紙の本
不思議な世界を内包し、必ず驚かせてくれる短編集
2011/08/28 19:11
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
少し不思議な世界を内包する7つの短編集。
植物園に鰐に会いに行く「植物園の鰐」。
強行シンガポール旅行で知り合うフィリピン人男性の話、
「シンガポールでタクシーを拾うのは難しい」。
同性に恋する放課後に現れる生徒を描く「ゴセイト」。
天井のシミをモチーフに絵を描く男と部屋を交換する
「天井の刺青」。
幼馴染と夏のドライブ旅行に行く
「ポジョとユウちゃんとなぎさドライブウェイ」。
夫婦で鼻談義をする「コワリョーフの鼻」。
東京出張の際にホテルの部屋に現れた外国人女性と
東京でいちばんいいところに行く「東京観光」。
特に「ゴセイト」
「ポジョとユウちゃんとなぎさドライブウェイ」
「東京観光」がいい。
たとえば表題作の「東京観光」。
おそらく地味に暮らしていると思われる、
保険外交員の女性が、会社のご褒美に東京での研修を
受けに行きます。その時泊まった古いホテルには
外国人女性が勝手に泊まっていました。
このホテルの元従業員の彼女は
すべての部屋の合鍵を作っていて
クビになってもそのまま居ついていました。
夜、仕事に行く前に部屋を整えれば、ばれないと言います。
そんな奇妙な二泊の物語。
研修を終えた「私」は彼女と出かけます。
東京の名所はひとつも見ないし
お土産も「東京に行ってきました!」というものでもない。
でもしみじみ、こんなこともいいなあ、と思えます。
絶妙な登場人物の人柄と舞台設定、そして
びっくりする出来事がひとつ、ふたつ起こって
楽しませてくれる短編集でした。
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表題作を特に期待して読んだ短編集だったが、全般的に新鮮味が薄い。やや面白いと思ったのは「鼻」を題材とした一遍だけだったのが残念。
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下階に住む男性と部屋を短時間交換する女性、植物園に棲むワニを探す人、ホテルに潜むジャパユキさん、鼻がもげる人 ちょっと変な登場人物が淡々と書かれているので、不思議な世界を覗き見している様な感覚になります。
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中島京子さんは「出たら読む」作家さんです。(*^_^*)
ただ、彼女はよくも悪くも(汗)たくさんの引き出しをお持ちの方のようで、作品によって、すっごく好きだったり、こんなお話も書くの??と肩透かし感もあったり。
今回はいろんな媒体に書いた短編集、ということで、ベタにリアルなものと不思議話が統一感なく投げ出されている感じだったけど、幕の内弁当を食べるつもりで、うん、こんな一冊もいいかなぁ、と楽しむことができました。
・植物園の鰐
・シンガポールでタクシーを拾うのは難しい
・ゴセイト
・天井の刺青
・ポジョとユウちゃんとなぎさドライブウェイ
・コワーリョフの鼻
・東京観光
「植物園の鰐」も鰐に会いたくて前のめりに進んでいくタミコが面白哀しくてよかったけど、「ゴセイト」が一番好きだったかな。
ゴセイトとは、主人公の女の子・“わたし”の中学時代、一人でいる子の前に放課後だけ現れる生徒たちのこと。ちゃんと当時の生徒たちには共通認識としてあって、でも、不登校の生徒なのか、卒業生なのか、それとも死んでしまった生徒の幽霊なのか、誰も知らない、というか、気にしていないという設定なのがよかった・・・。
わたしの前に現れるのは古野くん、という男の子。
おっ???ということは、これは恋のお話??なんて、夢見る元中学生女子は思ってしまうのですが、その古野くん、全然カッコよくないし、話の内容も主人公曰く、おじさんぽい。(私はむしろ、レロレロに話が飛ぶ危うさを感じたんだけど。うん、まさに夢の中の話のようにね)
で、その彼がある男の子を好きになってその相談に乗る、という展開が妙に面白くて。
ネタばれです
結局、古野くんは失恋。
というか、全て読んでしまってから、あぁ、結局、古野くんは“わたし”の分身で、分身だったら女の子に設定するのが古来の手法だろうに、今の子ってそんな一本道には身をゆだねないのね、と気付く面白さと哀しさがよかったです。
ネタばれ終わり
「東京観光」では、東京でいちばんいいところ を主人公に教えてくれる、主人公が泊まったホテルの部屋に密かに住みこんでいた!!海外から出稼ぎにやってきてるマリアナが好きだったし、なんか、チリっと引っかかる寂しい人たち、今いるところに少しだけ違和感を抱いている主人公たちのお話、という意味では、そっか、統一感はあったんですね・・・。
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中島京子さんの短編集、7編。
植物園の鰐 追い詰められたタミコは鰐に会いに植物園へ
一風変わった人々に出会います。
シンガポールでタクシーを拾うのは難しい 結婚5年目のシンガポールへの記念旅行中の出来事 妻の思うことがいちいち納得がいっておもしろかった。
ゴセイト わたしがティーンエイジャーだった頃の放課後だけに現れる「ゴセイト」と呼ばれる生徒との思い出
天井の刺青 同じマンションに住む女と男。男は女に部屋の交換を提案。失恋したばかりの女とストーカー男の行く末は。
ポジョとユウちゃんとなぎさドライブウェイ この話も良かった。青春だねぇ。
コワリョーフの鼻 夫から聞いた「鼻がとれる話」。妻は激しく動揺する。
東京観光 人生で一度きりの東京旅行。ホテルには先客が。彼女との東京観光は他人が聞けばつまらない内容。広場にある灰色の公衆電話で永遠に無くならないテレカで出稼ぎの女たちが故郷へ電話している。
