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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2009.7
- 出版社: 早川書房
- サイズ:19cm/382p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-15-209053-9
紙の本
素数たちの孤独 (ハヤカワepiブック・プラネット)
桁外れの数学の才を持つ少年マッティアは、過去に犯したある罪のせいで、孤独の殻に閉じこもっていた。彼は家族や同級生と馴染めずに、みずからを傷つけ続けた。スキー中の事故で片足...
素数たちの孤独 (ハヤカワepiブック・プラネット)
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商品説明
桁外れの数学の才を持つ少年マッティアは、過去に犯したある罪のせいで、孤独の殻に閉じこもっていた。彼は家族や同級生と馴染めずに、みずからを傷つけ続けた。スキー中の事故で片足が不自由になった少女アリーチェ。彼女は、事故のきっかけを作った父を憎みながら育ち、醜い足へのコンプレックスから拒食の日々を送る。少年と少女の出会いは必然だった。二人は理由も分からず惹かれあい、喧嘩をしながら、互いに寄り添いながら、共に大人になった。だがやがて、小さな誤解が二人の恋を引き裂く。イタリアで120万部超の記録的セールス!世界的な注目を集める感動作。【「BOOK」データベースの商品解説】
【ストレーガ賞(2008年)】【カンピエッロ文学新人賞】過去に犯したある罪のせいで、孤独の殻に閉じこもっていた少年マッティア。スキー中の事故で片足が不自由になった少女アリーチェ。近くにいるけれど、本当に愛しあうには遠すぎる2人。若き物理学者が描く、鮮烈な恋愛小説。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
パオロ・ジョルダーノ
- 略歴
- 〈パオロ・ジョルダーノ〉1982年トリノ生まれ。トリノ大学大学院博士課程に在籍中。専攻は素粒子物理学。「素数たちの孤独」でデビュー、ストレーガ賞、カンピエッロ文学新人賞など数々の著名な文学賞に輝く。
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紙の本
本当にリアルな内容です。リアル、っていうのはこういうことなんだ、って思います。だから読んでいて辛い。胃がキリキリしてきます。なんでこうまで身勝手なんだ、って思います。そういう他人とまじりあわない孤独な人間を素数にたとえるなんて、それだけでも素晴らしい。でも、ワクワクしないお話は、どんなに立派でも楽しくない・・・
2009/12/28 17:34
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
パオロ・ジョルダーノ『素数たちの孤独』(早川書房2009)
私はあまりハヤカワepiブック・プラネットのカバーデザインが好きではありません。といってもすべてが嫌いなのではない、背のデザインが好きじゃあないんです。この本を書架に並べて背だけを見てください。小説の意匠ではないですね、どちらかといえば科学啓蒙書のものでしょう。たとえば講談社ブルーバックスの兄貴分とか。ま、確かにタイトルには〈素数〉という字が入ってはいるんですが・・・
でも、平台に積めば問題はありません。特にこのカバー写真なんかは、新潮社のクレストブックに使いたいくらいです。ボケ気味なところもいいのですが周辺が暗く沈みがちなところがいいです。なんていうか盗撮写真というか、木の葉の陰から覗いているような。で、その向こうに水面があって少女がいる。小説にはこういう光景はないんです。そういう意味では〈孤独〉感だけを象徴しているのかもしれません。それらについてカバー折り返しに
装幀 ハヤカワ・デザイン
シリーズ・ロゴ 森ヒカリ
Jacket Design:Matt Johnson/TW
Photographs:Marka/Wildcard Images UK
と書いてあります。で、内容ですがカバー後には
*
イタリア最高峰のストレーガ賞受賞。
若き物理学者が贈る、至高の恋愛小説。
桁外れの数学の才を持つ少年マッティアは、
過去に犯したある罪のせいで、孤独の殻に閉
じこもっていた。彼は家族や同級生と馴染め
ずに、みずからを傷つけ続けた。
スキー中の事故で片足が不自由になった少女
アリーチェ。彼女は、事故のきっかけを作った
父を憎みながら育ち、醜い足へのコンプレック
スから拒食の日々を送る。
少年と少女の出会いは必然だった。二人は理
由も分からず惹かれあい、喧嘩をしながら、互
いに寄り添いながら、共に大人になった。だが
やがて、小さな誤解が二人の恋を引き裂く。
イタリアで120万部超の記録的セールス!
