではないとあとがきにもあったが、阿弖流為が主人公の「まほろばの疾風」も読んでみたいと思った。
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なかなかに知識が乏しく、ネットで調べながらの読破でしたが、読みやすい文体でした。
もともと、その土地に住む者と支配したい者。
戦国時代より生々しい、戦いというより殺し合い、力で奪い合う時代を感じました。
朝廷との時代背景が 今一つ掴めず難儀しましたが、特に、阿弖流為と田村麻呂が出てきた辺りから、俄然面白くなり、しかも、この二人の描写がカッコ良く、グイグイと引き込まれました。
最後は、新たな未来を感じさせる終わり方で、とても良かったです。