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紙の本
君は『仁義なき戦い』を観たか
2012/04/21 10:43
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
先日やくざ映画の名作と評価の高い、鶴田浩二主演の『博打打ち 総長賭博』を衛星テレビで観た。1968年の東映映画である。監督は山下耕作。
人気はあったものの、所詮はやくざ映画というレッテルが世評であったところ、あの三島由紀夫が「名作」と評したことで、高い評価を得た作品である。
親、兄弟、おじ、そういったやくざの血脈に刃向い、最後は「任侠道か…、そんなもん、俺にはねえ…俺は、ただの人殺しなんだ…」とつぶやく鶴田浩二演じる主人公に、観客たちは拍手を惜しまなかった。
この作品の5年後、まさにこの時の鶴田のせりふそのままに、ただの「人殺し」たちを扱った「実録シリーズ」が映画館を満員にする。それが、深作欣二監督の『仁義なき戦い』であった。
脚本は、『博打打ち 総長賭博』と同じ、笠原和夫。笠原の心の奥底には、鶴田の発したセリフはいつまでもリフレインしていたにちがいない。
それでいて、『仁義なき戦い』があれほどに高い評価を得、人気を集めたのにはわわけがあるはずだ。
本書は公開から40年近く経って、今なお熱く語られるさまざまな『仁義なき戦い』を、出演者たちのインタビュー(監督の深作をはじめ、出演者たちの何人かはすでに鬼籍となっているが)と映画のなかの珠玉の名セリフ、さまざまなコラム、ポスターコレクションなどを取り上げ、読者にあの当時の興奮を呼び起こすMOOKとなっている。
個人的にいえば、シリーズ第2作めの『仁義なき戦い・広島死闘篇』(1973年)がもっとも好きだ。北大路欣也演じる青年の行き場のない生きざまは、当時18歳の青春前期の若者の心をゆさぶった。
暴力団員でなくても、青春期とは常にどこかに追い詰められている。それはもうやくざ映画を超越した青春映画といっていい。
シリーズ全体が戦後の広島という場所でもやくざ抗争を描きながら、思えば戦争という身勝手な国家のたくらみに操られた若者たちのその後を、娯楽性を持ちながら、ここまで描ききった作品群はない。
『仁義なき戦い』というシリーズを同時代的に共有できた者たちは仕合せだ。
もうあの頃には戻れないとしても、こうして一冊のMOOKがアルバムのようにある。