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紙の本
農民も土も水も悲惨な中国農業 (朝日新書)
著者 高橋 五郎 (著)
中国から日本に続々輸入される「汚染食品」。国際事件の背景には、中国農業の崩壊という厳しくも悲惨な現実があった! 7億農民の実態と経済のゆがみを、中国農村研究の第一人者が赤...
農民も土も水も悲惨な中国農業 (朝日新書)
農民も土も水も悲惨な中国農業
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商品説明
中国から日本に続々輸入される「汚染食品」。国際事件の背景には、中国農業の崩壊という厳しくも悲惨な現実があった! 7億農民の実態と経済のゆがみを、中国農村研究の第一人者が赤裸々に明かす。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
高橋 五郎
- 略歴
- 〈高橋五郎〉1948年新潟県生まれ。千葉大学大学院博士課程修了。愛知大学国際中国学研究センター所長、同大学現代中国学部教授。専門は中国農村経済学など。著書に「中国経済の構造転換と農業」など。
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紙の本
農本主義は解決になるか
2010/02/11 01:16
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:梶谷懐 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の内容は農業経済研究者が、地道な現地調査をもとに書いた文字通り「地に足が着いた」もの。特に農薬漬けになっている状況を「人糞を熟成させずに生のまま肥料として使っているからだ」「農村に入った研究者はまず土を自分の手で触ってみるべきだ」といった指摘は農業の専門家の発言として傾聴に値する。
本書の内容については、基本的に賛同するところと、ちょっとついていけないところの両方がある。賛同できるところは、「所有制」の大きな変化の中で、中国農村に生まれつつある新たな格差の状況を的確に捉えている点だ。昨年の三中全会で、中国共産党は農地使用権の移転にお墨付きを与えた。財産である以上、自分の意思により処分したり貸し出したりすることは当然の権利であるはずで、それを認めることは社会の「公正」の点からも望ましいように思える。しかし、現実には制度的なゆがみにより不当に安い価格しかつかない農地を、わずかな現金を手にするために手放さなければならない人たちがたくさんいるとしたら?
現代の中国農村では、村が一旦農民から土地を集めて集約化し、それを「竜頭企業」と呼ばれるアグロインダストリーや、一部の財力のある農家に改めて請け負わせるという状況があちこちで生まれつつある。そしてそういった大農場では、より貧しい農村からの出稼ぎ者を雇用し低賃金の農作業にあたらせる、といった「農農格差」が急速に広がりつつある。
もちろん、そういった大土地経営者も土地の所有権を持っているわけではなく、厳密な意味では「地主」ではない。しかし伝統的な中国では、もともと個人の土地に対する包括的な権利の行使を公権力が認めたり保護するという状況は存在しなかった。その意味では、所有権があいまいなまま、一部の農家が広大な土地をなんとなく実体として支配し、出稼ぎ農業労働者を「搾取」するという現在の状況は、かつての「地主制」といったいどこが違うんだろうか。高橋氏ならずとも、そういった状況に対し、かつて地主制を目の敵にした共産党がお墨付きを与えているという情況は、確かに何かおかしい。
本書でちょっとついていけないのは、あちこちに顔を出す農本主義的・文明批判的なスタンスである。
中国製食品の安全性の問題は日本の企業、ひいては日本人自身の意識の問題でもある、というところまではまあいい。だからといってそこで出される処方箋が、食生活全体の加工度を下げること、すなわち「袋の味」を脱して「おふくろの味」に帰れ、というのはどうだろうか。エスピン=アンデルセンを参照するまでもなく、過去の日本社会において「おふくろの味」とは、老人介護も含めた福祉サービスの負担を「おふくろ」=主婦が過度に担わなければならないシステムと表裏一体であったはずだ・・とかいろいろ理屈を考えたけど、要はこれって2008年の世界同時不況以降に盛んになった、「貪欲な資本主義がわれわれをダメにした」という風潮に安易に乗っかっただけではないだろうか。確かに現代中国の「食と農」をめぐる問題は深刻だ。でもだからといって、人々がもっと農本主義的な考え方をする必要がある、というのは、処方箋としてはちょっと安直過ぎると思うのだが。
紙の本
それでもあなたは中国産の食品を手に取りますか?
