紙の本
財務省の歴史を知るための必読の書
2020/07/05 12:15
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投稿者:もちお - この投稿者のレビュー一覧を見る
大蔵省から財務省に再編されたものの、最強の省庁として位置付けられる財務省の成り立ちと現在に至るまでの変遷を辿る一冊の本。国家の近代化にあたり、徴税権と予算編成権をもとに、各省の情報を全て集めて予算を策定する能力の高さを誇るも当時の帝国憲法下では予算編成権に関して国会が強くて、政治家との戦いであった。きちんと高橋是清を評価し実は井上準之助が高橋の最側近であった事実にも触れ、城山三郎の男子の本懐を史実としてはダメと評価するあたりもさすが。戦前戦後を通して物価の安定と財政のバランスを舵取りするという伝統的な役割は橋本行政改革までは果たしていたのが大蔵省としての事実。行政改革に際し歳入省を作らせなかった結果、日銀を独立させ結果として失われた20年を招いたのがその結果が本書はちょうどアベノミクスが始まる前で終わったため、増税原理主義の現在の財務省と本来の目標を放棄している日銀に手厳しい評価を加えて終わっている点も素晴らしい。財務省の歴史をめぐる本は数が少ないため、本書は必読の書である。
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官僚統治の歴史。
2017/11/15 23:40
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投稿者:幸三 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いい本で、好きなんですよね。
五回以上は、読み返しています。
主な人物の職業は、
・政治家(大物に限る)
・官僚(スーパーエリートに限る)
・日銀マン
権力の中枢で、どういう人物が躍動したのか。
その軌跡が組織の後人へ、
どのような影響を与えたのか。
そして、その影響を受けた組織人は、何を信望することになったかが書かれていました。
特に、日銀と旧:大蔵省=新;財務省に重きを置いて書かれています
(私の読解力の範囲での認識です。)
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投稿者:kaii - この投稿者のレビュー一覧を見る
財務省研究の白眉と言える本。財務省研究の本が殆ど無い中で、大蔵省から財務省までどの様な歴史経過を辿ったのかを詳述している。この本を読めば、いかに大蔵・財務省が日本政治の中で重きを置いてきたのかが良く分かる。まさに必読書である。
但し、あくまでもこの本は財務省研究の入門編である。この本を読めば日本政治の全てが分かる訳ではないが、この本を読まなければ日本政治を理解する事は難しいだろう。
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財務省ウォッチャーによる財務省の歴史解説
2018/08/30 06:40
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投稿者:マユハルパパ - この投稿者のレビュー一覧を見る
倉山満さんの本は、歴史、政治、憲法と様々なカテゴリーの本を読みました。
中でも、財務省の歴史にスポットを当てるあたり、さすがだなと思います。チャンネルくららでも、財務省ダービーというタイトルで人事を予想したり、山村明義さんとともに財務省ウォッチャーぶりを発揮されてます。
財務省といえば、増税一直線みたいな印象がありましたが、単純にそういうわけではなく、そこには政治、閣僚との関わり合いがあり、様々な事象が関係し合っているということがわかりやすく説明してあります。
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副題は、政治との闘い150年を読む。
財務省とは、国の歳入と歳出を管理する官庁。前身の大蔵省以来、「戦後最強の官庁」として日本に君臨してきた。
今、財務省はデフレ不況下での増税を企んでいる。「増税やむなし」の空気が流れる中、これは本当に正しい選択なのだろうか。
気鋭の憲政史家が、150年の伝統を検証しながら、知られざる政治との関係を描き出す。
第1章 大蔵省の誕生
第2章 日本最強の官庁へ(井上準之助の登場)
第3章 パンドラの箱 (馬場鍈一蔵相)
第4章 占領と復興
第5章 復興から高度経済成長へ(池田勇人の登場)
第6章 三角大福、赤字国債、消費税
第7章 失われた十年
第8章 平成と未来の日本
本書は、従来説とは異なり、新しい見方を示しており大変面白い。
本書を読むと、財務省がいかに政治に翻弄されてきたのかがわかる。
「われわれが本当に強かったら、日本の財政なんてこんなふうになっていませんよ。主計局は、常に敗戦、敗北の歴史です。」という財務官僚のことばもうなずける。
