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薪の結婚 (創元推理文庫)
想い出に値する出来事があるたびに木片を拾う。人生が終わりを迎えるとき、それを薪にして火を熾す—“薪の結婚”。教えてくれたのは最愛の人。彼と住むこの館ですべては起きた。死亡...
薪の結婚 (創元推理文庫)
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商品説明
想い出に値する出来事があるたびに木片を拾う。人生が終わりを迎えるとき、それを薪にして火を熾す—“薪の結婚”。教えてくれたのは最愛の人。彼と住むこの館ですべては起きた。死亡した恋人の来訪、いるはずのない子どもたちの笑い声、知り得なかったわたしの“罪”。罪と罰、そして贖いの物語は、あらゆる想像を凌駕する結末を迎える。鬼才キャロルにのみ許された超絶技巧。【「BOOK」データベースの商品解説】
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紙の本
ヴァンパイアが血を好むとは限らない
2008/05/06 15:08
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:峰形 五介 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ジョナサン・キャロルが吸血鬼譚を書いた」と聞けば、キャロルの愛読者は戸惑うだろう。現実と非現実が交錯するダークファンタジーばかり書いてきたキャロルだが、吸血鬼というのは彼の作風に似つかわしくない。
しかし、本当のことだ。この『薪の結婚』は吸血鬼の物語。
舞台となるのはクレインズ・ヴュー。そう、前作『蜂の巣にキス』で殺人事件が起きた町である。超自然的な要素が含まれていなかった(それでもキャロルらしさは失われていなかったが)前作と違って、今回はありえないこと/あってはならないことが次々と主人公ミランダ・ロマナクの身に降りかかる。そして、悪夢が最高潮に達したところでミランダは知る。ある人物がヴァンパイアであることを。
ヴァンパイアと言っても、血を吸ったりしないし、棺桶で眠ることもないし、蝙蝠や狼に変身するわけでもない。にもかかわらず、その人物は憎しみと蔑みを込めて「ヴァンパイア」と呼ばれる。他者のものを奪い、騙し取り、吸い尽くし、利用するだけ利用して捨て去る――そんなことを繰り返して生き続けてきた利己的な存在だからだ。しかも、厄介なことに当人にはヴァンパイアの自覚がない。当人だけでなく、読者も最初のうちは気付かないだろう。キャロルの作品ではおなじみの「好感の持てる人物と思いきや、その正体はとても邪悪なもので……」というショッキングな罠が本作にも仕掛けられているというわけだ。
とはいえ、読者(と主人公)にショックを与えただけでは終わらない。ヴァンパイアの正体が暴かれた後も物語は続く。そこで描かれるのはヴァンパイアの恐怖ではなく、贖罪である。
訳者のあとがきによると、次回作の舞台もクレインズ・ヴューであり、前作と本作に登場した警察署長のフラニーが主役を務めるのだという。実に楽しみだ。悪夢に翻弄されるであろうフラニーには同情を禁じ得ないが……。