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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2008.9
- 出版社: 角川書店
- サイズ:20cm/286p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-04-791613-5
紙の本
犯罪王カームジン あるいは世界一の大ぼら吹き
あっと驚く方法でペテン師をぎゃふんと言わせ、卑劣な恐喝者を完全犯罪で闇に葬り、芸術的犯行で大金をかすめとっては、幽霊とわたりあう。これが、全部本当の話なら、彼は当代きって...
犯罪王カームジン あるいは世界一の大ぼら吹き
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商品説明
あっと驚く方法でペテン師をぎゃふんと言わせ、卑劣な恐喝者を完全犯罪で闇に葬り、芸術的犯行で大金をかすめとっては、幽霊とわたりあう。これが、全部本当の話なら、彼は当代きっての犯罪王!信じるも、信じないもあなた次第。さあ、カームジンの華麗な冒険譚をお楽しみあれ。日本版ボーナストラックとして「埋もれた予言」「イノシシの幸運日」の2篇を収録。イギリス首相チャーチルも愛読したと言われるユーモア・ミステリの傑作。『壜の中の手記』で日本中の話題をさらったカーシュの愛すべき作品集が、ついに登場。【「BOOK」データベースの商品解説】
あっと驚く方法でペテン師をぎゃふんと言わせ、卑劣な恐喝者を完全犯罪で闇に葬り、芸術的犯行で大金をかすめとっては、幽霊とわたりあう。当代きっての犯罪王カームジンの華麗な冒険譚。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
カームジンの銀行泥棒 | 6−13 | |
---|---|---|
カームジンとガスメーター | 14−21 | |
カームジンの偽札づくり | 22−32 |
著者紹介
ジェラルド・カーシュ
- 略歴
- 〈ジェラルド・カーシュ〉1911〜68年。イギリスの小説家。ミステリ、都会小説、SF、怪奇小説など幅広いジャンルにまたがる作品を発表した。著書に「壜の中の手記」「廃墟の歌声」など。
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紙の本
チャカポコな中年男のキャラクター「カームジン」が語って聞かせる、まさかまさかの犯罪の数々。奇想作家カーシュが造形し、チャーチル他、著名人の愛読者も多かったという稀代のはったり男のとっておき話に声立てて笑おう。
2008/10/26 17:21
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
いやー、愉快、愉快。期待をはるかに上回る愉快な本だ、カームジンは……。
まず何といっても、この名前が良い。いかにもうさん臭そうで、何をかましてくれるのか分からない響きがあって楽しい。ステンカ・ラージン、ラスプーチン、プガチョフにポリス・ゴドゥノフ、そしてドミトリー・ドンスコイ――こういったロシアの闇紳士録に連なるような、一度耳にしたら忘れられない存在感ある名前をよくぞつけたものだ。
強烈なキャラクターって、それにぴったりの名を得られなければ、いくら属性が面白いものでも、ファンを増やしていけないのではないか。「ぐり」と「ぐら」という日本の絵本界最強のねずみがいるが、これも何か得体の知れない響き、いっぺんで耳の奥底に残る印象深い名前がロングセラーの秘密ではないかと考えている。「濁音」「半濁音」が1つのポイントなのか。
カームジン、カームジン、カームジン。これにくっつけられる冠が「犯罪王」というのも、「名探偵ホームズ」「怪盗ルパン」並みに結構なものなのではないかと思える。
カームジン物は17篇収められていて、作家カーシュの人気を定着させた短篇集『壜の中の手記』の中の1篇のほか、『廃墟の歌声』の中の4篇、『ミステリマガジン』に発表された1篇を再録して含んでいる。そのどれもが、聞き手であるカーシュにカームジンが自分の過去の「してやったり」という犯罪を自慢話として語る設定になっている。その話の切り出し方がもったいぶっていておかしい。
