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- カテゴリ:一般
- 発売日:2009/11/01
- 出版社: 平凡社
- サイズ:19cm/277p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-582-83452-9
読割 50
紙の本
きのふの東京、けふの東京
著者 川本 三郎 (著)
岩淵、参宮橋、四つ木、小岩、抜弁天…。やがて失われゆく、懐かしき東京の気配を探して、またきょうも小さな町を歩く。【「BOOK」データベースの商品解説】きのふの町を求めて、...
きのふの東京、けふの東京
きのふの東京、けふの東京
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商品説明
岩淵、参宮橋、四つ木、小岩、抜弁天…。やがて失われゆく、懐かしき東京の気配を探して、またきょうも小さな町を歩く。【「BOOK」データベースの商品解説】
きのふの町を求めて、けふの東京を歩く。岩淵、参宮橋、四つ木、小岩、抜弁天…。やがて失なわれゆく、懐かしき東京の気配を探して、小さな町を訪ね歩くエッセイ集。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
川本 三郎
- 略歴
- 〈川本三郎〉1944年東京生まれ。評論家。「荷風と東京」で読売文学賞、「林芙美子の昭和」で毎日出版文化賞、桑原武夫学芸賞受賞。他の著書に「ミステリと東京」「向田邦子と昭和の東京」など。
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紙の本
平成の隠者、東京をさすらう
2010/03/16 20:25
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る
川本三郎という人は嫌なことはしない、書かない。ただ好きな人とだけ付き合い、好きなことだけをして、好きなことだけを記事にして生活していると聞いたことがありますが、まことにうらやましい平成の隠者、聖賢のような存在です。
そんな川本氏がもっとも好むのは東京の東西あちこちの気ままな町歩き。それも高層ビルやキンキラキンの商業施設が建ち並ぶ「街」ではなく、銭湯と居酒屋と古本屋がある昔ながらの庶民的な「町」を選んで歩くのです。
だから本書で主に取り上げられているのは永井荷風が好んだ隅田川を越えた深川や洲崎、三ノ輪浄閑寺、荒川の放水路などですが、川本氏の町歩きのフィールドは東京の全域にまたがっており、両国や神保町、神田、東京、新橋、阿佐谷、新宿なども忘れられてはいません。
それにつけても、荷風の幼馴染井上唖々ゆかりの森下町「山利喜」、小名木川六間掘、大久保湯灌場に杖を引いた荷風散人、その荷風の足跡をたどった野口富士男氏、さらにそれらの先達を慕う川本氏が、今は無き江戸の風景のよすがを求めてさすらう姿を見ていると、現代の読者である私(たち)もまた彼らの驥尾に付して懐古掃苔の旅に出かけたいと願わずにはおられません。
私は「断腸亭日乗」を読んで以来、かつて荷風が通い詰めた新橋の「金兵衛」という一膳飯屋の所在を尋ねていたのですが、本書でそれが汐留交差点角にある天明時代創業の佃煮屋「玉木屋」の近所にあったと初めて知らされ、久しぶりに新橋を訪ねてみたくなりました。
近年大規模な開発が行われたにもかかわらず、あの辺にはまだ江戸時代から続く老舗が残っているようです。
♪東京の明るい廃墟をよろばいつわが胸に浮かぶ江戸の俤 茫洋
紙の本
各話が短いのがちょっとね、でもその割には情報満載。東京への、というか下町への思いがよく伝わってきます。でも、ちょっと編集が不親切。だから★一つ減じました、川本のせいじゃないんですけど・・・
2010/02/20 19:13
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