残念なのは、論法の補強の仕方が粗い点である。著者の見方は画期的で面白いが、ひとつ間違えばトンデモ説になりかねない。新書という制限はあるが、もう少し丁寧な描き方をして欲しかったと思う。
以下、気になった点。
著者は、城山三郎の小説「男子の本懐」を事実と異なる世紀の悪書としており、三つの重大な誤りを指摘している。著者は「井上は、元々は高橋の最側近だったが、わざわざ反対党の濱口の内閣に移り、間違った経済政策の推進者となった」という見方を示している。この見方は面白いのだが、なぜ井上がそうしたのかという動機が説明されていない。
戦前の日本は、軍部に支配されていたというイメージが強いが、井上が生きていた時代は、法の支配する時代であるというが、この見方は重要であろう。井上は政党の力を背景に、軍事予算の削減を進める。
軍部に優越していた政治がなぜ逆転したのか。著者は、政治(政党)が自壊
したことをあげている。また、ソ連(共産勢力)の動きに注目している。
これも、面白い見方であるが、もう少し、説得力が欲しい。
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他のレビューにもあるが、これは新鮮。「さらば財務省(高橋洋一)」や「財務省のマインドコントロール(江田憲司)」などとは全く異なる切り口である。
強烈なエリート集団というイメージで読み進めると、ものすごい違和感が生じる。「政治家にやられてきた弱い財務省(大蔵省)」という全く真逆の記述があるからだ。
どちらが正しいのかどうかはさておき、なるほどこういう見方もできるのだなと楽しく読めた。
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歴史を国家予算の観点から見つめると世界が拡がる。
うーん、財務省のトラウマ。
田中角栄が引き起こした放漫財政が、引き起こした
災害なんですね。
兎に角、日銀は円を刷れ!!
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財務省(旧大蔵省)の歴史を紐解く事で、現在のデフレを脱却する為に最良の処方箋は何かを読み解く本。
財務省の歴史を紐解きながらも、日本の正しい昭和史も学べる素晴らしい本である。
この本を読めば、日本は戦前戦後を通じて、「共産主義・計画統制経済 vs 民主主義・自由資本主義」の構図から一歩も抜けて出ておらず、共産主義の息がかかった人間に、徹底的に貶められ続けている事が分かる。
真に討つべき敵は誰なのか?真の味方は誰なのか?今後も敵を誤らない為にも必読の書である。
作者の倉山満という男、必ずや日本を席巻する論客となる逸材である。要注目!
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本屋で平積みになっていたので、パラパラと見て、つい買ってしまった一冊。
興味深い史観が展開されて、ところどころ、確かにそういう力学が働いて然るべき、と納得できる点も多い。例えば、強力な与党、衆議院が形成されると、大蔵の主計局が強力な権限をモテるようになるとか、終戦後に強い横暴な陸軍大臣と、逆らえなかった文官達という虚構を創作し、占領軍を騙くらかしたというくだり。歴史は勝者や生き残った者によって紡がれてゆくという典型例だと思う。
近代では、田中角栄ではなく竹下登こそが長きにわたり権力を裏から掌握しきった人物であり、そして、大蔵省の伝統から外れた増税路線=消費税導入を果たし、橋本政権による日銀の独立路線を引いてしまった、日本弱体化を招いた張本人という論も展開される。
グローバル、かつ資金の移動がオープンな中、政策金利や日銀の国債引き受けだけでマイルドインフレを上手く引き起こせるかは、正直、専門外で良く分からないが、国益を考えるならば増税より先にやるべきことであるのは確からしいと感じた。愚かな浜口宰相のように金を国外に流出させ、国益を著しく損なうようなことを繰り返すべきではない。
先達から学ぶべき局面だろう。
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とにかく明解で面白い。日本の近現代史において大蔵省・財務省がどのように権力を獲得し、政治に対峙してきたのか。
そして、現在のデフレ不況下での増税が完全に誤った政策であり、かつ財務省の伝統にも反することが強く主張されている。
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1967年生まれの倉山 満氏による著作。デフレを忌避し金融緩和政策を推奨するいわゆるリフレ派の立場から書かれており、著者はその立場を鮮明にして書いている。
井上準之助への評価などはかなり一方的。
大蔵省、財務省の歴史を客観的に記したというよりも、この立場で日本の税制、財政、金融政策がどう見えるか、という内容。
