紙の本
動き出した時間
2009/12/25 22:43
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作と同様に日坂菜乃が関わる事件が起きるのだけれど、前作に比べると外伝としての意味合いが強くなっているかも知れない。前作は日坂菜乃を中心においた新作という印象が強かったけれど、今回は井上心葉はもちろんのこと、琴吹ななせや竹田千愛などの、本編終了後の様々な想いが語られている。
表題作の「傷心。」は、姫倉家の別荘で催されることになった文芸部の合宿のお話。菜乃に対して全く感情を揺れさせなくなった心葉に対して、破れかぶれの特攻を仕掛ける菜乃。それに心葉はどう対応するのか。
次の「怪物。」は、合唱部のスケットとして文化祭の劇に参加することになった文芸部。ところがその練習を妨害する事件が起き、その背後には一年前のトラブルが関係していた、というお話。
天野遠子以外の存在に対し、笑顔という見えない壁ではじき返すことでしか応じられなくなっている心葉。心葉のことがまだ好きでたまらないのに、自分の言葉ではその心にさざ波すらもたてられない事に無力感を感じているななせ。超がつくほど不器用な生き方しか出来ない二人に、超がつくほどポジティブにしか考えられない菜乃がぶつかっていく事で、双方に少しずつ変化が生じてくる。
とある人物が再登場したり、最後にまた爆弾が投げ込まれたり、次は菜乃自身のあり方をさらに揺るがす展開になりそう。
紙の本
深層心理という真理を学んだ菜乃
2010/02/04 23:32
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
喜怒哀楽(『中国の五情』という括りでは、これに「怨」が加わるらしい)という、主に人と人との関係に端を発し、因縁や遺恨という形でエスカレートする暗澹とした感情が見え隠れしながら、人の業が蠢いて図らずも他人を傷付けてしまうやるせない物語が今回も真っ正面から描かれている。これは同時に、理想ばかりを思い描く夢見る少女な菜乃ちゃんが、人の心に巣食う闇のようなネガティブ感情を知り、これに戸惑いながらもどう理解するかを見付け出す「初体験」物語でもあった。全編が菜乃ちゃん視点、その独白はフツーの女子高生らしい無邪気に満ちていて眩しいくらい。その眩しさを遮るように心葉から、そして次々と現れる本編の主要メンバーから意味深な言葉を投げ掛けられては悩んで落ち込む菜乃ちゃん。そりゃあ、本編で愛情と怨嗟がぐるぐる交錯した果てに死線すら彷徨った面々からすれば菜乃ちゃんなんて能天気なお子ちゃまに写ることでしょう、いーよいーよ、菜乃ちゃん、あの人達は異常体験者だから、菜乃ちゃんがフツーなんだから、などと擁護のひとつもしたくなるところだが、そこはタフ過ぎる前向き雑草魂の持ち主。真摯に考えて、悩んで、省みて、一歩ずつ着実に真相という名の真理に近づいていく、その成長の過程が豪胆な行動とともにじっくり描かれていた。パンドラの箱に残された最後の1つを見付けるような一縷の望みを感じさせる展開である。「ここでアイツが出て来たか」という驚きのある結末も良かった。しかし、心葉クンも変わったねぇ。随分となよっちい部分がとれて、芥川君とのやおい疑惑まで生じる後輩からの人気者になっている。遠子先輩を追いかけながらも良い意味で依存を脱して自立しようとしている。最後に現れた思わぬ伏兵をどうあしらうのか楽しみである。それとも、いつの間にか出来上がっていた“心葉ハーレム”に仲間入りか?
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『僕には秘密がある。美しい秘密がある』
『二年たって僕が帰ってきたら、君にそれを話そうね』
(テオドール・シュトルム『みずうみ』)
心葉と遠子の関係の深さがあるゆえか、菜乃が居たたまれない。
それ以上に、ななせの報われなさと言ったら…。不憫。
人間は誰しもが怪物になる要素を持ち合わせている、ですよね。
心葉は強くなったなーと思ったらあれあれ?なラスト。次巻はどうなる。
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なんでしょうか。今回はあまり熱中して読めなかったような気がします。フランケンシュタインを読んでいないことも影響していると思いますが、モチーフの作品を知らないことはこれまでにもあったので、そのほかの部分だと思って振り返ってみました。
まず、いつもよりも出てくる本や文章の話題が圧倒的に少なくて、文学欲があまり満たされなかったことにあると思います。そしてこの巻が、登場人物の変曲点になっていることが大きな原因だと思います。
というのも、これから複数人の精神的成長が起こるだろうという確信がもてる巻だったからです。成長の変曲点のみを書いた文学作品には見当もつかないので、でてくる文学作品が少なかったことも納得できます。ですから、変わる前と変わった後までが書かれているのではなく、変わるきっかけの場面が引き延ばされて一冊になったという感じです。そこに、いままでとちょっと違った気持ちを抱いたのかもしれません。
それでも、最後の最後の1ページ足らずで、次が気になってしょうがないようなことが起こってしまいます。・・・ですから、次の巻が出るまでがんばって生きようと心に誓いました。
2010.1.1. 22:40 読了
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2009 12/28読了。Wonder Gooで購入(新品)。
表題作の「傷心。」もいいけれど、文化祭を描いた「怪物。」に心をかきまわされた。
怪物を理解できない菜乃がそれでも怪物に向き合っていく姿に打たれる。
結果は完全に見えているわけだけど、それでもこの見習い"文学少女"には頑張ってほしいな。
怪物を知って、そういう愛もあるなんて受け入れるよりも、理解できず時に怯えながらも友達になりたいと言い、先に進むとも言った菜乃の綺麗さを応援したい、とかなんとか。
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これぞ文学少女という感じです。
遠子先輩は出ないものの菜乃の変態ぶりや、
懐かしい面々も出てきて大満足。
でもやっぱななせだね。
彼女の不遇っぷりは泣けてきます。
しかしあの終わり方はなんだ!
