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商品説明
「私はもう、友だちは持たないでしょう。あなたが最高だったから」(美空ひばりへ中村メイコから) 悲しみの場で紡がれた珠玉のフレーズ51本を厳選して紹介し、発言者の思いや故人の人となりを解説する。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
サヨナラだけが人生だ
2011/11/24 08:13
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨年の春母が亡くなった際に知り合いの婦人にお別れの言葉を話してもらった。婦人は「おばちゃん」と母の遺影に語りかけた。
この時、どんな言葉よりもこの「おばちゃん」という呼びかけに、生前の母の人生のほとんどが集約されているように感じた。
「おばちゃん」と人から親しまれていた母。その言葉にお節介で世話好きで、豪快な、母の人柄が込められているようだった。
弔辞あるいはお別れの言葉は、遺されたものたちの悲しみを癒してくれる。同時に、遺されたものたちが忘れていた故人の一面に気づかされるときもある。
弔辞あるいはお別れの言葉を集めた本は意外にたくさん出版されている。その言葉に悲しみをうめる何がしかを読みとろうとする読者がいるのだろう。
本書は「仕事柄、芸能人の冠婚葬祭に出席する機会は多い」演出家で編集者の高平哲郎が、すでに出版されている単行本やお葬式の状況を伝える雑誌や新聞の記事から弔辞あるいはお別れの言葉を集めたものだ。それぞれその抜粋の一文の紹介があり、それに高平が解説、というかエッセイ的な文章を書いている。
夏目漱石の死に寄せた芥川龍之介の文章もあれば、今年惜しくも亡くなった原田芳雄の葬儀の石橋蓮司の弔辞まで取り上げられている。
原田芳雄といえば、彼の弟のような存在であった松田優作の葬儀に「役者なら生き返ってみせろ!生き返ってこい!」と悲痛な呼びかけをした原田自身が送った弔辞も収録されている。今頃二人は天国でお酒でも飲みながら、語り合っているのだろうか。それもまたドラマのようである。
高平は「悪い弔辞にはなくて、いい弔辞には必ずあるもの」として「故人の「愛」にほかならない」と書きとめている。
どんな表現であれ「愛」は言葉の端々ににじみでてくる。本書でも紹介されているが、ちょうど井伏鱒二の詩の一節、「サヨナラだけが人生だ」がそうであるように、「愛」は悲しみの底からもあふれてくる思いなのだ。