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常識の敵対者
2011/01/25 18:28
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ももんじゃ05号 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1 本書は、18世紀のロンドンを舞台に、ハンターという名前の医者が、病気を治すため、また、科学の発展のため、身を粉にして働くという話である。
2 …というと、なんだかドラマにもなった仁みたいだが、ハンター先生、もっと楽しい人である。夜な夜な墓場に現れては、死にたての死体を掘り出して、日夜解剖、病理検査に明け暮れるのである(このため本書は、臓器や治療の描写多し)。
しかも、ところはヨーロッパ、時期はまだまだ18世紀である(多分、1770年代)。教会の影響は強く、人々は迷信深く、ハンター先生の行いはキリスト教の中では、悪魔にも比肩する行為であった(死体を損壊してしまうと世界の終りに復活ができなくなるから、ものすごく嫌われた)。また、ときどき博物学のため収集した猛獣(虎とか)が逃げ出したり、かなり迷惑な人である。
しかし、ハンター先生、教会や他の学者あるいは近所の善男善女にがたがた言われたくらいでひるむタマではない。人間以外にも博物学全般に興味を示し、今日も今日とて解剖にいそしむのである。
3 なんだそんなの、気持ち悪いとおもわれる方、ごもっともである。作者も、ハンターが隣に住んでたら引っ越すと言っている。
しかし、この人、ただの迷惑なおっさんかといえばさにあらず。当時、ロンドンは、公衆衛生などと言う崇高なものはなく、民衆の栄養状態は悪く、また、有益な薬は少なかった。医者は、ほとんどがギリシアやアラビアの古典教育を受けてきいるが、やることといえば、もっぱら瀉血か、浣腸くらい。症例を見て、処方するなんてことはなかった。結局のところ、解剖なんてことは全然やっておらず、人間の体の構造なんか理解してない。まともに診療できなかったのである(年間に解剖用に供される死体は、死刑囚の死体で6人分でしかなかった)。
これでは、助かる命も助からない。そこで、ハンター先生、常識に基づく世間の批判を向こうに回し、今日も今日とて解剖に励むのである。
4 さて、本書の主人公ハンター先生だが、名前はハンターって作ったようだし、人間性もアレだし、架空の人物じゃなかろうかと思うだろうが、恐ろしいことに、実在した人物である(ジキル博士とハイド氏やドクタードリトルのモデル)。ぶっとんだ登場人物も、多くは実在の人物である。18世紀は、イギリスが坂の上にのぼる時期だったので、多彩な人材を輩出した(とんでもない人も結構いたが)。しかし、この多彩な人材は、常識にぶつかった。当時の常識は、科学的な裏打ちのないものも多かった。このため、当時の先進的な科学者は、誤った常識(ありていにいえば世間)を敵にまわさねばならなかったのである。いろいろ命懸けですなあ。
5 なお、蛇足ながら、本書の漫画を描いておられる黒釜ナオ氏は、安彦良和氏、吾妻ひでお氏のアシスタントをしていたそうな。また、濃いところを…。