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執念の作家が出てきたものだ、と思う。
というか文学は執念の塊でなければならないのだから、至極真っ当な作家が出てきたともいえる。
とにかく、この恥を捨て切った私小説には頭が下がる。
この作者のほかの作品も読んでみたいし、藤澤清造への興味も出た。
なにより、奥付の日付が可愛らしい。
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(2010/01/14購入)(2010/01/17読了)
これ程までに、己の負の部分を描ききることができるのは凄い。
藤澤清造への執念は凄まじいが、どこか滑稽にすら感じてしまう。
西村氏は藤澤清造と自分を重ね、藤澤清造の供養を通して自分自身の供養をしているのではないか。
よく分からんけど。
━━ 何のその どうで死ぬ身の一踊り
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藤澤淸造に傾倒する私は彼の墓参りに訪れた寺で
以前あった墓標が今は寺のどこかに放られていると知り
無理を承知で頼み込み家に持ち帰る
「墓前生活」
三十も半ばとなった私は中華レストランで働く女と同棲するようになり
彼女のパートの給料を生活費に当て
彼女の両親に借りた金で藤澤淸造の全集を作り始める
「どうで死ぬ身の一踊り」
一度実家に戻った女を泣き落として元の鞘に納まった私は
最初のうちこそ暴力も振るわず仲良くしていたが
ついには再び蹴り出してしまう
「一夜」
カバー装画:杉本一文 カバーデザイン:水戸部功
作家・藤澤淸造の自筆原稿から墓標から収集に情熱を傾けつつ、
同棲する女に金を頼り、暴力を振るっては下手に出ることを繰り返す男の話。
何がすごいってこれ私小説なんだそうです。
絵に描いたような駄目男である自分をこうも客観的に書けるのは凄い。
凄いけれどもわかっているなら直せばいいのにと思ってしまう。
しかも結構最近の話だとか。昭和の香りがするのになあ。
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やー、凄かった。めちゃくちゃ過ぎて、ホントに面白かったけど女性は怒るか引くかするだろうなー。ある意味究極のクズ笑。この時代に、まだこんな無頼が生きているとは。
内容はさておき、昭和初期の文豪を彷彿とさせる文章の素晴らしさだった。最近文章好きなので、その辺はかなりポイント高かった。その筆致も含めて2000年代に書かれた本とは思えん。
でもやっぱり女性に手を上げちゃいけません、ということで★4つ。
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喫茶店でカレーを食べようと思ったが団体客の疎ましさからビールだけを注文するだの、出て行った女の下着で自慰をするだの、暴力沙汰だの何とも哀愁と云うか滑稽と云うか杜撰な男の性格が興味深い。
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私が読んだのは受賞作「苦役列車」に続いてこれで二作目だ。
この作品は藤沢清造に傾倒する作者が「清造忌」や月参り
祥月命日の法要、藤沢清造の遺品蒐集、全集出版などいかに情熱的に動いたかを書いている。
いくら傾倒している「師」とはいえ、経済的に困窮しているときですら、食べるものも食べず、精神も時間も傾注するなど
並みの人にはできない、このことだけでも敬服に値する。
朽ち果てたお墓を再建し、あまつさえ隣に自分のお墓まで造ってしまう。
苦役列車を読み、そのおどろおどろしさに驚き、気味悪くさえ感じたが、二作目ということもあって、ただただ没後弟子を自称する西村賢太氏の「師」に対する傾倒の凄まじさに驚いた。
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主人公は大正期の作家・藤澤清造に惚れ抜き、死後弟子を自称して、墓をうろつく。これが目が覚めるほどのダメ男で、読んでいてグツグツ腹ワタが煮えくり返ってくる。
「わたくし」のダメさを徹底して描くということ。
その意味で、この作品はほんとうに素晴らしい。
アタマに来て、どうしようもなくなるから、もう一度読み返そうと思えないのが残念だ。
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作家の名を知ったのは芥川賞の報道によるものだった。そのときの彼のどこか実像が掴めぬ立ち振る舞いや言動が気になっていた。
その印象は読後にも変わらずあり、いや当初の印象以上に彼に何とも言えぬ目を向けてしまう。
それは軽蔑であり憐憫であり、小さい羨望である。
更にそれが何かと辿ると結局は彼がどうしようもなく人間であると判ってくるのだ。
