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- カテゴリ:一般
- 発売日:2008/03/01
- 出版社: 早川書房
- レーベル: ハヤカワ・ミステリ文庫
- サイズ:16cm/453p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-15-177601-4
紙の本
あなたに不利な証拠として (ハヤカワ・ミステリ文庫)
著者 ローリー・リン・ドラモンド (著),駒月 雅子 (訳)
警官志望のキャシーが助けを求める女性のもとに赴いた時、その胸にはナイフが突き刺さっていた。彼女はレイプ未遂犯の仕業だと主張するが、刑事は彼女の自作自演と断定した。だが6年...
あなたに不利な証拠として (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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商品説明
警官志望のキャシーが助けを求める女性のもとに赴いた時、その胸にはナイフが突き刺さっていた。彼女はレイプ未遂犯の仕業だと主張するが、刑事は彼女の自作自演と断定した。だが6年後、事件は新たな展開を見せる。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀短篇賞を受賞した「傷痕」をはじめ、一人の男を射殺した巡査の苦悩を切々と描く「完全」など、5人の女性警官を主人公にした魂を揺さぶる10篇を収録。大反響を呼んだ傑作集。【「BOOK」データベースの商品解説】
【テキサス作家協会ヴァイオレット・クラウン賞】【テキサス文芸協会ジェシー・ジョーンズ賞】【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
完全 | 17−36 | |
---|---|---|
味、感触、視覚、音、匂い | 37−65 | |
キャサリンへの挽歌 | 67−108 |
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紙の本
純文学
2019/07/25 00:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Yo - この投稿者のレビュー一覧を見る
女性警察官を主人公にした短編集。内外でミステリの賞を獲っているし、レーベルもポケミスなのだが、読み味は純文学に近く、謎解きやスリリングな展開よりも、登場人物の心の機微や描写の力で魅せる小説だ。二人称視点だったり、時制が入り組んでいたり、なかなか技巧的である。
殺人や交通事故の様子が微に入り細にわたって描かれるので、生々しさに「うわ……」となる場面もあるが、そういうところも含めて命の手触りが伝わってくる小説だった。
紙の本
女性警察官5人の、人生の断片。
2016/07/03 17:31
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
これも「今更読みますか」の感のある、かなり前に話題になったベストセラー。 私はタイトルだけで、作者をヒラリー・ウォーと勘違いしてました・・・。 だって『失踪当時の服装は』・『この町の誰かが』・『事件当夜は雨』の流れだと思っても変じゃないでしょ。
でも、あの、これって、ミステリというより「文学」なんじゃないですかね?
ホルダーに差した拳銃がいつも同じところにあたり、皮膚のあざが黒ずんでくる、といった日常的な描写でガツンとやられました。 警察官として現場に出ることで、彼女たちは毎日心も身体もすり減らしている、つまりほとんどの女性警官は。
『キャサリンへの挽歌』がいちばん衝撃的でした。 「人生に影響を与える傑作」という評判も頷ける、強力作品。 ただ後半はちょっと。 私は前半の方が好き。
紙の本
これは小説です。
2009/08/04 00:47
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る
数年前に見た絶賛する書評で、書名をおぼえていた。そして、帯には「このミステリーがすごい! 第1位」の文字が。「これは、ちょうどいい気分転換になるのでは」と感じて、気軽に手に取った。どうやら、女性警官が主人公だそうだ。なら、軽やかな物語だろう、・・・などといった先入観を吹き飛ばしてくれる小説だった。
5人の女性警官を主人公に、10の連作短編が紡がれる。ミステリーということになっているので、筋の詳細は紹介しない方が礼儀だろう。ただ、謎解きよりも、物語の世界そのものを味わってもらいたい。ミステリー、というよりフィクション全般において、警察ものにはある種のイメージがあるといってよい。だいたい、劇的な事件があり、劇的な人物がいないと物語をつくりにくいのはよくわかる。しかし、本作の主人公たちは、警察の中でも、パトロールなど「ごくふつう」の業務に従事する。その細部にわたるリアリティは、作者が元警官だったことにも由来しよう。
しかし、本作の主眼はリアリティにあるというわけでもない。かといって彼女たちの葛藤する内面が焦点かというと、そうとも言いにくい。比喩的に表現するならば、彼女たちが日々に身につけている、防弾チョッキ、手錠、警棒、銃、懐中電灯、バッジといったの物そのものの物理的な重みを描いている、といえようか。
ここに出てくる警官たちは、ドラマや映画で見る刑事や警官の軽やかさに比べて、なんと中途半端な重みを身にまとっていることかと感じる。しかし、たいていのひとは、そんな中途半端な重みを引きずりながら生きているのではないだろうか。そういう意味で、本書は普遍的な物語を描いた小説なのでもある。
