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商品説明
いまだ人を斬ったことがない貧乏御家人が刀を抜くとき、なにかが起こる。第18回松本清張賞受賞作。【「BOOK」データベースの商品解説】
【松本清張賞(第18回)】賄賂塗れの田沼時代から清廉な松平定信への過渡期。御家人3人の剣術仲間を巻き込む辻斬り「大なます」。いまだ人を斬ったことのない貧乏御家人が刀を抜くとき、なにかが起きる…。傑作時代ミステリー。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
青山 文平
- 略歴
- 〈青山文平〉1948年神奈川県生まれ。早稲田大学第一政治経済学部経済学科卒業。経済関係の出版社に18年間勤務した後、経済関係のライターとなる。
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紙の本
重荷を強いられる読書
2011/12/18 23:32
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
個人的にややこしい読書体験になってしまった。
一言で言えば期待したものではなかったということだが、つまらなかったとか、レベルが低いということではないからややこしい。
作家の力量は相当なものだろう。だてに松本清張賞を受賞してはいない。まず文章がいい。流れるようなものではなく、かみしめるような、心地よい重みを感じさせるものだ。そして話がわかってくると、この文章の重みは、そのままテーマに結びついているのだとわかる。つまりリアルなのである。この小説のテーマとは、下級武士の貧窮という素材を使って、つまるところ生きることの厳しさ、重さのようなものだろう。そうした重さが、主人公、村上登らの道場で行なう、流行らないが実戦的な木刀による形稽古として現れ、刀を抜くことの並々ならぬこだわりとして現れ、そしてこの文章の重みに現れている。文章の重みは、真実の重みである。
ところが、それをもってして厳しい現実を乗り越えていく話と早合点したこちらの予想は、最終的に裏切られてしまった。
ストーリー自体に立ち入るわけには行かないが、私の理解では、物語の帰結は、現実を乗り越えることにではなく、これを受け入れ、背負うことにある。これらは似て非なるものである。そして辛い。
そしてこうしたスタンスに共感できるかどうかが、この小説を楽しめるかどうかの分かれ目ではないか、という気がする。私は共感できなかった。読者の共感をいざなうには技術的な問題もあると思っているが、それ以上に最後は世界観の違いのようなものだろうと思っている。ということは、こう言っては身も蓋もない気はするのだが、好みの分かれる物語ということだろう。
私には現代もののミステリーなどによく見られる結末の展開は、ドロドロした苦しいものと映った。個人的に時代小説には微妙に違ったものを求めているので、違和感は強かった。ネットの読者評などでは評価はわりに高いから、おそらく共感する読者は多いのだろうが、しかしそうではない場合もありえること、かつ、その分かれ目は、前半からは予測しにくく、ある種の危険を伴うとだけ言っておきたい。