2009/07/29 00:50
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
今や中国にすっかり食糧を依存している日本。しかも、毒入り餃子事件や残留農薬事件、メラミン混入事件で、食の安全に多大な不安を抱かせている中国。
スーパーで原産国表示が中国とあれば、それだけで敬遠し、国産を選ぶ人も多いだろう。食の不安は健康不安に直結する。健康を捨ててまで安い中国産を好んで選ぶ気持ちにはなかなかならない。
ところが、餃子事件にしても2009年時点でいまだに解決していない。犯人も原因もわからない。日本で健康被害が実際に生じ、メタミドホスが検出されているというのに。
まだスーパーで購入するものなどで、原産国表示があるものなら選択の余地がある。これが完成品として、産地が分からないまま口に入れてしまうようなものになると手の打ちようがない。そうして、日本は中国からたくさんの食糧を輸入しているのだ。
本書は、中国農業の実態を、現地に足を運んで確かめている。結論は、題名にあるとおり、悲惨なものだ。これを読み終えたとき、なるべく食材から買い求めて自分で調理し、食べるという習慣を身につけなくてはという気にさせられる。
国土が広いといっても、中国には農業に向いた土地は少ないとある。真夏の学校のグラウンドのような固い土で作物を育てているとあれば、無理があると感じないではおれない。農業の基本である土作りができていない。
おまけに、工場の排水も、生活排水も浄化されないので、悪臭立ちこめる河川やため池ができあがる。その泡立つ黒い水が、ポンプで汲み上げられてトウモロコシ畑に流されている。そりゃ、まずいだろう。
そんな土や水で育った野菜を食べさせられてはたまらない。なおかつ、化学肥料を適切な知識もないままに、大量投与しているのだとしたら、トドメを刺された気分になる。
そういう不安というよりは恐怖に近いものを覚えさせるのに、本書は十分な内容になっている。ただ、データに乏しいのが難点だ。著者は、中国に足を運び、メディアも報道しないような現場を見てきている。土の感触も自分で確かめている。
それだけに、こうした状況がどのくらいの割合で起きているのか、数字での裏付けがほしい。そうでなければ、センセーショナリズムに陥りかねない。
メラミンの混入が、中国の大手3社の乳製品から見つかっているというのだから構造的な背景があるに違いない。農民が土地の権利をアグリビジネス企業に売り渡して、農業への愛着を持てないまま雇われ農民が作業に従事しているという指摘も鋭い。
だからこそ、少しでも数字の裏付けがほしい。信頼のおける統計がないというのならば、著者自身がいくつの現場を踏み、そのうち何カ所で汚染された水が散布されているのを見たというデータだってかまわない。それがないので、中国産の食糧のすべてを避けるという方法しか読者には身を守る術がなくなる。きっと著者はそうすべきだと言うのだろうが・・・。
日本の食糧事情の未来を著者はしきりに心配するが、中国の人たちの健康も気に懸けたいところである。メラミン混入粉ミルク事件では、29万人の乳児が腎臓結石になるという広範囲な健康被害が生じている。また、異常にガン死の多い村の報告もある。そこにジャーナリスティックに切り込んでいってもらえれば、もっとよかったのだが。ここは、本職のジャーナリストと組んで続編を出してもらいたいところだ。
まあ、驚愕の中国農業の実態ではある。他国の農業の構造にまで口出しはできないかもしれないが、技術的援助で、土作りや廃水の処理、化学肥料の用い方といったことはぜひ伝えて欲しいものである。ここまで中国農業に依存していたら、いつ日本の食の安全が根底から脅かされるか分からないのだから。