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紙の本
新しい中国人 ネットで団結する若者たち (SB新書)
著者 山谷 剛史 (著)
中国の新世代愛国主義は、バーチャル世界で生まれた! 中国の若者の様々な行動をITの面から分析。中国のネット事情、IT事情を庶民レベルで俯瞰し、中国のリアルな現在の姿と、秘...
新しい中国人 ネットで団結する若者たち (SB新書)
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商品説明
中国の新世代愛国主義は、バーチャル世界で生まれた! 中国の若者の様々な行動をITの面から分析。中国のネット事情、IT事情を庶民レベルで俯瞰し、中国のリアルな現在の姿と、秘められた将来の可能性を紐解いていく。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
山谷 剛史
- 略歴
- 〈山谷剛史〉1976年東京都生まれ。ITライター。中国のITニュースサイト『PCPOP』で、中国人読者に向けて日本のIT事情を紹介する連載「中日IT文化差異専欄」を持つ。
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紙の本
もう新興国という捉え方ではすまない国になりつつある中国
2009/08/12 20:26
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
『新しい中国人』とは書名が大げさな。サブタイトルの「ネットで団結する若者たち」を見落としてはいけない。「どんな中国人が登場したのか」と勘違いするではないか。「中国発 インターネット最新事情」あたりが妥当かもしれない。
書名はともかく、中国のネット事情に詳しい著者による、すぐれた現代中国案内になっている。思えば、大陸だけで13億人以上もいる中国のことだから、無視できない巨大市場がそこに成立していることになる。その動向を知ることは、今後、ビジネス展開するのに欠かせない視点だろう。
ところが、その割に、私たちは中国の実情に疎いのではないだろうか。日本のメディアからは、中国の姿がいまひとつ伝わり切らない気がする。
一方の中国のネット世代は、日本のことにとても関心が深い。秋葉原を訪問した中国人がつぶさに日本で見聞きしたことをネットメディアにあげる。PC製品やデジカメなどの新製品情報や価格推移も逐一伝えられる。
日本でもネット世代は概して若いが、中国のそれははっきり若者層と言えるほどらしい。40代、50代から上の中高年層でネットに関心を持つ中国人は少ないとある。
そうなると、PCや関連製品の価格はネット世代にはかなり高価なものになる。彼らの購買の基準は月収の何ヶ月分か、という発想になる。したがって製品価格には敏感だ。そして、ソフトウェアならば、当たり前のように海賊版で済ませてしまおうとする。ソフトウェアは、日本円で数百円にまで下がらなければ、購入にまで至らないようだ。
当然、海外のすぐれたものをそっくり真似た製品やサービスがすぐさま登場する。グーグルの中国版は当然。「百度(Baidu)」という検索サイトの名は日本でもそれなりに知られている。
ほかにも、YouTube、ミクシー、任天堂のゲーム機、Wikipedia・・、何でもありだ。中国のコピー商品のことが時折、日本でも報道されるが、その模倣たるや半端なものではない。コピー文化という言葉が本書には登場するが、確かに、そう形容せざるを得ない状況だ。
日本で書かれた中国人好みの記事など、あっという間に中国語に翻訳されて、写真もろとも、中国のサイトに登場する。しかも、中国内で、どんどん転載されていく。もちろん許可など得ずに。
もうひとつ注目しておきたいのは、中国の人たちの合理主義だろう。白物家電など、価格相応の品質で納得できるものならば、中国製を買いもする。しかし、デジカメのように品質が決定的な意味を持つ品物になると、中国製には手を出さない。キャノン、ソニーなどの日本勢とコダックという海外輸入品が上位を占める。表向きはかなり愛国的な人たちだが、シビアに現実を捉えてもいるのだ。
愛国教育を受けている中国の若者層だけに、歴史や政治がらみの話題には反日的なコメントがあふれる。実際には、日本のハイテク製品やアニメなどを通じて、かなり日本に慣れ親しんでいるのだが、親日的なコメントをすれば、かなり手痛い反論にあうようだ。こうしたところは、何とか解決しなくてはいけないだろう。
近くて遠い国という表現は、最近、あまり見かけなくなったが、中国については、いまでも当てはまるのではないだろうか。物真似が多いにせよ何にせよ、これだけ中華文化圏が成長しているというのに、基本的なところから我々は彼の国の事情を知らなさすぎると感じた。
メールはあまりやらないが、チャットはとても盛んな国。こんなことも知らずにいた。PCを自宅に持てないならば、ネットカフェの利用が欠かせない。よく利用するチャットソフトは広東省の企業がリリースする「QQ」だという。海外のサービスとは隔絶した世界がそこにはある。QQのサイトではいろいろな付帯サービスがあり、著者の推計では1億6千万人が利用しているという。これだけで、日本の総人口を上回っているではないか。
新興国という捉え方からそろそろ踏み出して、彼の国のことをもっと深く理解すべきときが来ていると思わずにはいられなかった。