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商品説明
チベット動乱や四川大地震で揺れる中国。北京オリンピック後、中国経済の崩壊が始まるという説は本当なのか? 赤き大国の今後の動向と、日本への影響をシミュレーションする。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
門倉 貴史
- 略歴
- 〈門倉貴史〉1971年神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。BRICs経済研究所代表、作家として講演・執筆活動に専念。専門は日米経済、アジア経済、地下経済など。著書に「ワーキングプア」等。
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紙の本
北京五輪後の中国経済の行方は?
2008/11/09 09:57
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MtVictory - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年の北京五輪の前の5月に書かれた本。
現在の中国は「世界の成長センター」として高成長路線をひた走っている。しかし上海万博が終了した2011年以降の中国は、少子高齢化の進展、通貨人民元の切り上げ、所得格差の拡大など様々な問題で経済成長を妨げるだろうと著者は考えている。著者が言うまでもなく、いつかは高成長は鈍化するはずだ。本書では今後ますます経済大国に成長し世界経済の牽引役となると予想される中国の経済の行方を分析している。
第2章では五輪後の直近の中国経済について予測されるバラ色、灰色、暗黒の3つのシナリオを挙げている。
1つ目は景気の過熱とインフレ懸念に対して中国政策当局が行なってきた金融引き締め政策の効果が徐々に効き始め、正常なレベルに戻る、というシナリオ。それは中国向けの輸出に活路を見出そうとする日本にとっても良い。
2つ目は、サブプライムローン問題の深刻化で先進刻経済が減速、中国経済も失速するため政策当局が金融引き締めを解除、企業の投資活動が再び過熱。中国の輸出拡大で、世界がデフレに見舞われる、というもの。
3つ目は、政策当局の引き締め策解除が遅れ、バブルが崩壊し、中国経済が失速する、というもの。
五輪終了直後の現在の状況を見ると、2番目のシナリオに近いのではないか。五輪後も2009年に建国60周年祭、2010年に上海万博というビッグ・イベントが続くからインフラ整備のための投資は継続し、経済成長は続くだろう。成長する中国がよい緩衝材となって、その間に世界経済が持ち直せばベストなのだが・・。
中国を見ているとかつて日本が通ってきたのと似たような道を歩んでいる。それだけにある程度、予想がしやすい。既に高学歴化が進み、所得も伸びてコストメリットが失われつつあり、そろそろ製造業が中国本土から脱出し始めかねないところは、かつての日本と同じだ。しかし、日本よりもはるかに国土が広大で、人口も多く、他民族国家で、社会主義国家という違いもあり、全く同じパターンとはいかないだろう。大きな所得格差、食の安全性の問題、SARSや鳥インフルエンザ、手足口病などの衛生面のリスクなど独自の不安要因もある。本書ではそうした様々なリスクについても分析し、分かりやすくまとめられている。この本の性格上、経済面が主であり、軍事・安全保障問題などには触れられていない。
成長を続ける中国に脅威論なども聞こえるが、変に対立を煽るのではなく、スケールに劣る日本はそれに呑み込まれないよう、独立した国家としてうまく付き合っていかねばならない。日本の高度成長期は遠い昔となり、既に成熟期にあり、変化の激しい環境において、今後、日本が安定成長を続けるためのお手本となる国もモデルもなく、試行錯誤が続くだろう。結局、民間の力、日本国民の力で牽引していくしかない。日本の強みを更に伸ばして、中国など新興国に追いつかれないようにする。政府は脚を引っ張らないよう、しっかりサポートして欲しい。