紙の本
ルソーの感情主義哲学を率直に吐露した「サヴォワ助任司祭の信仰告白」を含む四編を収録!
2016/08/29 09:22
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ルソーのあまりにも有名な教育書『エミール』の中編です。ここには、人間は立派な者として生まれるが、社会を堕落させる、という根本命題に立って理想的な自然教育の原理が述べられています。その意味で、本書は、ルソー自らの哲学・宗教・教育・道徳・社会観の一切を盛り込んだと言えるでしょう。また、本書には、彼の感情主義哲学を吐露したと言われる「サヴォワ助任司祭の信仰告白」が収録されています。
紙の本
ルソーが言いたいこと
2003/06/25 05:18
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:濱本 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
エミール(中)は、エミールへの15歳からの生き方について記している。本書は、内容的に3つに分かれていた。最初は、人生の嵐、「性への目覚め」である。この誰でもが通過する思春期を「情念の嵐」という表現を使っていたのに同感した。続いて、「神」の捕らえ方。ここの記述は、大いに同感出来、ルソーの神の理解と私の理解は共通していると感じた。この部分から「エミール」が名書とされている理由が理解出来た気がする。3つめは、あまり分からなかったのだが、「趣味」に関する記述が続いていた。私は、趣味に関しては、存分に楽しんでいると自負しているが、ここの記述に感銘出来なかったという事は、「趣味」に関してルソーと私の考えには相違があるのかも知れない。しかし、「趣味」を通じての「幸福」の感じ方は同感出来たので、「幸福」という認識の持ち方は、共通しているものと思う。
「幸福感」について3つの格率が記されているので記載しておく。
・第一の格率:人間の心は自分よりも幸福な人の地位に自分をおいて考えるこ
とは出来ない。自分よりもあわれな人の地位に自分をおいて
考えることが出来るだけである。
・第二の格率:人はただ自分もまぬがれないと考えている他人の不幸だけを哀
れむ。
「不幸を知っていればこそ不幸なかたをお助けしたいと思うの
です。」
・第三の格率:他人の不幸にたいして感じる同情は、その不幸の大小ではなく
その不幸に悩んでいる人が感じていると思われる感情に左右
される。
いずれも同感出来る記述である。
神は、人間が自分で選択して、悪い事ではなく良い事をするように、人間を自由なものにしたのだ。自由を悪用する余地を残しているとしても、それは全体の秩序を混乱させる事はない。悪いことをするのを止めてくれないから、と神に愚痴をこぼすのは、神が人間をすぐれた本性を持つ者としたこと、人間を高貴な者とする道徳性を人間の行動に与えていること、美徳に対する権利をあたえている事、そういう事に愚痴をこぼすことだ。全く真理の記述と思う。この一分を読み、本当の意味で理解出来れば、これだけで、本書を読んだ意味がある。
ヨーロッパには、三つの主な宗教がみられる。その一つは、ただ一つの啓示を認め、もう一つは、二つの啓示を認め、更にもう一つは、三つの啓示を認めている。その一つ一つはいずれもほかの二つを憎み、呪い、盲目、頑固、頑迷、嘘吐きなどという言葉で罵っている。ただ一つの啓示をみとめている宗教は、一番古くて、いちばん確実であるように見える。三つの啓示を認めている宗教は、一番新しくて、一番筋が通っているように見える。二つの啓示を認め、第三の啓示を否認している宗教は、一番優れているのかもしれないが、これに対しては、たしかにあらゆる偏見がもたれ、その矛盾は一見して分かる。お分かりのように、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教について正しい認識で記述している。更に記述は進むが、長くなるので割愛する。
この後も宗教に関する正しい認識(唯一つの宗教が正しいと認識出来る為には、一生を費やして世界中を旅し、あらゆる宗教を研究した後でなければ分からない)を記述している。私の考えと同じだ。世界中に存在するあらゆる宗教は、川の如く、いずれも海(神)に流れ着くのである。これが、私の宗教に関する信念である。この点もルソーの認識と一致していると思う。
エミール(中)は、主として神(宗教)に関する記述が圧巻であると思う。是非、多くの人に読んでもらい、持つべき宗教感というものを理解して欲しいものだ。
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人間は立派な者として生まれるが社会が彼を堕落させる、という根本命題に立って理想的な自然教育の原理を述べたこの書物に、ルソーは自らの哲学・宗教・教育・道徳・社会観の一切を盛りこんだ。本巻は、その哲学篇で、ルソーの感情主義哲学を率直に吐露したものとして殊のほか有名な「サヴォワ助任司祭の信仰告白」を含む第四篇を収める。
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素朴とか、そういう話ではなくて、東京とかいう街で、且つ自分の父親が教育者として育てられていた中で、こんなもん読んでも何の為にもならないし、自分の父に失望した。
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思春期のエミール。避けられない情念をどのように教育するか。
ソフィーという架空の伴侶を未来に想定する。
そうすることで、道草を食ったり、誘惑を受けたりすることが無い。
それにしても、文庫本は字も小さいし、話の区切りが無いから辛い。