まざまざと見せつけられた業は、綺麗事で包み隠した己の中にも同じくある。
面白かった。
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芥川賞候補にもなった表題作と他2作を収録。
私小説ということで著者の生活、人となりがモロに著作に記されているが、読んでいて気分が良くなるタイプのものでは無い。いまをときめく引きこもり系ではなく、昔ながらの横暴系のダメ人間(無頼というのか?)である著者の、おたく的な藤澤清造愛と、同居人である女性に対するDVなどが描かれる。上記のようなことから女性にはオススメできないが、「苦役列車」にて芥川賞を取った際の同時受賞者である朝吹氏にその経歴から無意識的に反発心を感じるような方にはそのルサンチマンを共有できるという意味合いからオススメできる。
私の育った江戸川区出身の、あまりに江戸川区出身者らしい人物像にも非常に好感が持て、これからもマイペースで頑張ってもらいたいものである。
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苦役列車に続けて読んだ。
師と仰ぐ藤澤清造氏への傾倒ぶりが尋常ではない、彼の流れるような文体も影響を受けているのだろうか。
相変わらず同居の女性に対する仕打ちが悲惨だが、なぜかさらっと読めてしまう、この独特な文章はくせになりそう。
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つい先日芥川賞を受賞して話題になった中卒小説家の作品。現在ではほとんど知られていない大正時代の作家の熱狂的ファンである男(著者自身)が主人公。こいつがみっともない。敬愛する作家に関することなら全力で取り組むんだけど、それ以外はほぼダメ。定職には就いてないし、カッとすると同居する女性にDVを働く。それで逃げられて、めそめそしてる。でも、それがおかしい、すがすがしい。あっという間に読んでしまった。
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藤澤晴造氏への愛よりも恋人との同棲生活のぐちゃぐちゃくず具合が面白い。本当に外道すぎるが、人間が出てる。
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藤澤清造への愛情の深さに恐れ入る。女へは「非道い」の一言に尽きる。
『墓前生活』『どうで死ぬ身の一踊り』は清造に関する内容が濃い短編。
『一夜』で女がやっとこさ西村賢太から逃れたようでほっとする。
MVP:なし
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西村氏の小説4冊目。口の悪いところを見せたかと思えば腰を低くして謝ってみたり、正しいことを痛烈に指摘したかと思えば訳の分からない屁理屈をこねてみたりと、定まらないフラフラとした感じが面白い。p176「あんまりうまくないね」のシーンも、自分で狙っておいて「ギョッ」は無いだろう・・・と突っ込みたくなるところ。
それでも話が(一旦は)丸く収まるところは、主人公(≒著者)に藤澤清造の全集刊行と言う土台があるからなのかな、と漠然とではあるが感じる。所々で垣間見られる謙虚なイメージからは、自分の土台を土台として意識しようとしていないようにも見えるのだけれど。古風な文体も。藤澤の影響と同時に彼の謙虚なところが表れたものなのかも。
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目前に迫った諸々の締切からの現実逃避もあってか、一気読みした。
西村賢太の作品は、「苦役列車」と「腐泥の果実」しか読んだことがなく、購読したのは今回が初めてであったため、わくわくして読んだが、これがなかなか面白かった。
特に「一夜」が僕は好きだった。短編だということもあるのか、「腐泥の果実」に通ずるものがあるように思われた。どちらの作品も、彼の文体と屁理屈によって彼女との逼迫した状況がギャグめいて見えている気がした。女性との立場に立って見ると、全くもって不快な作品であるとは思うけれども、それでも、なんだか面白かった。
「墓前生活」は、筆者も言うとおり、小説と言うよりも、赤の他人が読むことを想定して書かれた日記のように感じた。なんとなく事実が淡々と時系列順に書いてあるように感じたからだ。そのため少しだけ退屈にも感じた。けれども、挫折することも、読書を中断することもなかったので、やはり彼の作品は面白いし、その文体と感性には何処か引きつけられるものがあるということなのかもしれないと思った。
「どうで死ぬ身の一踊り」は最後に読んだのだが、これを読み終える頃には、彼女に対して同情の気持ちしか湧いてこなかった。なのに! どうして! 面白いと感じたのか! わから! ない!