好きな装丁です。ま、私としては似た造りでもクレストブックのようなフランス装に近いほうが好きだし、ちょっと埃はたまりますが、小口が全部切り落とされているのではなく、上はそのままのほうがエッセイ集らしくていいんじゃないか、なんて思いますけれど嫌いではありません。そんな装丁は本山木犀。それと私は未読ですが、永井荷風『断腸亭日乗』から採られた挿絵をカバーに使ったのがいいです。アイボリーの色合いもあって、実に優しい。
注に、カヴァー画/永井荷風『断腸亭日乗』より「堀切橋辺より四木橋を望む」、表紙画/永井荷風『断腸亭日乗』より「堀切橋辺より四木橋を望む」「西船堀放水路水門下」とあります。それと小技ですね。タイトル文字に少しだけ色を入れる、目立たないけれどよく見ればわかるほんのりした色。それとタイトルと著者名を色付きボックスにいれたのもいい。ま、背中の方はそのままだと硬くなるんですが、でもタイトルの色の入った「の」の字がそれを救っています。
で、参考までに目次にマークをつけましたが、東京生まれ千葉在住の私としては馴染みの多い土地が出てくるのが嬉しいです。まずは何といっても小日向です。私が生まれて育った町。大学生まで住んでいましたし、よく歩きました。自分の卒業した第五中学が登場したのも驚きです。そうか、黒澤明と荷風が卒業していたんだ。全く知りませんでした。お寺は多かった記憶はありますが、有名人と結びつくのは護国寺くらい。社会科の成績が悪かったはずです。
京成線の各駅は、引っ越した先が沿線だったので知っています。小岩、新小岩は親戚や知人が今も暮らしていますし、時たま下車して江戸川ベリをあるいたりもします。青戸当たりは結婚したあとで暮らそうかと思ったところです。竹ノ塚、堀切菖蒲園は実家の墓所があった関係で何度も利用しました。
有楽町といえば映画館。家族全員で『Road of the Ring』三部作を公開されるたびに見に行ったのが忘れられません。でも、回数としては夫に従って銀座の画廊街を歩いた方が多いと思います。長女は三歳、次女は赤ん坊のときから銀座参り。スタンプラリーもやりました。上野も美術館と芸大絡みでよく行きました。御茶ノ水と神保町は本の関係と長女の大学があるところ。
錦糸町、両国は最近縁ができた町です。錦糸町は現代美術館との関係で、両国は浅草に出るルートの一つとして月に一度は利用しています。ま、私が歩くのは道に迷わないよう大きな道路なので下町風情を感じることはありませんが、それでも裏道を歩いてお寺や古いお店にであうと、あ、いいな、なんて思います。
そういう意味で読んでいて楽しかったのですが、出版社というか著者というか装丁家に言いたいことがあります。なぜ地図の一葉、写真の一枚、ワンカットの挿絵を入れないのでしょう。写真やイラストを入れればコストに跳ね返ることは分かります。でも、「1 けふの町を歩く」なんて各話の最終頁は半分は白紙です。このスペースを利用すれば頁数は増やさないで済みます。
それが無理なら登場する場所を駅から辿れるようにしたマップ一葉を巻頭か巻末、或いは見返しの紙に印刷でも構いません。それだけでどれほどこの本を読むのが楽しくなることか。例えば冒頭の岩淵、赤羽は分かりますがそこからどの方向に歩けば目的地につくのか、この一文ではわかりません。
聖蹟桜ヶ丘だって、大栗川と乞田川が合流する方角がわからない。谷保の矢川湿原の場所だってそうです。地図一枚あれば、この本を片手に町を歩くことができるじゃありませんか。勿論、お店は閉店したり無くなったりするでしょう。お寺だってなくなるかもしれません。でも駅や川は動かない。地方から出てきた人でも楽しめる本にしようとは思わなかったのでしょうか、平凡社さん・・・
初出は、多岐にわたっていそうですが、よく見ると、東京新聞以外は三つの雑誌だけ。でも全部書き写すのは大変なので手抜きして書いておくと、けふの町を歩く 東京新聞 連載「東京どんぶらこ」2006年10月14日~2009年8月29日、きのふの盛場 「荷風!」「東京人」 2005年1月~2009年7月、作家たちの東京 「東京人」「荷風!」「図書」 2003年10月~2009年9月、となります。