世界的な注目を集める感動作。
*
とあります。「イタリア最高峰のストレーガ賞受賞。若き物理学者が贈る、至高の恋愛小説。」っていうのが効いていますねえ、日本人受けしそうで、私などもその口なんですが、女性にとって難関は〈素数〉の文字。これと背のデザインをみたら敬遠します、フツー。実は私も最初はこの本を『フェルマーの定理』みたいなものだと勘違いしていたくらいですから。
そういう意味では、至高の恋愛小説、っていうのも気をつけたほうがいいです。甘い小説を期待すると大間違いですし、といって涙をおねだりしてもいけません。私などはどちらかというとイライラのし通しでした。ともかく出てくる人間すべてが身勝手です。親は子供の意思を無視するし、子供は親の思いを拒絶する。惹かれあっているものは口を閉ざし、相手を罵る。胃がキュルキュル痛くなってくる、そういうお話です。
タイトルの〈素数たち〉は、そういった彼らの孤独、ただ一つの存在を意味するのでしょう。そういう意味で『素数たちの孤独』というのは上手いです。そう、これは恋愛小説というよりは人間の孤独ぶりを描く小説、といったほうが正しいのかもしれません。で、思うんです、孤独というのは自分で陥るものなんだな、って。
前掲の案内文に出てくるアリーチェ・デラ・ロッカは、スキー学校が大嫌いで、頻尿気味の少女です。独断的な弁護士の父親が彼女の気持ちや体調を少しも考えず、スキー場に連れて行ったことから事故にあい、片足が不自由になってしまいます。ただ、この事故も、気持を素直に伝えられず自分勝手に動いた結果でもあります。彼女が拒食症になった時期は不明ですが、15歳になった1991年には拒食症になっています。
もう一人の主人公、マッティア・バロッシーノは、双子の妹ミケーラの兄です。妹は脳に障害があり、そのかわり、といっては語弊がありますがマッティアは数学に秀でています。妹のせいかマッティアの天才性ゆえかはともかく、学校でも二人は孤立していて、たまたま同級生の誕生日に兄が招待され、それなら妹も連れて行けと両親が決め付けたことから悲劇が起き、そのことから少年は自傷癖に陥り、孤立していきます。
この二人を出会わせることになるのが、アリーチェの高校の同級生ヴィオラ・バイです。彼女は資産家の娘で、おまけに凄い美少女。それゆえにクラスの誰よりも人生を熟知し、性についても詳しく、クラスに君臨しています。ジャーダ、フェデリーカ、ジュリアという取り巻きがいて、孤独な二人を合わせたのも、ミケーラを無理矢理誕生会に招待したのも、善意からではありません。4人でアリーチェを苛めの標的にすることだけが目的だったのです。
二つの孤独な魂は、よくあるYAのように安直に吸い寄せられることはありません。周囲に毒を撒き散らし、自らも傷つき、お互いも血を流すようにしながら、ゆっくりゆっくりと距離を縮めていきます。そして、どこにでもあるお話とは全く異なる終り方をします。それは正にリアルとしかいいようにないものです。
少年、少女であった主人公たちは成長し、親は老いていきます。それでも、孤独であることは変わりありません。話はそういった人々の24年間を描きます。参考までに目次を写しておきましょう。
目次
雪の天使(一九八三)
アルキメデスの原理(一九八四)
机の上とすぐその下(一九九一)
別の部屋(一九九五)
水のなかと外(一九九八)
ピントをあわせて(二〇〇三)
後に残るもの(二〇〇七)
訳者あとがき
紙の本
孤独と孤独が出会うとき。
2009/08/17 11:42
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:求羅 - この投稿者のレビュー一覧を見る
マイナスとマイナスを足しても、プラスになることはない。その数値が大きくなればなるほど、ますます正数からの距離は広がっていく。
だが、孤独と孤独が出会うとき、共感が生まれ、癒しとなる。それは、ひとりで歩む人生の流れの中で、奇跡のような瞬間だ。
自傷癖のある天才数学少年マッティアと、片足に障害をもつ拒食症の少女アリーチェ。
心に傷を負い殻に閉じこもって生きていた二人は、相手の中に自分と同じ苦しみを見出し、自然と引き寄せられるように。幼少期から思春期を経て青年期へ。時の移り変わりとともに交錯するふたつの人生は、いつしかひとつの運命に縒り合わさっていく。
切ない小説である。剥き出しの傷のような、ひりひりとした痛みを伴う小説である。登場人物たちの底知れぬ孤独を思うと、途方にくれる。
もともと作者が考えていたタイトルは、章題にもなっている「水の内と外」だったそうだ。
作中では水のイメージが随所で重要な役割を果たしているが、広い意味でいえば、私たちが住む世界そのものを現しているといえるだろう。マッティアやアリーチェたちの抱える事情は特殊だが、上手く泳げない息苦しさは誰しも馴染みのあるものだと思う。
作者のパオロ・ジョルダーノは、素粒子物理学を研究している大学院生。
デビュー作となる本書で、2008年イタリアの権威ある文学賞・ストレーガ賞を受賞した。26歳という若さと異色な経歴から、イタリアではずいぶん話題になったようだ。
一文が短く淡々と綴られた文章なのに、心の深いところを揺さぶってくる。じれったい展開にヤキモキしながら、ページをめくらずにはいられなかった。素数の性質と絡めて描いた作品なので、小川洋子の『博士の愛した数式』を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。
ともすれば傷の舐め合いになりがちな主人公たちの交流は、共鳴しながらも自分のあるべき場所を離れることはない。それはまるで、〈双子素数〉のような孤独と連帯。ひとつの偶数字で隔てられた距離は、近いようで遠い。けれどけっして「独りぼっち」ではないのだ、という確信が、人の生きる支えになる。