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なさそうでありそうな不思議な7つの話が詰め込まれた短編集。
独自のセンスで不思議なお話を紡ぎだす中島さん。短編でも発揮されるその魅力はホンモノだ。
どれもこれもちょっとしたシニカルな中にユーモアを潜ませたテイストは小説好きの心をくすぐる。それぞれ、注文を受けた媒体の読者層を意識した内容で、職人的気質を思わせるような仕事ぶり。
著者本人もあとがきに書いているように、これは中島作品のアソートボックスのような一冊。あれこれ好みのものをチョイスして楽しんで読めば良いのでは、、、
収録作の中でも秀逸なのは「コワリョーフの鼻」。「Re-born はじまりの一歩」(実業之日本社)に収録されていた一作で、初めて読んだ時にその内容に驚愕して、真偽と事実関係について図書館中を調べまくった記憶がある。それくらい人をうまく騙してくれるのが中島さんだ。
「ポジョとユウちゃんとなぎさドライブウェイ」も面白い。
表題作の「東京観光」もどこか読後に余韻が残る一編。いかにもあり得そうな独自の世界だ。
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最近私がよく見る、謎めいた旅先で迷子になってさまよう夢を思わせる作品集。海外での落ち着かない少し不安な気分、旅の友にたいするイラッくる気分などを思い出させる。『鼻』がスリリングで面白かった。
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どこか、現実離れしたファンタジーのような短編が並ぶ。不思議な話ばかりだけれど、根底に流れるものはどこか暖かな感じがする。
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いろんな味わいの短編が7篇。「シンガポールで…」から面白くて一気に加速しました。放課後に現れる生徒、「ゴセイト」が好きです。不思議な世界とありふれた日常が交差して楽しめました。
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日常にありそうでない不思議ワールドを描いた短編集。 奇妙な味わいのものから青春っぽさを感じさせるものやホラー風味なものまでいろんなテイストがありながらすべてが独自な中島京子ワールドなのが素晴らしい。短いけれど濃厚な味わいを堪能できます。
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恋情、妄想、孤独、諧謔…中島京子ワールドへようこそ
女の部屋の水漏れが、下に住む男の部屋の天井を濡らした。女が詫びに訪れたのをきっかけに二人は付き合い出し、やがて男は不思議な提案をするが・・・。(「天井の刺青」)。直木賞作家が紡ぐ珠玉の7篇。
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表題作のほか、「植物園の鰐」 「シンガポールでタクシーを拾うのは難しい」 「ゴセイト」 「天井の刺青」 「ポジョとユウちゃんとなぎさドライブウェイ」 「コワリョーフの鼻」
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どの物語の主人公もとても真っ当な人たちである。その主人公に近づいてくるのが少しばかり一般の尺度に当てはまらない人たちだというだけである。だが、それだけで物語りは思ってもみない展開を見せるので目を瞠ったりわくわくしたりさせられる。もしかすると主人公たちにちょっと変わったものを引き寄せる何かがあるのかもしれない、いやきっとそうなのだ、という思いが確信めいてくる。日本のどこかできっと毎日同じようなことが繰り広げられているのだろうな、と人知れずにんまりしてしまう一冊である。
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「誰かと一緒にいて、温かい気持ちになれないときはなにかが間違っている」~『シンガポールでタクシーを拾うのは難しい』より。
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短編。
本のデザインが素敵♪ 短編の表題下のイラスト(?)も個性的でゾクゾクしました。うーん、好みだわぁ。
7作品収録されていたが、特に『天井の刺青』と『ボジョとユウちゃんとなぎさドライブ』がお気に入り。
水漏れを起こしたのがきっかけで下の階の人と顔を合わせるようになる。→うーん、あるある。水が漏れてきた方(下の階の住人)の経験アリ。顔を合わせるようになったら、親しくなりそのうち変なお願いをされることに。1日部屋を交換してくれって言われるのよ。
ええー! 普通、断るよね。が、物語ではこの提案を受け入れるのです。まぁ、人のカバンの中身とか興味あるわけで、部屋もまた然り。特に変人でなければちょっとくらいと思ってしまうかも。そう、関係を持った男性なら1日くらいと思ってしまうような気もする。などという心理をうまくついた物語の展開でして。いやいや、不思議な空気感が最高な『天井の刺青』。
もう1作は、ボジョが男の子だと思っていたら、ユウちゃんの女友達だったことにビックリ。ユウちゃんに振り回されすぎ。男友達ならわかるけど、女友達なら言うことは言わないと!
どれもこれも独特の世界が体感できる。好きだわ〜。
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【収録作品】植物園の鰐/シンガポールでタクシーを拾うのは難しい/ゴセイト/天井の刺青/ポジョとユウちゃんとなぎさドライブウェイ/コワリョーフの鼻/東京観光
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タイプの違ういろんな作品が集められた短篇集。とても不思議な話や、夫婦の危機を乗り越える話など、どの話も興味深く読めました。