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塩の文明誌 人と環境をめぐる5000年 (NHKブックス)
塩蔵や発酵食品など、世界各地の塩の文化を見ると同時に、シュメール文明の崩壊やカリフォルニア最先端農業の困難、消えるアラル海など、塩のもたらす環境危機の仕組みに迫り、塩の二...
塩の文明誌 人と環境をめぐる5000年 (NHKブックス)
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商品説明
塩蔵や発酵食品など、世界各地の塩の文化を見ると同時に、シュメール文明の崩壊やカリフォルニア最先端農業の困難、消えるアラル海など、塩のもたらす環境危機の仕組みに迫り、塩の二面性から人類と地球の未来を見つめる。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
佐藤 洋一郎
- 略歴
- 〈佐藤洋一郎〉1952年和歌山県生まれ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。総合地球環境学研究所教授。
〈渡邉紹裕〉1953年栃木県生まれ。京都大学大学院農学研究科単位取得後退学。総合地球環境学研究所教授。
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過ぎたるは及ばざるがごとし
2012/06/07 22:35
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
狩猟採集から農耕栽培へと生活基盤が大きく転換したことで、人は生理的に塩を求めるようになったとか。動物の血肉から得られたナトリウム。穀物主体の生活はカリウムの摂取率を高め、崩れた均衡を戻すため塩が不可欠になったというのだ。
その欠を補うかのように人は塩を求め、塩を作るようになった。この分かりやすい展開は、文明崩壊のプロセスへと繋がる大きな布石だ。
文明の発展は人を都市に集住させるようになった。様々な分業で都市機能は維持されるわけだが、塩の生産もその1つである。塩は重要な商品として取引された。需要が高まれば、それに追いつこうと供給量も増える。それが文明崩壊の1つのきっかけとなったとか。
塩を得るため薪が必要。そのため樹木の伐採が盛んになり、森林が減少し、土砂が流出するようになった。そして、農地が減少、生活環境の劣悪化が起こり、文明崩壊。
また、別のプロセス。都市化による人口増加は食糧重要の増加を招いた。そのため灌漑施設を拡大し、土地の削っていく。その結果、地下の塩が地上に顔をのぞかせ、土地の塩性化、砂漠化が引き起こされた。農地の職掌は生産基盤の消失へと直結し、食料減少は人口減少とも結びつく。やがて文明崩壊。
文明崩壊のシナリオに塩が絡む。この論は、文明崩壊の1つの要因に過ぎない。実際には様々なことが複雑に絡み合って、文明崩壊は引き起こされたに違いない。ただ、いずれの要因にしては、「過剰」ということが大きな引き金となっていることは間違いない。
人口の過度なまでの集中、農地の拡大による自然の減少、そして自然軽視の考え方。様々な「過剰」は大きなしっぺ返しとなって人々の生活を脅かしてきたのは、歴史が示す真実だ。このことから学ぶべきことは多いはず。本書は塩を題材にそのことを淡々と啓蒙していると言えよう。
ところで、塩分の取りすぎがやたらと主張され、減塩食品が何でも素晴らしいかのような論調に本書は危惧を示す。現在社会であろうと太古の話であろうと、生物としての人が生きていくために塩は必要な栄養素である。文明にせよ、日々の生活にせよ過ぎたるは及ばざるがごとしである。