目次を写しておきますが、★マークは私が個人的に歩いた町、☆は名前だけ知っている町、とちょっと変化をつけてみました。
1 けふの町を歩く
岩淵 谷保
参宮橋☆ 小日向★
町屋★ 江北
六本木一丁目★ 浮間★
四つ木☆ 八広
有楽町★ 抜弁天☆
聖蹟桜ヶ丘☆ 久我山★
青戸★ 竹ノ塚☆
千住関屋☆ 堀切菖蒲園☆
小岩★ 一之江
妙法寺 狛江★
新小岩★ 武蔵境
西麻布★ 落合☆
2 きのふの盛り場
千住、下町のフィールド・オブ・ドリームス☆
上野、敗者に優しい町★
御茶ノ水、名探偵とモダンガール★
東京昭和三十年代建築の時代
新宿、ガスタンクと浄水場とドヤ街★
東京駅界隈★
錦糸町・両国、総武線の東側★
かって神保町界隈にあった映画館のこと★
池袋は今日も戦後だった★
両国、「大鉄傘」があった頃★
阿佐谷、相撲の町☆
新橋、東京の真ん中にある下町★
3 作家たちの東京
林芙美子「市外」に生きる
小津安二郎 東京への違和感
溝口健二の東京下町
芝木好子の洲崎
永島慎二が描いた若者たち
向田邦子と久世光彦の「あの頃」
「半七捕物帳」の江戸
荷風の愛した寺
荷風の旧幕びいき
深川 荷風のいた風景
あとがき
ほんと、地図さえ付いていたら、今すぐにでもこの本片手に出かけたのに・・・
紙の本
荷風と共に巡る東京
2009/11/24 16:06
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:碑文谷 次郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜ『きのうの東京、きょうの東京』ではなく『きのふの東京、けふの東京』なのか?-そんな関心をもって開くと、まず第1章は「けふの町を歩く」。岩淵、参宮橋から始まり武蔵境、落合まで都内26の町(「街」ではなく)を歩く。登場する26の町のうち葛飾区が最多の4、あとは北区、荒川区、足立区、江戸川区などの各2で、青山とか原宿、六本木は登場してこない。どの町にも、安くて旨い肴を出してくれる居酒屋がある、いや、著者はそういう店を探し出して馴染みになる。大抵の町には、いい本をそろえた古本屋や小さな映画館があり、荒川や隅田川、綾瀬川が橋の下を流れ、東武線、京成線の電車が通る。
そんな東京に惹かれる著者の足は、第2章「きのふの盛り場」でも同じ方向へ向かう。例えばかつてはドヤ街旭町があった新宿南口。「階段を下り切ったところにいまも、大衆食堂が一軒ある」「新宿に出た時、時折り、ここでビールを飲んだりする」。更には、「おしゃれなビル」が増える丸の内。高層階の高級レストランよりも、地下にあって「昼間から営業している」居酒屋。「よくぞこんな店が丸の内に・・・と居酒屋好きにはうれしい」。そして東急沿線、井の頭沿線の比較的新しい町についてポツリと漏らす一言が胸に響く-「(こういう)町に《哀しみ》がない」。
最終の第3章「作家たちの東京」でも「いい東京はもう現実から消えてゆく人間の心のなかにしか残っていない」という《哀しみ》を小津安二郎の映画作品に託して語る著者は、「東京への違和感を感じながらも、小津は、最後には、《東京もなかなかいいぞ》と肯定したかったのだろうか」と締め括っている。自分自身に言い聞かせるように―。
大作「荷風と東京」の著者らしく、全編に亘り永井荷風が頻繁に登場する。「荷風は、滅びゆくものを愛し続けた。消えてゆくものにこそ詩情を見た」「荷風が昭和に入って、荒川放水路のような東京のはずれに何度も足を運んだのは、隠棲の思いがあったからこそだろう」。そう云う著者が荷風と同じ視線と歩調で巡る東京は、現実の東京に相違ないけれども、切り取る風景は固有の記憶の古層に凝縮された、かけがえのない東京の町や人であって、「夢のような過去への愛しい思い」を込めたものばかりだ。とすれば、著者の思いはやはり『きのふの東京、けふの東京』と表す外なかったのかもしれない。