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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2011.8
- 出版社: 創元社
- サイズ:26cm/191p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-422-70036-6
- 国内送料無料
紙の本
「盗まれた世界の名画」美術館
美術品盗難による被害額は、地下経済において痲薬・武器輸出に次ぎ、今も多くの名品が世界中で消えている。商品としての美術、盗まれた美術品を取り戻す仕事など、美術界の知られざる...
「盗まれた世界の名画」美術館
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商品説明
美術品盗難による被害額は、地下経済において痲薬・武器輸出に次ぎ、今も多くの名品が世界中で消えている。商品としての美術、盗まれた美術品を取り戻す仕事など、美術界の知られざる世界を描く。行方不明の美術品一覧も掲載。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
サイモン・フープト
- 略歴
- 〈サイモン・フープト〉カナダの新聞『ザ・グローブ・アンド・メール』で美術と文化のコラムを担当。ニューヨークを拠点に活動。美術とオークション界の奇妙な内容を取材し、美術取引の金の流れを調べている。
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書店員レビュー
悪行はびこるこの世界...
MARUZEN&ジュンク堂書店札幌店さん
悪行はびこるこの世界で、手っ取り早く巨額の金を手に入れられる犯罪行為とは何だろう?
世界の名だたる美術品を強奪し、売りさばく。
その被害額は、麻薬・武器輸出に次いで第3位にものぼり、地下社会においては重要な一大産業として横行している。
本書は数多の盗難事件について、犯罪小説のごとく、その手口や動機にまで迫っている。
美術品の盗難といっても、ケースは多種多様である。
古くはナポレオン侵略戦争による略奪。転売目的や、コレクターの蒐集目的の犯行。
フセイン政権崩壊後、無法地帯となったイラクでは、市民や兵士によって沢山の美術品が奪われた。
巻末には盗難の被害にあい、未だ行方知れずの“行方不明美術館”を収録。
西洋美術史を一望できるような名品ばかり。これらが行方不明とはいたたまれない。
また、表紙にはちょっとした仕掛けが施されている。カバーの額縁の中が切り抜かれており、
はずすと額縁は空っぽに、白く塗りつぶされた本体にはフェルメールの「合奏」がぽっかりと浮かび上がる。
この名画も行方不明となっている美術品の一つである。
芸術担当 伊藤
紙の本
世界の行方不明美術品一覧も掲載
2012/04/08 18:28
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画やアニメに登場する美術品泥棒は、優雅な存在として描かれがちだ。しかし、実情はまったく異なるようだ。本書は古今様々な美術品の窃盗について、犯行の様子や被害の状況などについて教えてくれる。
美術品の窃盗には様々な形態がある。想像しやすいものとしては、マフィアのボスが手練れに窃盗を実行させ、謝礼を渡すといったところだろうか。もちろん、そのような形態も実際にあるらしい。ボスは自らの鑑賞を目的とする場合もあれば、転売を目的とすることもある。しかし、実際にはこんな単純な話ばかりではない。
1953年、オーギュスト・ロダンのブロンズ像を盗んだ美学生は、しばらくそれと一緒にいたかったという犯行動機を明らかにし、すぐに盗品を返還したという。さらに2005年に20歳のチリ人美学生もまたロダンのブロンズ像に手を出したが、その動機はサンチアゴ国立「美術館の無防備さを証明しようとした」(84頁)だけだったとか。
内部犯行ということもある。美術館勤務者が、その美に心を奪われて犯行に及ぶケースや単に上司を困らせることを目的とした幼稚な犯行もあったそうだ。
手口も様々だが、フィクションのように鮮やかにはなかなかいかない。銃器を手にガードマンを脅す強行突破型もあれば、絵をカットとして持ち出す本末転倒型もあるとのこと。窃盗にあった美術品は損傷を受けていることがあるが、それは犯行時の場合が多いようだ。
さらに本書には国家単位の犯罪形態も紹介している。戦争だ。サダム・フセインが失脚した時、イラク国立美術館からメソポタミアの文化遺産が強奪されたことは記憶に新しい。また、ナポレオンやヒトラーによる美術品収集も有名な話だ。しかし、今後注視していかなければならない国家的強奪は別のところにありそうだ。
ヨーロッパやアメリカの名だたる美術館や博物館には世界各国の美術品や文化遺産が収蔵されている。それらに公然と展示され、人々の目を楽しませている。しかし、その全てが合法的な手段により、国家間の合意のもとで手渡されたものとは必ずしも言い切れない。それはエジプト考古局がドイツ政府に対して出したネフェルティティ胸像の返還請求を見ても明らかだ。
このような事態に対してイギリス大英博物館長ロバート・アンダーソンは「大英博物館は国境を越えている。英国文化の博物館ではない。世界の博物館である。その目的は、あらゆる時代、あらゆる場所の人類の遺産を展示することである。文化的な賠償という考えはこの方針に反するものだ」(28頁)と述べている。そして、この方針にヨーロッパ各国やアメリカの美術館、博物館は同調しているという。
この主張は正しいのだろうか。文化は地域的、歴史的環境が長い時間をかけて育んで形成されるもの。それは人工物以外にも多くの要素から織りなされている。人工物でも人目に魅力的にうつるものだけを切り取って展示することで、そこから得られるものの大きさはどれほどだろうか。やはり文化遺産はそれを育んできた地域にあることで大きな意味を持つのではないか。
フィクションとして描かれる美術品窃盗の場合、誰も傷つけない犯罪という筋書きが多い。しかし、実情は異なる。個人だろうが国家だろうが、美術品の強奪はそれを強いられた側に大きな失意をもたらす。窃盗を受けたまま、空っぽの額縁を掲げ続ける美術館は、その行為で失意の大きさを表現することがあるそうだ。本書には様々な美術品や文化遺産の窃盗事例が描かれており、それが今も膨張し続ける重大な問題と明示されている。どこから美術館で絵が盗まれても、その被害金額に驚くくらいでなかなか重要な問題と受け取れずにいたが、本書は問題の重要性を実感させてくれた。ぜひ一読をお薦めしたい。
紙の本
スリリング
2022/06/04 13:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ルノアールの「会話」、「若いパリの女性」の窃盗のあらましには、手に汗握るものがある。それ以上に、どのようにして取り戻したかがスリリングだ