紙の本
現実とは何か
2022/11/29 11:48
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投稿者:令和4年・寅年 - この投稿者のレビュー一覧を見る
写真を元にした取材からアフリカの現状を伝えるルポルタージュ。日本から遠く離れた土地。紛争と貧困と海外援助。一面からは捉えきれない情報がある。現実とは真実とは何か。
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表題作となっている「絵はがきにされた少年」というタイトルから、何か不幸で悲惨なイメージを思い浮かべたが、読み進めていくと、そんな気持ちが見事なほど打ち砕かれた!
通り過ぎの見知らぬ英国人が、気まぐれに撮った一枚の写真が、ロンドンで絵はがきとなり、南アフリカに出回り、11年の歳月が経ち、偶然訪れた雑貨店で、自分が写ってるモノクロ写真を目にし、その1枚を借金をし、手に入れた。儲けたかもしれないその英国人を恨む訳ではなし、対価を求める事もない、むしろ感謝してる、家宝として大事にしてると、語る老教師カベディ・タジキさん。
ピュリッツアー賞を受賞したカメラマンは、絶賛と共に、なぜ、真っ先に少女を助けなかったのかと報道のモラルを問われ「すべてを、結局、自分自身であり続けることがすべてを台無しにしてしまった」と、遺書の末尾に記し命を絶った・・・・・etc.
著者が、新聞社のアフリカ特派員だった当時、取材で出会った人々の肉声を基に11編の物語が綴られたもの。
人間としての誇り、ポジティブに生きる息づかいにが伝わってくる良書である。
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私も買った当初は「かわいそうなアフリカの本」だと思っていました。
あと、口絵写真で使われている「ハゲワシと少女」は確か中学校の社会科の授業で見た思いでがあります。
自分の中のいやらしいバイアスがぐりぐりとえぐりだされる感じの本です。
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何かでタイトルを目にして、読んだ。クッツェーの「マイケルK」を読んだ直後ということもあって、南アフリカとその他のアフリカ諸国を知ることができれば、と期待したけど、ハズレ。文章がいけてないし、主観と憶測だけで書いていて、「事実(ここでは、アフリカ人の心の動き。この点は、アフリカ人は、開けっぴろげに本心を見せない、とエクスキューズされているのだが)」に迫れていない。ジャーナリストや記者で本にまとめられるほどの文章力をもつ人ってそういないよね、な一冊。残念、断捨離本。
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特派員としてアフリカで5年半過ごした新聞記者によるアフリカをめぐるエッセー。アフリカ=貧困、悲惨といったステレオタイプに陥りがちな報道ではない、筆者がその眼でみた現実にが淡々と綴られています。「絵はがきにされた少年」も、それだけ聞くと植民地時代に虐げられた少年の姿をイメージしてしまいますが、実際はそんな単純なものではありません。この本を読むと、私たちのアフリカに対する思いもより一層複雑なものに変わります。ピュリッツァー賞を受賞した有名な写真「ハゲワシと少女」をめぐる話、鉱山での労働について語る老鉱夫の話など、今まで漠然と抱いていたイメージが覆されることも多いでしょう。
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メディアなんかで盛んにアピールされていて、植え付けられた一般的なイメージが払拭された一冊。
当たり前だけど文化や思想の多面性、歴史的背景などなど、新鮮でした。あまりにも一辺倒な情報だけ垂れ流されていて、それでアフリカを理解した気になっていたのかもと気づかされた。
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私たちが思い描く「アフリカ」から一歩踏み込んだノンフィクション。貧困や紛争そのものではなく、その中の人々について書かれています。読みかけを放置してたので、後半に印象が残ることになったけど、中でもルワンダについて、更に知りたくなりました。
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大自然と野生動物に囲まれた雄大な大地。そして、それと対を
なすように語られる貧困と支援。アフリカ以外の国の人たちが