視点が極端なため、アマゾンのレビューは評価が5星と1星が同数で最多得票(注、これを記述している段階)と、珍現象を生じている。
1星のレビューも丹念であり、それだけ刺激的な本であることは間違いない。
文章は平明、その分、リフレ派の論理の中で説得力のある記述になっている。
意見、好悪はいろいろとあるだろうが、これだけ主張を明確にすることで、財政や金融の歴史を多角的に見るための導入としても優れているように思う。
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私は歴史は基本的に好きなのですが、現代史となると、あまり本を読んだことが無かったので、この本は私にとっては新鮮なものでした。
内容は、財務省に関するもので、明治維新のころから、ごく最近の出来事まで、財務省がどのように関わってきたかが記載されています。
現在は、消費税の増税に向けて陰で旗を振っているのは財務省というイメージが私にはありますが、財務省(大蔵省)にとって、増税はその伝統に反する、というのは意外なものでした。
以下は気になったポイントです。
・明治維新とは、幕藩体制という地方分権体制を否定し、強力な中央集権を目指した動きであったが、大蔵省とは別に内務省という組織を作って、地方行政は内務省に任せることにした(p19)
・貴族院が少しでも修正すれば、今度は衆議院の承認を得る必要がある、したがって、先議権とは事実上の決定権である(p22)
・大蔵省にとってもソフトとは、情報と人事であり、それが最も大事(p24)
・ライバルであった板垣と大隈は手を組み、憲政党を結成し、衆議院の9割を占める巨大野党ができた(p34)
・当時の日本人である朝鮮人の生命や財産が侵害される事態に世論は憤り、関東軍は彼らの保護を理由に張学良の討伐を開始した、これが満州事変(p64)
・インフレは良いことでデフレは悪いこと、生産物よりも貨幣のほうが少しばかり多い状態が健全、働いたモノの価値が高まる、すなわち労働力が報われるから(p111)
・昭和26年9月にサンフランシスコ講和条約を結び、翌年4月28日に日本は独立したが、問題として、占領期に公職追放された政治家(鳩山一郎等)が帰ってきた(p127)
・アメリカ公文書公開のルール(40年後に公開)により、自社55年体制は、米ソ代理戦争であったことが判明した(p152)
・三木武夫は、誰の側近にもならず、権謀術数だけで総理の座を奪い取った最初で最後の人(p178)
・三木が自民党多数派を恐れなかった根拠として、内閣法制局と検察庁を味方につけておいたことがある(p183)
2012年6月10日作成
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少し偏った部分はあったもののとても面白かった
読んだ結論は二点
1.歴史は繰り返す⇒政治主導は難しい
2.デフレ放置はもはや日銀や財務省の意地なんじゃないか
前者について
減税と戦争推進といった無理難題を承知で当時の政権に迫り、瓦解させた後に成立した隈板内閣
⇒政権担当能力は皆無で自滅に近い総辞職と混乱をもたらした
当時の閣僚は官僚あがりの議員が占めていたというのも結構衝撃的だったのと共に、やはり行政の仕事に関わりのない政治家の限界も感じた
後者について
戦前の官僚は本当に誇りを持って国のために健全な経済運営を図っていたことが分かった
どこから今のデフレ時の増税は正義で財政再建に不可欠という増税スパイラルに押し込んだのかは読後も未だによく分からない…
それで考えたのは「もはや意地かな」
昔の官僚からしたら今の官僚は本当に売国奴のように見える
責任逃れのために「地震や世界経済危機のような大事故の後に事を起こし」、失敗しても「そういった事象のせいだ」と言い逃れに使おうとするように垣間見える官僚の意思の汚さには失望しかない。
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20120718-0808なかなか意欲的な内容。特に戦前~戦後までの大蔵省と内閣・軍部・議会等の対立軸が整理されていてよかった。近衛文麿や馬場財政については教科書的なことしか知らなかったので、もっと詳しく知りたいと思う。著者は気鋭の政治学者のようだが、最終章の日銀がもっと金融緩和をすれば(=お札をもっと刷れば)デフレは解消される、という主張は単純にすぎると思う。巻末の資料リストも、経済学関係の資料はちょっと・・・(^_^;)
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デフレ派経済学者、デフレ派一般人に対抗するのに有効な知識が得られる。歴史的な見地からリフレ理論は常道であり必然。
最後の提言が第二次安倍政権誕生を予言していたような内容で、上念司氏の「日本の危機管理はここが甘い」と共に一部では予言の書と呼ばれている。