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紙の本
不平等国家中国 自己否定した社会主義のゆくえ (中公新書)
著者 園田 茂人 (著)
【アジア・太平洋賞(第20回)】社会主義体制への市場経済導入、共産党員優遇によって、他の国々とは違った独特の格差・不平等を生み出した中国。その将来は−。著者独自の長年にわ...
不平等国家中国 自己否定した社会主義のゆくえ (中公新書)
不平等国家 中国 自己否定した社会主義のゆくえ
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商品説明
【アジア・太平洋賞(第20回)】社会主義体制への市場経済導入、共産党員優遇によって、他の国々とは違った独特の格差・不平等を生み出した中国。その将来は−。著者独自の長年にわたる調査やデータから、現在の中国社会を蝕む深刻な実状を明らかにする。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
園田 茂人
- 略歴
- 〈園田茂人〉1961年秋田県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程中退。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授。専門は中国社会論、比較社会学、アジア文化変容論。
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データは意外な中国像を浮かび上がらせる
2009/07/09 00:42
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
中国は感情的に語られるきらいがある。それは、中国の日本に対する態度に、ときおり理性を欠いたものを見せられるからかもしれない。例えば、サッカー日本代表の試合における大ブーイング、日本大使館への投石行動など。
だからといって、日本が理性を欠いていいわけはなく、ここは事態を冷静に分析するのが文化国家のあり方だろう。
といっても、メディアの取材が思うようにできないこともあり、情報は漏れ伝わってくるようにして出てくるのが一般的だ。四川大地震、チベット独立運動など。したがって、よほど信頼のおける情報源を得なくては、中国という国を捉え損なってしまうおそれがある。2009年中にもGDPが日本を追い越すと見られている国だというのに。
そんなときに、本書は徹底したデータ主義に基づいて分析をおこなっている。多量のグラフを用い、そこから読みとれることを読者に提示する。このような本もめずらしい。著者自身、広大な農村部での調査が十分ではないと断りつつ、できる限りの調査データを活用している。
そのデータは、中国について、意外な実像を浮かび上がらせていく。近隣諸国との比較対照もなされているので、なおさら興味深い。
中国では、収入の格差が大きいと言われており、本書でも、その点は確認される。中国社会で是正されるべき項目として、多くの中国人が指摘しているので、意外感はない。
ただし、収入格差をもたらしている高学歴については、肯定的に捉えられている。むしろ、教育の機能に、「人間性を豊かにする」をあげる日本人の素朴さがほほえましく感じられる。中国では、教育の機能に「収入を増やせる」という功利主義的な見方をしているからだ。
あるいは、農村部から都市部に出稼ぎにくる人々の増大が、社会を不安定にさせるという見方をしている日本人は多い。しかし、調査によると、もとからの都市住民よりも、農民工の方が、都市部での生活への満足度が高いという結果が出ている。これは意外だ。農村での暮らしに比べば、豊かになったということで満足度が高くなるのだろう。
また、ある程度豊かになった中間層の増大が、民主化の要求につながり、体制の崩壊につながるという見方をされることがある。しかし、中国の人たちは、意外に現状肯定的で、言論の自由と引き替えにしてまで社会が不安定化するのを望んでいるわけではないこともデータが示す。
中国の人たちと一口に言っても、属する社会階層によって異なってくるので、結論を簡潔にまとめるのはむずかしい。思ったよりも複雑な思考形態を持っているのは確かである。中国に関心のある人は、一読しておいても損はないと思われる。