思い浮かべる典型的なアフリカのイメージ。
だが、それだけでアフリカを語っていいのだろうかという問題提起が
なされている。
先進国が考える援助が、本当にアフリカの為になっているのか。
現地で支援を受ける人たちは、本当にそれを必要としているのか。
例えば日本から自衛隊も出動したソマリア海賊の問題がある。彼らを
退治したり、彼らから輸送船を守るだけで問題は解決するのか。
そもそもは欧州から持ちこまれた産業廃棄物がソマリア沖に不法投棄
されたことで漁場が荒れ、漁民たちの収入が経たれたのではないか。
例えば子供の労働力の問題がある。学校にも行かず家計を助ける
為に働く子供たち。それを児童虐待だと先進国が騒ぎ出す。
子供たちは職場から締め出されるが、学校に戻るのではない。もっと
環境の悪い路上での商売を始めるのだ。
貧しいから可哀想。それはモノが溢れる地域の傲慢な思いなのかも
しれない。貧しくとも幸せな生活はあるのだろう。
著者が特派員生活の中で感じたことや、アフリカの人々から聞いた
話をエッセイ風にまとめている。読みやすいが読後には心にずしりと
重い何かを残す作品だ。
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アフリカを舞台にしたドキュメンタリー小説
読むキッカケはブログ「見えない道場本舗」の記事
・世に「結論先の取材」はつきまじ~「中国嫁日記」から「絵はがきにされた少年」まで。
で引用されてた新聞社の編集者の石川さんが魅力的だったから
見えない道場本舗の記事を読んだほうがオイラの案内よりも読みたくなると思うけど一応、、、
有名な写真「ハゲワシと少女」を撮影した男のはなしから始まる11編
フィクションでもノンフィクションでも物語を決めてから取材したり取材中に物語にハメこむようにしたりするもだけれど11編どれもがアフリカに住み続けている男または女の言葉に作家本人が揺れちゃうところが、短編ということもあるけれども読みやすい
そして、自分の息子との会話や奥さんが強盗に巻き込まれたはなしもあって、なんだか具体的で感情に近い部分でグッとくる
作家本人が気に入る、気になる男達は顔のシワが人生を語っているタイプでいい味系の顔分類法でいうとカッコイイタイプだと思う
そんな男たちは黙ってる時間も長くて、黙っている部分に作家はナニかを物凄く感じてる
そのナニかってのがアフリカに対する目線とアフリカに住みつづけてる人の目線が交差してないところなんじゃないかと
これから交差することがないんじゃないかっていう
話を聞いてる作家が現場にいるのに外野の人間だって意識しちゃうことが文字になってて面白い
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第3回開高健ノンフィクション大賞受賞作。アフリカ駐在記者の筆者による本作。知識として知らない事象も多く、また、「アフリカの国」というものに対して何も知らない上に、なんとなく画一的なイメージをもってしまっている先進国の私に、ひとつの示唆を与えてくれるような内容。文章は読みやすく、読んで何か残るという意味では◎。ルワンダ虐殺なんてつい最近のことなのに内容すらろくに知らかった自分が恥ずかしい。
著者もかいてあるように、タイトルもひとつのモデルケース。
「絵はがきにされた」少年(今は老人)は、決して被害者意識などなく、前向きに絵はがきになったことを喜んでいた。
慄然と存在する人種差別や貧困の複雑な実態に対し、先進国のマスコミに主導される勝手な先入観は、表面的な解釈のための自己満足でしかない。 ・・・ということを等身大の体験を通して伝えています。
>以下本文より引用
漠然と無数の人々への援助を考えるよりも、救うべき相手をまず知ることから始めなければならない。先進国の首脳会議などの会場を取り囲み、「貧困解消、貧富の格差の是正」を叫ぶ若者たちがいる。こうしたエネルギーを見ていると、一年でいいからアフリカに行って自分の暮らしを打ち立ててみたらいいと思う。一人のアフリカ人でもいい。自分が親しくなったたった一人でいい。貧しさから人を救い出す、人を向上させるということがどれほどのことで、どれほど自分自身を傷つけることなのか、きっとわかるはずだ。一人を終えたら二人、三人といけばいい。一般論を語るのはその後でいい。いや、経験してみれば、きっと、多くを語らなくなる。
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ハゲワシの前でうずくまる少女の写真を撮ったフォトジャーナリストの自殺の背景や、アフリカ南部の国々を歩いた著者の、とても興味深い一冊でした。
