紙の本
個人でも書評を怠けちゃう。
2016/05/23 23:38
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投稿者:朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
みんなはあんまり口にしないけど、どうして仕事をするの?って言ったら「怒られたくないから」っていう部分が結構あるんです。自分の能力の低さによって集団に迷惑をかけたくないから一生懸命頑張る(ケーラー効果)っていうのがあります。
だから集団のパフォーマンスや動機づけは、まわりの人物や状況や課題によって影響を受けます。そこから筆者は、集団主義の社会的手抜きの関係の研究結果の分析を行っています。
最後の方に相撲の話とか野球の応援が選手にどれくらい貢献しているか?とか書いているので事例が豊富で読みやすいです。
読んでいて面白かったのは、社会的手抜きが生じる文化差です。どうやら女性は同性と一緒に作業するときは手抜きをせず、男性と作業する時は作業内容のいかんにかかわらず控えめになる、とのことです。介護職なんかで男性が増えてきていますが、社会的手抜きが例えばですね、上司の隣で仕事をするとか他との関連性で自分の意識しないうちに力をセーブしたり奮起したりするのは「ああ、そういうのあるわ」って思ったんです。
救急の講習を昔受けた時に近くにいる人に指差して「あなた、救急への連絡をお願いします」って特定に人に依頼するっていうのを実習した事があったんです。それって、個人的に責任を問われることがなければ、「誰か助けてください」だと、面倒ごとに誰も関わらないので特定個人に援助を求めることが大事なので、これにはそういう意味があったのか、と気づいたんです。
プロテスタント労働倫理の程度が高いと、失業に対して否定的な見方が強くなるっていうのは、こういう人、他人の手抜きに厳しいわって人を思い浮かべてしまいました。どうやら他者に対する信頼度が高いほど、福祉に対しても好意的で、公共心が低い人も、他者に対する信頼性が高い人も福祉を求めるそうです。
集団浅慮は全員一致のコンセンサスを求めるあまり異論を唱えたり、疑問を出すのを控え、集団内に波風が立たなくなる現象。集団浅慮に陥ると正義実現のためには、あるていどの非倫理的行為も許されると考える傾向、愛国無罪が適応されるので、風通しが悪い中での集団統合はかえってパフォーマンスを低下させます。
じゃ、社会的手抜きを少なくするのにはどうすりゃいいのさ?ってとこは、集団形成し、私たちは集団に応じて自分のペルソナを被って行動するので、社会的手抜きを完全になくすのはどうやら無理なようですが、腐ったリンゴに罰を与えるよりも、腐っていないリンゴを活性化させるほうが、高い目標設定して集団成員に示すことのほうが社会的手抜きを防ぐには効果的で、その目標が達成されたら成員に報酬を与える。ポジティブな側面に力を入れた方がいい、とのことです。
われわれの社会には勤勉を奨励し社会的手抜きを抑えようとする規範があり、意識してなくても、人によって有形無形の圧力を受けていて、社会的手抜きのネガ部分だけではなく、その多面性をいろんな統計を交え、知ることができます。
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自分が頑張っても組織に影響はないって思うから仕方がないよね。
あと、仕事中のプライベートなWeb利用、多すぎだよね。SNSとかで遊びすぎ。
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まず、タイトルにある「社会的手抜き」とは何かというと、それは以下の通りであ。
「このように、個人が単独で作業を行った場合にくらべて、集団で作業を行う場合のほうが一人あたりの努力の量(動機づけ)が低下する現象を社会的手抜きという。」(p.11)
例えるなら、運動会の綱引きで、周囲が一生懸命綱を引いている中、顔だけ引きつらせて綱を引くフリをしている、そんな感じでしょうか?
褒められたものではないですね。
でも、そんな褒められたものではない社会的手抜きですが、かのビートルズも社会的手抜きをしていたという研究が紹介されています。
この研究結果が面白い!
「その研究では1963〜70年の作品の中162曲について、曲の良し悪しと、ジョン•レノンとポール•マッカートニーそれぞれの単独作品であるのか、それとも両者の共作であるのかについて調べられ、分析がなされている。(中略)もし共作(とくに1996年以降)のほうが単独作よりも質が悪いということであれば、共作では手抜きをしていたことになる。質の指標として曲がシングルカットされたかどうかということ(出来が良かったものはシングルカットしたと、当人たちが述べている)と、人気投票であるビルボードマガジンのチャートの順位を用いた。分析の結果1967年以前はジョンとポールの単独作品のシングルカット率は37.7%であり、共作は52.9%であった。しかし、67年以降はこの傾向が逆転し、単独作品が21%で共作が15.4%となった。チャートランキングについてもこれと同じような傾向が見られた。『ハロー•グッバイ』という1967年の共作の中に、『君はイエスと言い、
僕はノーと言う。君は止まれと言い、僕は進め進めと言う』という歌詞がある。2人の志向性に違いが生じ、共同作品には単独作品ほどのエネルギーを注がなくなったということかもしれない。」(p4)
恋人同士の別れの曲かと思っていましたが「ハロー•グッバイ」って、そういう意味だったんですね!
