パトロネ
著者 藤野可織 (著)
第149回芥川賞作家が描くシュールでリアルな世界。同じ大学に入学した妹と同居することになった「私」。久しぶりに会った妹は意図的に「私」を無視し続ける。写真部に入部した妹を...
パトロネ
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商品説明
第149回芥川賞作家が描くシュールでリアルな世界。同じ大学に入学した妹と同居することになった「私」。久しぶりに会った妹は意図的に「私」を無視し続ける。写真部に入部した妹を追うように「私」も入部するが、妹はやめてしまい、やがて奔放な生活を始める。しばらく家を空けていた妹は、戻るなり規則正しい生活を始めた。しかしある日、妹は荷物とともに姿を消してしまい……。中年主婦VS双子の悪魔を描いた第141回芥川賞候補作「いけにえ」を収録。
著者紹介
藤野可織 (著)
- 略歴
- 1980年京都市生まれ。同志社大学大学院美学および芸術学専攻修士課程修了。2006年「いやしい鳥」で文學界新人賞受賞。
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「怖い」以上に仕掛けの楽しさ
2013/09/10 16:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
先ごろ芥川賞を受賞した藤野可織さん。
受賞作は未読だが、紹介を読むと、
語り手とそれが見る周囲の世界との関係の設定が独特だ。
どうやらこの作家の語り手は、文学批評でいう「信頼できない語り手」のようで、
なかなか油断はならない。
表題作「パトロネ」でも、いかにも変な語り手が登場する。
もちろんだからわけがあって、ここは仕掛けを楽しむ読書。
妙な雰囲気の話が展開して、わかりにくい面はあるが、
仕掛けに気付くとおおっという感じ。
今までも似たものがあって某映画なども思いつくが、
それとはまた趣向というか方向性が違うのがいい。
「信頼できない語り手」を使う一人称の作家と思っていたら、
この本のもう一編、芥川賞候補だったという「いけにえ」は三人称だった。
こちらの方が「パトロネ」より古いので、だんだん一人称になったのかとも思ったが、
「パトロネ」とは違ったテーマに、三人称の方がよりふさわしいような気がした。
つまり(これまた変な)主人公をどう見るのか、という問題。
何かをどうとらえるか、というのが、もしかすると作家のキーワードかもしれない。
「いけにえ」もわかりやすくはないものの、やはり仕掛けも含めて考える楽しさがある。
「純文学のホラー小説」のようにも言われているらしい藤野さん。
毎日新聞だったかのインタビューで、自分では意外なように言っていたと思うが、
たしかにホラーっぽい設定は使っているものの、狙っている方向が違うと思うので、
つまり怖がらせることがポイントではないので、
たとえば「いけにえ」に出てくるモノはたしかに不気味ではあっても、
私自身はあまり怖いとは思わなかった。
怖いものは他にあると思えるわけで、
まあ勘違いかもしれないが、そうわかることの楽しさの方が不気味さに勝る。
というわけで、藤野さん、
ここでは何を狙って、どんなことを仕掛けてくるのかな、
と考えながら読むタイプの作家ではないかと思う。
そういうのが好きな読者なら楽しいと思うし、
そこが馴染めないと魅力は感じないかもしれない。