紙の本
「あなたに不利な証拠として」このミステリーがすごい2007年・第1位の実力は? 絶賛にはもうひとつ
2008/05/06 11:24
5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:soramove - この投稿者のレビュー一覧を見る
評論家としてよく紙面で目にする
池上冬樹さんが絶賛としかいいようのない
ベタほめだったことから
迷わず購入。
5人の警官、元警官を主人公にした短編、
警官をしているということで
避けられない拳銃を使うことや
人を殺してしまうこと、
そして女性であること。
心理描写は評論家がほめるだけあって
ブレなくその痛みが伝わる、
でも読み終えて思った、
これって「ミステリー」に分類されるのだろうか。
ミステリーの枠からはみ出したような作品だからこそ
そこに何かに捕らわれないものを
見出して、スゴイなとも感じるのだけど、
やはり自分にとっては物足りなかった。
どの主人公も長編の主人公にも
なりえる深く掘り下げた人物描写だけれど
やはりそこにはミステリーの対象たる「事件」や
強靭な「悪」も見せて欲しいのだ。
海外翻訳ものの短編を読むつもりなら
かなり楽しめるけれど
「さあ、極上ミステリーを読むぞ」と意気込むと
それはちょっと当てが外れることになりそうだ。
★100点満点で70点・文学作品というなら分かるけど
ミステリー的な部分はあまりに少ない気がする★
http://yaplog.jp/sora2001/
紙の本
元警察官が描く、理不尽な現実と対峙し懊悩する、生身の人間の姿
2008/03/16 00:43
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐吉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
五人の女性警察官を主人公に据え、(一編を除いて)その一人ひとりを語り手に、日常と呼ぶにはあまりにも過酷な、彼女たちの警察官としての日々を、内省的に、しかし冷徹に綴った連作短編集である。
著者のローリー・リン・ドラモンドは、かつて実際にルイジアナ州バトンルージュ市警に勤務した元警察官である。ドラモンドは交通事故によって職を辞した後、大学でクリエイティブ・ライティングを学び、十二年の歳月をかけ、この処女短編集を書き上げたという。この中の一編『傷痕』によって、彼女はMWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞最優秀短篇賞を受賞している。
原題を『Anything You Say Can and Will Be Used Against You』という。アメリカで法執行官が被疑者を逮捕する際、被疑者に通告することが義務付けられている「ミランダ警告」という条文の一節である。映画やドラマなどで耳にしたことのある方も多いだろう、被疑者の権利の保護を謳ったこの文言は、アメリカの警察官にとって、それを告知することを「Miranda-ize(本書では「ミランダする」と訳されている)」と一語で言い表すほど日常的かつ形式的な、云わばお約束である。この杓子定規なフレーズが、絶対的で融通のきかない組織の建前と、凄惨な事件現場、凶悪な犯罪者、そしてときに自らの生命の危機に直面する生身の人間の心情とのジレンマを象徴するかのように、作品全体に低く、重く、アイロニカルに響いている。
警察小説としてハヤカワ・ミステリ文庫から刊行されているが、本書は謎解きの妙を楽しむミステリでもなければ、スリリングなサスペンスに満ちたアクション小説でもない。そういった期待を抱いて、つまり何らかのカタルシスを得ることを期待して本書を開いた読者は、きっと肩透かしを喰らうだろう。この作品には、難事件を解決する名刑事も、超人的な活躍をするスーパーヒーローも登場しない。あるのはただ困難で過酷な、ときに理不尽な現実と対峙し懊悩する、生身の人間の姿のみである。
職務中に襲いかかってきた強盗犯を射殺したキャサリン。同じ警察官である夫の殉職に立会いながら気丈に職務を遂行するその後の彼女。交通課の警察官として様々な事故現場に遭遇し、自らもまた職務中の事故によって辞職したリズ。家庭を省みなかった父と同じ職場に就き、緊迫した状況の最中、彼に殺意を抱くモナ。暴漢に刺されながら自作自演の疑いをかけられた被害者に胸を痛めるキャシー。そして事件現場での思わぬ出来事によって職務放棄してしまうサラ。
ドラモンドは、抑制の効いた端正な筆致で、圧倒的なリアリズムをもって、警察官の日常を精緻に描く。そしてそれは執拗なまでに読者の五感を刺激する。周囲には胸が悪くなるような死臭が漂い、読者は我が身に直接痛みを感じるに違いない。彼女らが独白する苦痛や恐怖や葛藤は、そうして積み重ねられるディテールによってさらに鮮烈なものとなり、読む者の心に深く共鳴する。読者はいつしか、自分自身が彼女たちと同じ場所に立っていることに気づくだろう。
余談になるが、かつて本書が単行本で出版された際、その帯には書評家池上冬樹氏の「読みながら何度も心が震えた」というコメントが踊っていた。朝日新聞に掲載された彼の書評からの引用である。この作品が、比較的読者層の限られた「ハヤカワ・ポケット・ミステリ」の一冊として上梓されながら、広範な読者を獲得したのは、池上氏をはじめ多数の評論家がこの作品を絶賛したことに多くを負っていると聞く。そうして本書がジャンル小説の枠にとどまらず、数多の読者の目にとまったことは、本書にとってはもちろん、それぞれの読者にとっても幸いなことだったといえるだろう。