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いよいよ中巻まで進んだ。この巻では、主に恋愛と官能・宗教について述べられていたように思う。恋愛と官能については、官能的なものをルソーは敵視しているようだが、僕の意見としては自然に育てるのならば官能的なものも自然に取り入れればいいのにと感じた。人工的・都市的な官能を敵視しているようだが、そもそも官能は都市的で人工的なもののように思う。官能的な要素をなくして、恋愛はないように思うのだが、この巻の最後に出てきたソフィーが下巻でどのような様子を見せてくれるかに注目したい。次に宗教についてだが、最初は神や預言者を否定しているような感じで文章が進められていたので、こんな本がキリスト教圏で許されていいのかなと疑問を感じたが、その後ルソーがそのようなことを言っているのではないと言うことが見えてきたが、ルソーが宗教に関して何を言いたいのかは難しくてよく分からなかった。
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烏兎の庭 庭師 1991年1月
http://www5e.biglobe.ne.jp/~utouto/uto01/yoko/rousseauy.html
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ルソーのエミールの第四編を収録する中巻。
上巻では十五歳までの少年を取り扱っていたが、この巻ではその先二十歳すぎぐらいまでの、思春期の青年に対する教育が考えられる。そこでは恋愛、宗教、道徳が問題となる。
自然教育、自然宗教などと、とみに自然がテーマになるルソーだが、その自然の教え、導き、良心などというものとはなんなのかということも明らかになってくる。その地点からの近代社会批判は感動的ですらある。
子供をのびのび育て、強い子に育てるというような、やや牧歌的ですらある上巻までの視界からは打って変わって、社会と人間という関係を教育という地平から広く見渡した第四編(中巻)はルソーの珠玉の哲学論とも言うべき一編である。
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本から
・人間を本質的に善良にするのは、多くの欲望を持たないこと、
そして、自分をあまり他人にくらべてみないことだ。
人間を本質的に邪悪にするのは、多くの欲望をもつこと、
そしてやたらに人々の意見を気にすることだ。
・人間を社会的にするのは彼の弱さだ。私達の心に人間愛を
感じさせるのは私達に共通のみじめさなのだ。(略)
こうして私たちの弱さそのものから私達のはかない幸福が
生まれてくる。本当に幸福な存在は孤独な存在だ。
神だけが絶対的な幸福を楽しんでいる。
・教師よ。言葉を少な目にするがよい。しかし、場所、時、人物を
選ぶことを学ぶがいい。そしてあなたの教訓を全て実例に
よって与えるのだ。そうすれば効果は確実だと思ってよい。
・「あれ程言っておいたのに・・・・」 この言葉以上に能のない
言葉を私は知らない。
・私は、人間精神の無力が人々の考えのあの驚くべき多様性の
第一の原因であること、そして、傲慢が第二の原因である
ことを理解した。
・よき若者よ、真面目であれ、真実であれ。しかし、傲慢な心を
もつな。無知でいられるようになるがいい。そうすればあなたは、
あなた自身も他の人もだますようなことはしまい。
・学者というものは一般人の考え方を軽蔑する。それぞれ独自の
考えをもとうとする。盲信的な信心は狂信に導くが、傲慢な
哲学は反宗教に導く。こういう極端を避けることだ。
心理への道、あるいはあなたの心を素直にして考える時、
そう思われる道に、いつも踏みとどまるがいい。虚栄心や
弱さのためにそこから遠ざかるようなことがあってはなるまい。
哲学者たちのところでは大胆に神を認め、不寛容な人々に
向かっては大胆に人間愛を説くのだ。(略)
本当のことを言い、よいことをするのだ。人間にとって大切な
ことはこの地上における義務を果たすことことだ。そして、
わが子よ、個々の利害は私達をだます。正しい人の希望を
だけがだますようなことをしない。
・排他的な楽しみは楽しみを殺す。本当の楽しみは民衆と
分け合う楽しみだ。自分一人で楽しみたいと思うことは、
楽しみでなくなる。
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宗教と哲学。
海外では宗教がすごく大切で大切でしょーがない、という価値観だと思っていた。それなのにこの本では信仰は大切にしているものの、エミールに子どもの頃から宗教を与えないで、選ばせているのに驚いた。
無償であればこそ贈り物にははかりしれないねうちがあるのだ。人の心は自分の掟のほかには掟を認めない。人の心はつなぎとめようとすればはなれていき、自由にさせておけばつなぎとめられる。
ここ、好き。
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『エミール』のうち、非常に有名なパート「サヴォアの助任司祭の信仰告白」を含む第4編を収録している。さきの三編では、自然の事物を知ることが問題であったが、第4編では社会関係のうちでいかに生きるべきかが問題となる。ルソーは、サヴォアの助任司祭の口を借りて、自然にいかなる意味を見出すか、良心とは何か、宗教にはどのような態度をとるべきかといった哲学でよく争われるテーマを一挙に語りだす。ルソーはすべての規準を良心に見出し、これは感情であるとされるが、もちろん社会関係のなかで形成される通常の感情とは異なる。むしろ、通常の感情から「自然」に由来しないものをすべて捨象した、純化された「感情」である。おそらくこの点が、『社会契約論』における「一般意志」とのつながりないし同一視を考えさせる契機となっている。
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カテゴリ:図書館企画展示
2013年度第2回図書館企画展示
「大学生に読んでほしい本」 第2弾!