続きがめちゃくちゃ気になります。
しかも次巻の前に挿話集3巻があるとか。
遠子先輩が読めるのはいいけど、次巻は夏くらい?
焦らしプレイは嫌いじゃないけど、夏は遠いなぁ。
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通常版にて本編の感想。
コラボ表紙もいいけど、こっちのが表紙も好きかも…色合いも凄く綺麗。
うん、やっぱり、菜乃ちゃんはいい!
この子は好き嫌い分かれるでしょうね、千愛ちゃんが嫉妬したように
真っ白で綺麗。
でもそんな彼女だからこそかけられる言葉もある。
綺麗事だと鼻で笑われても、「ウザイ」と言われても、
それで諦めてしまっては開かない扉もある。
その扉を開くことを諦めない菜乃ちゃんは、真っ白だからという
だけでなく、彼女のポジティブな性格によるものだということに
彼女に触れるうち皆気が付いていくのが心地よい。
何だかんだで登場人物全員が彼女に根負けしてるのがいいです(笑)。
ただ、今回、「天使」はクライマックスの某シーン以外邪魔だった
気がするぞ…
自分は今回のゲスト2人は最初から「ボク」が怪しいと思って読んでいたのですが
「天使」のせいでもう一人のイメージが中々つかめなかったよ。
そりゃこいつなら菜乃ちゃんも怖かろう、と思いますが、
菜乃ちゃんにこいつがかけた言葉はとても怖い。
そしてゲストの「ボク」もかなり嫌いなタイプですね。
この子は無意識にいじめっ子になってるタイプと思うぞ…
今回のゲストはじめこの作品で病んでいるキャラは皆
「相手への強い依存」が原因なんですよね。
ほとんどの原因がやはり「家族」に起因しているのが切ない…
前にも書きましたが「憎しみや嫉妬」は教わらなくても出せてしまうと
いうことがとても辛いですね…
本能的に「愛情」を求めるように人間は出来てるのかもと感じました。
そんな中菜乃ちゃんは「依存」があまりない。
だから強いのかもしれない。
そして「依存」が強い人間の抱く葛藤も理解するのに時間がかかる。
でもそんな彼女だから「依存」しなくても開ける道を示せる。
ななせたんが救われていくに彼女の登場は必須だったのかもとも感じます。
最終巻は「“文学少女“見習いの、卒業。」だそうです。
今回読んで余計に思ったんですが、“文学少女“見習いて、心葉君でない?
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健気で一生懸命でかわいいけど、やっぱりちょっとまっすぐすぎて近くにいたら痛いんだろうなぁ。心葉くんの気持ちはよくわかるけど、高校生であんな人の拒絶の仕方を身につけちゃだめだ。
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まあさすがに全巻読んでれば誰が何をするのか
どんな感じなのかわかっちゃいますね。
犯人とかw
このははなんであんなモテんだろう。
男にも女にも。
文学少女シリーズは稚拙すぎる表現と巧緻すぎる表現が多いイメージです。
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ともせんぱいの壊れ具合の描写が凄かった。。
続きが気になる。。後1作で終わってしまうと思うと寂しい。。
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文学少女シリーズ外伝の2巻。
見習いは3巻で完結だそうですね。
次の最終巻が楽しみです。
今回はモチーフが「フランケンシュタイン」ですが、
最初の方は面白くて先が気になったのですが、
何だか段々一寸強引に感じてきてしまいました。
現在の怪物の錯乱具合に共感を覚えられなかったからかしら?
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好きです、けどナノちゃんに逐一いらっとさせられます(笑)
私はやはりとおこが好きなので本編ファンです。
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なぜ、こうも菜乃を応援したくなるのか。
もちろん、木葉は遠子と結ばれるべきだし、周囲の登場人物も、そう思っている。
もちろん読者にも「木葉と遠子の関係に割り込む女?許せない!認めない!」と思う人はいるだろう。
菜乃の味方は、作中にも、作外にも(?)少ない。
しかし、読んでいるうちに、「文学少女」に似て非なる少女・菜乃を応援せずにはいられなくなるのだ。
それは、どんなに菜乃が努力したところで木葉の気持ちは変わることはないという安心感もあるせいなのかもしれないが、菜乃の素直でひたむきな性格が、そういう気持ちを起こさせるのだろう。
アンチ菜乃の「文学少女」ファンの人、だまされたつもりで読んでみることをおすすめします。
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菜乃の役割は、皆が幸せな結末に至るための調整弁なのだと思う。ゆえにどこまでも脇役の物語で、それがすごくいとおしくて、寂しい。
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菜乃の本の読み方が変わる所が見所‼
今まで自分がこうなって欲しいという「願望」を「想像」し読んでいた菜乃が文学少女としてまた一歩成長します。