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紙の本
思惑 (講談社文庫 百万石の留守居役)
著者 上田 秀人 (著)
徳川に藩主を渡せるかといきり立つ御為派。藩主綱紀は国元で孤立する前田直作を江戸に呼んだ。数馬がその護衛役に選ばれた。「堂々たる隠密」と加賀であだ名される五万石の筆頭家老本...
思惑 (講談社文庫 百万石の留守居役)
思惑 百万石の留守居役(二)
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商品説明
徳川に藩主を渡せるかといきり立つ御為派。藩主綱紀は国元で孤立する前田直作を江戸に呼んだ。数馬がその護衛役に選ばれた。「堂々たる隠密」と加賀であだ名される五万石の筆頭家老本多政長は、出戻りの娘・琴を数馬と娶せる。その琴を金沢に残し中山道を急ぐ数馬。無事、峠越えを果たせるか!?文庫書下ろし。【「BOOK」データベースの商品解説】
徳川に藩主を渡せるかといきり立つ御為派。その刺客に狙われる重臣前田直作の護衛役に選ばれた数馬。五万石の姫君・琴を国元の金沢に残し、江戸に急行する数馬を待ち受けていたのは? 「百万石の留守居役」シリーズ第2弾。【「TRC MARC」の商品解説】
目次
- 第一章 峠の攻防
- 第二章 総登城
- 第三章 大老の狙い
- 第四章 将軍の願い
- 第五章 血の意味
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紙の本
将軍後継者として外様大名を描く
2014/02/11 21:36
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
上田秀人の新しい百万石の留守居役シリーズ第2弾である。奥右筆シリーズの後継だそうである。ということは、十冊以上の長編になるということか。第1作と第2作の本編は間をおかずに刊行された。通常は半年の間隔をもって発刊されるのだが、これも話題性を盛り上げるためであろう。
本シリーズの主人公は、加賀前田藩の藩士である瀬能数馬である。主人公が藩士であるのは珍しい。今まではほとんどが江戸城中に勤める役人であったからだ。加賀百万石の前田藩とはいえ、外様の前田家では幕府の権力とは無縁である。
ところが、時代は徳川家綱が将軍である。家綱は三代将軍家光の息であるが、病弱の上に子に恵まれなかった。それで何が問題かといえば、後継者である。弟の綱吉や甲府徳川家などが後継者争いに暗躍する時代である。この時代は上田も他の小説で将軍家後継騒動の格好のプロットとして取り上げている。
加賀前田家には徳川から娘が輿入れしており、その子は前田家とは言え、将軍家の血が入っている。そこで大老酒井忠清が暗躍して前田家に話を持ちかける。たしかに話としては大変面白いのだが、ここからの展開次第でこの小説の盛衰が決まってこよう。本編では主人公の瀬能は加賀藩の当主から江戸留守居役を命じられるところで終わっているからなおさらである。
史実は知っての通りであり、このストーリーの盛り上げ方に工夫が必要である。一見ありえないような話だが、そもそも将軍の後継者選びについて、上田はかなりの頁を割いて説明している。長子相続が最も皆が納得しやすいのだが、それを続けているとあっという間に滅びてしまう可能性がある。無能な後継者が生まれる可能性である。
徳川将軍家の歴史を見ても、長子相続の方が珍しいほどであることに気付かされる。そうでなければこれをストーリーにするわけがない。御三家、御三卿など将軍の待機組をわざわざ作っているのもそのためである。武家政治であるとはいえ、戦がなくなってしまってからは、政治の力量が試されるのである。
武道が長けているから将軍になるわけではない。人が従ってくる力量、包容力、人徳がなければならない。そこは時代を問わないところであろう。そこが本編でも注目したいところである。上田がどう描くかである。