そんなビートルズの不仲(?)を曲にして売っちゃうのもどうかと思いますが。
でも、こんな例を元にして、自分の身に置き換えて見たとき、結構思い当たりませんか?社会的手抜き。
私の周囲にもありますし、私自身も恥ずかしながら、そういうところあります。
本書を読むうち、そうやって自覚が芽生え、対策も思いついてきます。
心当たりのある方、一度手にとってみたらいかがでしょうか?
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あらゆるシーンにおいて起こる、「社会的手抜き」について多くの具体例をもとに一般向けにまとめられた一冊。
多くの実験例が挙げられていて、その方法論を眺めるだけで面白いです。
「そうやって、被験者に思い込ませて条件付けをするのか、なるほどなー」というノリで見ることができます。
一時期の「ブレスト万能説」はちょっと怪しいということがわかりました。
「とりあえずブレストしよっか!」と言ってくる意識高い風の人には気を付けようと思います(笑)
結局、社会的手抜きを完全になくすことは難しいとの結論ですが(そりゃそうだろう)、そうやってエネルギーの調節をすることで、人はそれぞれの場面での役割を演じているのではないかと思います。そうしないとパンクしてしまいそう。
ただし、動機付けや意識の持たせようである程度は「社会的手抜き」はコントロールでき、そこの工夫がリーダーの力のみせどころ。そのあたりについては深くつっこまず、特に目新しさも無く……。
筆者も書いているようにあくまでも一般向けの心理学入門書なので、論理の飛躍がないようにまとめると、こうなるのは仕方がないように思います。
そういう点も含めて、丁寧かつ誠実な入門新書です。
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「人はなぜ集団になると怠けるのか」。
集団のサイズと生産量の関係は比例関係にはなく、0.56乗のベキ法則に従うことがリンゲルマンらによって知られており、社会的手抜きというらしいが、あとがきにあるように、この分野の研究は少なく、特に最近はほとんど行われてないそうだ。で、著者としても本書を書くに当たり、世間の様々な事象を社会的手抜きの観点から説明できないかどうか、という立場をとったという。
そのせいか、内容的にはひどく読みにくい。XXという現象について、こういう研究がされているが、こういう説もあり、、、という調子で結論のはっきりしない議論が延々と続くような印象を受ける。通読には向かない本。
ちょっと面白かったのは、注意逸脱葛藤理論というものの話。簡単な課題の時は周囲が騒がしいほうが覚醒度が上がってパフォーマンスがあがるが、難しい課題のときに騒がしいとパフォーマンスが落ちるんだとか。実感にも合っており納得。
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一人だけで行動する場合と集団でやる場合。どちらのほうが一人あたりのパフォーマンスがあがるのだろうか?
人間に限らずネズミやゴキブリなどの動物もほかの個体から「見られてる」場合は、気分が高揚しパフォーマンスがあがることがわかっている。チームのメリット。
一方で個人が単独で作業をした場合よりも集団で作業をした場合の一人当たりの努力の量が低下する現象を社会的手抜きという。チームのデメリット。
本人がサボってるつもりはなくても心理的にさぼってしまっう。これは心理学者のリンゲルマンによってリンゲルマン効果として名付けられた。
意思決定の場合も、三人集まれば文殊の知恵になるケースもある一方で集団的浅虜もある。これを防ぐには、リーダーは聞き役に徹し、最終決断をする場合にはじめて意思表明するとことをジャニスは提言。またリーダー抜きの会合をするとか集団の構成員の凝集性を高めないなどが対策。150
では社会的手抜きを回避するにはどうすればいいか?214
監視したり罰をあたえるのは効果なし。社会的手抜きをしない人を選考することが大事。その逆に腐ったリンゴは早期排除が重要。割れ窓理論と同様に波及する。227
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内容は「なるほどその通りだ」というものばかりなのであるが、このテーマについて、これほどの範囲にわたる社会科学的分析と対策について纏められた本を読んだことがなかったので、今回、改めて自分の経験に照らして整理ができた。機会あるごとにポイントを読み返してみたい。
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なぜ人は集団になると怠けるかを中心に関連する行動分析の話、生活保護の問題、仕事中のインターネット私的利用、スポーツなどに広がり思っていたよりは楽しく読める。
チームで働いている私にとって、最近のチーム内の行動の理解が、深まったなと思う文章が幾つかあり、その感覚は面白かったな。
【学び】
社会的手抜きが生じやすいシーン:評価可能性が低く、自分のパフォーマンスが自分の報酬とならない場合、自分が努力しても集団全体のパフォーマンス向上に殆ど役に立たない場合
集団でブレーン・ストーミングを行って出た意見より、単独でアイディアを出した作業の方が、多くの良いアイディアが出た。
ブレーン・ストーミングは集団のメンバーに主観的満足感をもたらす傾向があるが、アイディア創出数は個人より劣る。
