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イワシと気候変動 漁業の未来を考える (岩波新書 新赤版)
著者 川崎 健 (著)
海の魚の数は、地球の大気や海と連動して、数十年スケールで変動していた−。世界的に大きく進展した「レジーム・シフト」の研究成果を踏まえ、これからの海と海洋生物資源の持続的利...
イワシと気候変動 漁業の未来を考える (岩波新書 新赤版)
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商品説明
海の魚の数は、地球の大気や海と連動して、数十年スケールで変動していた−。世界的に大きく進展した「レジーム・シフト」の研究成果を踏まえ、これからの海と海洋生物資源の持続的利用のあり方に明確な方向性を示す。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
川崎 健
- 略歴
- 〈川崎健〉1928年中国生まれ。東北大学農学部水産学科卒。同大学名誉教授。専門は海洋生物資源の動態。日本科学者会議代表幹事、那珂川の魚類・生態系影響評価委員会委員長。著書に「漁業資源」など。
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紙の本
レジームシフトによる魚種交替
2015/09/26 06:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タヌ様 - この投稿者のレビュー一覧を見る
レジームシフト理論の提唱者による著者の一般向けであり、貴重な一冊。
この書評は2015年9月記載であり、再読したものである。出版当時はイワシが消え、それは地球レベルでの気候変動による魚群規模変動で公海回遊の青色系魚種交代の展開を識らしめるものだった。
現在はさんまの値段が高騰している、ただし今回は中国等の乱獲がその原因と報じられているだけでレジームシフトによって魚群きぼの大きいさんまに漁獲が見込まれる無秩序に獲られてしまっているだけというのである。
現状はレジームシフトで獲り過ぎが次なる規模拡大の原資を奪うレベルかどうか、未定である。
日本はやはり水産学での貢献は大きく、そのなかから学際レベルの理論提唱が行われ、かなり広範な得ているはずなのだが、理を超えて経済活動にまい進する周辺国には聞く耳を持たない状況である。
紙の本
レジーム・シフトとは広辞苑にも載っている理論なのであった。これを理解すると海洋生態系や漁業資源に対する見方が一変する
2009/12/05 15:48
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
イワシは、かつて大衆魚の代表だった。いくらでも獲れて、安くお店に並んでいたからだ。漢字では「鰯」。「弱」という字を当てられているのも、イワシの立場を表している。
ところが、イワシの漁獲高が近年、大きく低下している。ほかにも、水揚げが減少している魚は多い。そして、その要因を「乱獲」に求める声が、これまでは大きかった。
しかし、著者は、海洋生態系の複雑さをもっと丁寧に解き明かしていく。乱獲だけでは説明がつかないというのだ。
長期間、データをとり続けていると、歴史的にイワシの漁獲量は大きな上下動を繰り返していることが分かる。そして、イワシの食べる海中のプランクトン量を調べてみると、これも上下動を繰り返している。
つまり、イワシを養える「海のキャパシティ」の変化にイワシの漁獲が左右されていることになる。これを「レジーム・シフト」というのだそうだ。
80年代前半には、当初、水産資源学者や海洋学者のあいだでも、レジーム・シフト理論は否定的な受け止め方をされていた。その後、ワークショップを重ねて、80年代の終わりには、専門家のあいだでほぼ支持されるに至ったという。90年代以降は、レジーム・シフト理論に基づく、魚類の個体数変動が盛んに研究されるようになっている。
「レジーム・シフト」は2008年に発行された『広辞苑(第六版)』にも収録されている語彙だというのだから、理論としては定着したと言える。しかし、この考えは、あまり一般の人々のあいだで広まっていないように思える。著者が本書を刊行したのも、その現状打破にある。
大気-海洋-海洋生態系という地球環境システムの変動を説明するレジーム・シフト理論はもっと広く理解されてよい。「大気」、「海洋」、「海洋生態系」の3つを関連づけて語らないと、やみくもに稚魚を放流したり、漁獲規制を行ったりということになりかねない。
ちなみに、海のキャパシティが成魚の量を決めるので、稚魚をいくら大量に放流しても、結果としては変わりがないことになる。実際、このことは北太平洋のシロザケのデータによって確かめられている。
もっとも、大気-海洋-海洋生態系のつながりを正確に理解しようとするのはかなりの努力を必要とする。著者は、各種データをあげながら懇切丁寧に説明し、読者を助けようとするのであるが。
海には海流があり、それに乗って魚類が移動していることくらいは、だれでも知っていることだが、海洋環境のダイナミズムはとても複雑だ。大気との熱交換システム、気圧と海水温の関係、それにともなう海洋生態系の変化についての説明は、読者の知力を試しているようでもある。
海洋は、一般に思われているよりも、もっと変化に富み、それ自体が生き物のごとく振る舞っている。大海原には、どっしりとした安定感があり、揺らぐことがないようなイメージを抱いていた。それが、読後に一変してしまった。
また、本書の終盤に取り上げられる国連海洋法条約や排他的経済水域の考え方は、「レジーム・シフト理論」からすると、持続可能な漁業にとっては妥当性を欠いているという指摘も鋭い。
自然の変動によって、漁業資源はもともと上昇と崩壊のサイクルを繰り返すが、回復期に獲りすぎると、資源がもとに戻らない。世界はレジーム・シフト理論を基本に、海洋計画を見直す転換点にあるというのが本書の締めくくりだ。
科学を基礎に置いた政治的判断。これが今求められている。科学が先行しないと正しい海洋政策も立てられない。そういう著者の主張はなかなか説得力に富むと見た。