「どうしても聞きたいのなら話してやらないでもない」というポーズを取っている上、時には煙草1本やコーヒー1杯をせびろうとするしょぼさもある。もしかすると、過去の栄光はよそに、すきま風の入る小さなアパートで、暖房もつけられず布団にくるまって寝ているのではないかと想像させるようなせこさもあるのだが、話し始めると、その手口の鮮やかさや知恵の洗練、人を食ったような大胆さに「おみごと~」と拍手したくなる。
「抱腹絶倒」という惹起文句のある小説でも、声を立ててまで笑える本はそうないものだ。私にも、本当に思わず声を出してしまった経験は多くなく、同じ英国の作家マイケル・ボンドが書いた『くまのパディントン』シリーズほか数冊。カームジンの場合は、「あはは」の次に、「それはあり得ない」「そりゃ、出来すぎでしょ」と突っ込みがこぼれた。しんとしたひとりの部屋で反響した自分の声を聞きながら、「ありゃ。ちょっと恥ずかしかったかな」と、あたりをうかがってしまった。
これから読む人の興をそいでしまうといけないので、カームジンがどういうたくらみをして、どうやりおおせたのかということは細かく紹介できない。
「銀行泥棒」「偽札づくり」「宝石泥棒」「殺人計画」のように一般的な犯罪もあれば、コイン投下式で作動するガスメーターをコインなしで作動させた事件や、国王の戴冠用宝冠を1939年に盗んだという史上最大の盗難事件、シェイクスピアの未発見の手書き原稿を持ち帰る事件といった、英国ならではの犯罪もあるということだけ……。
宝物を盗む内容も面白いが、カームジンが話術に長けているのは少し読んだだけで分かるので、その話術でもって小憎らしい相手からお金をせしめたり、相手を罠にかけてしまったりという内容の方が、嬉々とした当人の顔が思い浮かぶようで面白かった。
小説の何を楽しむかには人それぞれいろいろあろう。心の奥のひだに分け入って繊細に描写がされた内容で日常の傷をいやすものを読みたがる人が多く、書きたがる人も少なくない。ヒット作品にはそういうものが多いと見受けられる。その「泣かせ方」「感じさせ方」も書く人の個性や技量であろう。
しかし、何も小説世界でなくとも日常生活で生々しく、人間関係の機微に触れたり、気づくべきではなかった相手の弱さ、痛みを見てしまったりすることがままあると、奇跡を現出させるかのようなイリュージョニストの発想に胸をすく思いができる方が有難い。カームジンの語る犯罪は、すかっとする大胆な犯罪であっても邪悪な感じがない。それがいい。「あいつは罪なヤツだ」と言うときの「罪」が、熟練の奇術師のように提示される。
語りの表現、つまり話術もときめかされるものであるが、その話術にふさわしい着想こそが圧倒的な面白さを保証してくれる。そして、人を手管に酔わせておきながら、そのすきにちゃっかり心の奥のひだにも分け入ってくる。単に笑わせ、愉快がらせるだけの代物ではないのだ。
日本の俳優ならば、どこか植木等を思わせるところもあるカームジンは、チャーチルをはじめとした著名人にもファンが多かったという。「私にカームジンを演じさせてくれ」と何人かの俳優が名乗りを上げたが、舞台、映画、テレビドラマ化の実現には至らなかったと編者ポール・ダンカンの解説にある。この解説には、驚くことにカームジンのモデルになった人物がいたことも書かれており、カーシュの不思議な作品がいかに生まれてきたのかを知る読み物として味わい深い。特に、結びの部分には、生々しい「生」を全うしたカーシュへの敬意ある鎮魂が込められていて、じんとくる。
類いまれな能力を持つ人が、長く安定した創造の時間を持てるわけではなく、また、才能に見合った評価を受けるわけではない。そのような不遇は歴史上いくらでも転がっている話ではあろうが、埋もれさせるには惜しいきらめきに深い愛を注ぐ人たちのバトンがあって、「笑い」は再び声を取り戻す。
泣ける話は意外に多くても、気分よく笑える話が案外少ない時代に、カームジンは大いに歓迎されるべきキャラクターである。
紙の本
復刊を願って
2016/02/14 15:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:igashy - この投稿者のレビュー一覧を見る
カーシュを聞き手に、カームジンが犯罪冒険譚を語ります。
うまくやりおおせるときも、土壇場で何かが起きてしまうときも、カームジンが天才であることに変わりはありません(笑。
現在は版元品切れになっているようですが、また容易に入手できるようになってほしいものです。
同時収録のシリーズ外短編は、彼のメインの作風である奇妙で苦い後味のもので、こちらも読めてよかったです。