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アフリカってアフリカとしてまとめて考えてしまいがちだったけど、少しだけそれぞれの国の形を浮かび上がらせてくれた。
旅行記と違って、実際に暮らして職業として取材した内容なのでしっかりしてる。何より、土地を歴史を文化を人の感性を理解しようという意志がしっかり伝わってくる。
文章はとりとめない気がしないでもないが、わかりやすいテーマ性やメッセージ性を付与するのが好きじゃないと文中で述べているので、まあ恣意的なんでしょう。
多くの不幸は無知と偏見から生まれる。つまりは無関心。納得。
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毎日新聞の記者である藤原氏による、アフリカを題材にしたエッセイ11編が収められている。
僕等はつい、アフリカという地域を一括りに考えてしまいがちだが、国や民族によってかなり気質の違いがあるようだ。実はゲバラが主導したコンゴ革命も、コンゴ人の意識があまりにも低いので、ルワンダ人が活躍したらしい。
そのルワンダの中でも王族を中心としたツチ族と、民衆を中心としたフツ族が対立し、悲惨な内戦を繰り返している。民族間の違いについて、地元の人はあまり多くを語らないが、きっと何か歴史的な背景があるのだろう。
本書では貧しい国や地域に対しての、援助の在り方にも触れている。受け取る側にも尊厳があり、まずは相手を知る事が重要なのだそうだ。
マスコミに切り取られた断片のような報道を鵜呑みにせず、自分なりの方法で調べ理解する事が大切なのだと思った。
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著者は、毎日新聞記者のジャーナリスト。本書は、1995~2001年のヨハネスブルグ特派員時代の取材をもとにしたノンフィクション短編11篇が収められ、2005年の開高健ノンフィクション賞を受賞している。
取り上げられたテーマは、表題作の、子供の頃に英国人によって撮影された写真が絵はがきとして売られているのを見つけたレソトの教師、ピュリツァー賞受賞作品「ハゲワシと少女」を撮影した後自殺した南ア生まれの欧州人カメラマン、自分の妻が遭遇したカー・ジャック事件や日常的に発生する婦女暴行事件を引き起こす南アの黒人たち、アンゴラでダイヤモンド取引に係るカブリート(黒人と白人の混血)、コンゴでアフリカ革命を志したチェ・ゲバラと同時代に生きたルワンダの王族、ルワンダのツチ族とフツ族の争いの中で生き続けてきたフツ族の老人など、サブサハラの国々に生きる様々な人々である。
そして、メディアの多くは、そうした人々に、「ここにも一つのアフリカの悲劇がある」、「民族の不幸は終わらない」、「虐げられた者たちの叫びが、そこにあった」というような、わかりやすい“見出し”を付けたがるが、著者は、「やっかいなのは、はっきりと言い切れないことに、意味づけを求める人が結構いることだ。・・・だが、私はわからないことは胸につかえたままでいいではないか、と、思う方だ。現実を現実として放っておく方だ。答などないにしても、いずれは、それに一歩近づくときが来る、と思うからだ」と語り、ありきたりの一般論によって安直な結論を提示しようとはしておらず、そのスタンスに共感を覚える。
最後のフロンティアとして注目されるアフリカ、特にサブサハラについて、現在の表面上の姿は固より、整理された歴史でだけでは到底わからない側面を描いた、優れたノンフィクション作品と思う。
(2015年10月了)
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アフリカで新聞記者の特派員だった著者による、アフリカ考察。主に現地人と入植者の確執や人種差別問題などを、現地人や白人系アフリカ人にインタビューしながらノンフィクションにしたもの。特に南アフリカは本当に複雑な問題を抱えているな、と改めて暗い気持ちになった。
1994年のルワンダの大虐殺のことも書いてある。一番興味深かったのは、キューバ革命で英雄になったチェ・ゲバラがアフリカ各地で革命を起こそうとしていたというところ。彼がキューバで成功した後、アフリカも変えようとしたが、現地人がイマイチ乗り気にならず、計画はあきらめて失意のうちに南米に戻ったというのを初めて知った。また、援助されることに対するアフリカ人の意識も、なるほどと思いながら読んだ。
学ぶことが多いが、正直なところ、読んでいて気持ちが良いとは言えない一冊。