→先日自社で行った研修もまず、自分の意見を考えてから、ブレーン・ストーミングだった。理にかなっているのか。
リスクホメオスタシス:チェック体制を多重化したり、安全技術を導入したりすることによりリスクが低下したと認知すると、かえって人間の行動はリスクを高める。チェックは二人までが良い。それ以上だと機能しない可能性あり。
スポーツ選手が「応援よろしくお願いします」と言うが、試合の勝敗にはそれほど大きな効果は無いようである。
集団の中に腐ったリンゴが一人でも入れば、作業効率は低下するが、複数いた場合でも低下率はあまり変わらない。
腐ったリンゴに罰を与えるより、腐っていないリンゴを活性化させる方が効果的な改善方法である。
罰は長期的には与える側にも、受ける側にも良い結果をもたらさない。また、努力とは無関係に与えられる報酬は動機付けに影響しないが、努力とは無関係に与えられる罰は動機付けを極端に低めてしまう。
報酬と罰の効果は非対称である。
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○心理学者の釘原氏の著作。
○「どうして人は怠けるのか」をテーマに、数々の調査研究をまとめ、「怠ける」原理についてまとめたもの。
○いろいろな調査を紹介しており、読み物として面白かった。
○ホームアンドアウェーのところは、イメージしていた結果と違ったので意外に思った。
○一番印象的だったのが「腐ったリンゴの取扱い」で、実際の社会では、腐ったリンゴをどうするかが特に難しいなと思った。
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2014年4月青山ブックセンターでグループ・ダイナミックスの本を探していて出会う
授業やクラスの活動の中でグループワークと取り入れたいと思って購入。
グループで取り組むべき課題を成果の出し方で分類し、手抜きの起きやすさとその原因について説明していたところは具体的でためになった。
とにかくグループワーク(共働)という風潮に対して、私自身が課題に対して適切な学習方法を提供すべきという考えをもてたことは収穫だった
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釘原直樹『人はなぜ集団になると怠けるのか 「社会的手抜き」の心理学』中公新書、読了。一人でできないことでも集団になればできるから、会社や組織が成立する。しかし集団で仕事をすれば個人の資質は百%発揮され、その総量の和になるのか。答えは否だ。これを「社会的手抜き」という。
曰く「個人が単独で作業を行った場合にくらべて、集団で作業を行う場合のほうが1人当たりの努力の量(動機づけ)が低下する現象を社会的手抜きという」。
社会的手抜きは、所謂会社に代表されるビジネス世界にのみ限定されるものではない。非効率的な会議から選挙の低投票率、スポーツの八百長に至るまで私たちの生活世界のあちこちで散見される出来事である。
本書は「社会的手抜き」のメカニズムを、多彩な心理学的実験結果から明らかにする。
社会的手抜きとは「悪」なのか。この世から嘘を無くすことが不可能なように、話はそう単純ではない。社会的手抜きによって集団や組織は維持されるし、個人は息苦しさのストレスから解放されるからだ。
一般的に、社会は勤勉を奨励し社会的手抜きを押さえようとする規範が強く、その圧力を受けている。確かに社会的手抜きは望ましくはないだろう。しかし、その多面性までをも否定することは、人間とその共同体の全体性を損なうことにもなるだろう。多角的にその功罪を検証する本書は、人間理解を一新する。
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社会的手抜きについて教科書で説明するなら1ページで終わる。そのトピックを多くの視点から語り,関連概念の説明や日常的視点からの解説が多く含まれる。最終章の社会的手抜きに対する対策はその現象に困っている人は参考になる。
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集団になると個人でやった場合より一人当たりのパフォーマンスが落ちるというのは意外だった
無意識的に行われているため防ぐのは難しい
社会的補償によってパフォーマンスが上がる場合もある
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「社会的手抜き」という集団の中の個人の心理・行動について、考察した本。
集団の構成員の数が多くなればなるほど、個人の能力・効率が落ちるという現象をさまざまな事例を用いて紹介している。なかなか面白い本だった。
ただ、この分野の研究が少ないためもあってか、ほとんどが先行論文の引用が多かったのは致し方ないところか。
集団の心理に興味があるので、そこは勉強になった。
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集団になると生産性が下がる要因は、個人の努力が評価できない、努力の必要がない、他者に同調するなど。個人や集団の特質で異なる。問題行動は日常的に起きている。国家で見ると、公共心、信頼度、財政にも関わる。スポーツ、社会への悪影響。対策。
個人とは異なる集団としてのメカニズムの話かと期待したら、手抜きされているのが悪い、本来個人の総和であるべき、のようです。また、集団意思決定の実例がなぜ真珠湾?それも米側。今ならフクシマじゃないですか?