本学教員から本学学生の皆さんに「ぜひ学生時代に読んでほしい!」という図書の推薦に係る展示です。
仲居宏二教授(歴史社会学科/国際交流)からのおすすめ図書を展示しました。
開催期間:2013年6月18日(火) ~2013年9月30日(月)【終了しました】
開催場所:図書館第1ゲート入口すぐ、雑誌閲覧室前の展示スペース
『万物をつくる者の手をはなれるときすべてはよいものであるが、人間の手にうつるとすべてが悪くなる。』という有名な書き出しで始まるルソーのエミール、教育哲学書、児童教育書などとして読まれていますが、学生時代にはむしろ世界や自然を考えるガイダンスのように読みました。
書棚からすっかりセピア色に変色した文庫本を取り出しました。鉛筆で線を引きながら読んだ形跡があり懐かしく思い出しました。
僕の学生時代は政治的にも、経済的にも社会が大きく変化している時、何か指針となるものを欲し、確固とした考え方を持ちたいと思っていた時に出会った本です。まるで小説を読むように夢中でページをめくったことを記憶しています。
“自然に帰れ”などのフレーズは今でも使われています。200年前に書かれたものですが、逆説的な言い方の奥の意味を考える良いテキストでした。
さまざまなヒントが沢山含まれています。自信を持って推薦いたします。
第一巻だけでも読んでみてください。
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「教育の思想と歴史」では、
「2007年10月4日第65刷改版以降」を使います。旧版だとページがちがうので、理解の重大な障害になります。
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共通教育科目「教育の思想と歴史」でテキスト指定。プラトン『パイドロス』を読んだあと読んで、そのあとマルクス『資本論』(新日本出版社新書版第3分冊)にすすみました。1回、オンデマンドにしたのでご批判下さい。
『資本論』解説動画(57分)
https://youtu.be/RaLwv3vxTJk
レジュメ http://kodomo.kitanagoya.org/2014z2/img/499.pdf
(20200817追記)
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「エミール(中)」ルソー著・今野一雄訳、岩波文庫、1963.07.16
341p ¥300 (2021.02.19読了)(2021.02.07借入)(1973.11.20/15刷)
全三巻の二巻目になります。上巻同様読むのにだいぶ苦戦しております。内容の理解よりは、先に進めることを優先した感じです。
書き出しから、人生の短さを嘆いています。
「死の瞬間が誕生の瞬間からどれほど遠く離れていたところでだめだ。その間にある時が充実していなければ、人生はやっぱりあまりにも短いことになる。」(5頁)
その後、子供が大人に変わってゆく間に必要な教育について述べています。思春期あたりからでしょうか?
・情念について(性教育、思いやり、家庭環境)
・歴史教育について
・寓話について
・宗教・神について
キリスト教が他の宗教に比べて、優位であることを認めていない書き方なので、この辺がキリスト教団体の不興を買って「エミール」が発禁処分になり、ルソーが教会から追われる身になったのでしょうか?
・趣味について
「趣味とは最も多くの人を喜ばせたり不快にしたりするものを判断する能力にほかならないのだ。」(277頁)
・都会と田舎について
【目次】
第四編
原注
訳注
☆関連図書(既読)
「エミール(上)」ルソー著・今野一雄訳、岩波文庫、1962.05.16
「社会契約論」ルソー著・桑原武夫訳、岩波文庫、1954.12.25
「孤独な散歩者の夢想」ルソー著・今野一雄訳、ワイド版岩波文庫、1991.01.24
「ルソー『エミール』」西研著、NHK出版、2016.06.01
「読書の学校・ルソー『社会契約論』」苫野一徳著、NHK出版、2020.12.30
(2021年2月21日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
人間は立派な者として生まれるが社会が彼を堕落させる、という根本命題に立って理想的な自然教育の原理を述べたこの書物に、ルソーは自らの哲学・宗教・教育・道徳・社会観の一切を盛りこんだ。本巻は、その哲学篇で、ルソーの感情主義哲学を率直に吐露したものとして殊のほか有名な「サヴォワ助任司祭の信仰告白」を含む第四篇を収める。